国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年5月】

(2017.06.08 09:30)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年4月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

国際アグリバイオ事業団が2016年度年次報告を公開した

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA )が世界の遺伝子組換え導入に関する2016年度年次報告を中国・北京で2017年5月4日に公開した。メディアカンファレンスがChina World Hotel で2017年5月4日に開催され、約40人のグローバルおよび中国の報道関係者が参加した。ISAAA 理事長、Paul Teng博士が報告書のハイライトを報告した。同氏は、2015年には遺伝子組換え作物の作付け面積がわずかに減少したものの、2016年には1億851万ヘクタールに増加したと強調した。上級プログラムオフィサーの Rhodora Aldemita博士は、アジアにおける遺伝子組換え作物の開発・導入状況を報告した。

 翌5日には、中国科学アカデミーでセミナーが開催され、これには約120人の科学者、アカデミー会員、学生が参加した。Paul Teng博士とRhodora Aldemita博士が ISAAA報告書のハイライトを報告した。中国農業省農業遺伝子組換え生物(Ag GMO )部の Zhang Xianfa 氏が中国における遺伝子組換え作物の規制と開発について述べた。参加者は、中国により多くの遺伝子組換え作物を導入することが、農業者とその家族だけでなく消費者にも利益をもたらすとの説明に関心を示した。

 この事業は、中国バイオテクノロジー情報センター、中国農業科学アカデミー、中国バイオテクノロジー学会の共催で開催された。

南北アメリカ

米国政府は遺伝子組換え製品の「誤った情報」の是正を図る

 米国では、遺伝子組換え技術教育の予算提案により、遺伝子組換え技術に関する誤情報が減少することが期待される。米下院歳出委員会は、農業支出法案、2017年度農業、農村開発、食品医薬品局、関連機関の歳出法の予算を増やすことを検討している。農業に関する遺伝子組み換え技術とその製品の理解と受容を促進するために、消費者への教育のために食品医薬品局と農務省が使用する300万米ドルが提案された。

 委員会報告書にある農業法案によると、米食品医薬品局(FDA)と米農務省(USDA)は、環境、栄養、 食品安全性、経済、遺伝子組換え食品と飼料の人道的利益に関する科学に基盤を置く教育情報の出版と配布を通して主導的役割を図るとするものである。

 これに伴い、66の食糧農業機関が議会の指導者に手紙を送って、遺伝子組換えに関する教育への支援を表明した。その内容は以下の通りである。「米国の指導者たちは、技術の責任ある使用を受け入れ、国家を前進させるための政策を策定しているため、米国は強く繁栄している。農業バイオテクノロジーに関する科学的かつ事実に基づく情報を国民がよりよく理解するのを助けるために、FDAとUSDAのために300万ドルを拠出する」。

Obama前米大統領が農業遺伝子組換え技術の有用性に言及

 「人類が常に遺伝子改変に従事してきたのは、真実である。…我々が今食べている米、トウモロコシや小麦は、1000年前のものとは違うものである」と2001年5月9日にイタリアのミラノで開催された種子とチップス(Seeds and Chips)世界的食品革新サミットでBarack Obama元米国大統領が演説した。演説でObama氏は、食品に対する遺伝子改変や遺伝子編集について意見を述べた。

 「遺伝子組換え食品に関する議論について私が知っているのは、極めて多様な意見があるということだ」「私が米国大統領だったときに取ったアプローチは、気候変動に関する私の政策決定に当たり、科学的な判断に努めることだった。同様に、食糧生産と新技術に関しても科学的に決定しようとした」と述べた。「中小規模の農業者が、多額の費用をかけずにより良く収穫するのに役立つ技術を導入するのは幸せなことである」とも述べた。彼はまた、農業が環境に及ぼす影響についても議論した。

遺伝子改変ウイルスとCRISPRで柑橘類の病害に対抗

 フロリダ州クルーイストン にあるSouthern Gardens Citru社は、2月にCitrus Tristezaウイルス(CTV)の改変種を使用して、柑橘類の緑化を引き起こす細菌と戦うための許可を米農務省(USDA)に申請した。柑橘類の緑化や黄褐色化(huanglongbing)は、過去10年間に米国でオレンジの生産を半減させた疾患であり、33億米ドルの産業を完全に破壊する恐れがある。申請への聴聞期間が終了し、USDAは現在、改変されたウイルスの環境への影響を評価している。

 遺伝子改変CTVの圃場試験が実施されており、申請が承認されると、このような試みが商業的に使用される初めての例になる。また、遺伝子組換え作物に関連する規制や一般国民からの不名誉な烙印をなくする機会を提供できる可能性もある。

 柑橘類の緑化に関する取り組みは、遺伝子改変ウイルスだけではない。他のプロジェクトでは、CRISPR/Cas9を用いて柑橘類の樹木ゲノムを編集し、害虫に対してより耐性を高めたり、防御遺伝子を発現して樹木や病気の伝播を防ぐ短いRNA分子を作り出すことを目指している。また地元の栽培者は、柑橘類の緑化に対抗する手段をさらに探し出すために、柑橘系の樹木の遺伝子配列を決める国際的なプロジェクトに資金を援助している。

カナダの国会議員がGM食品の表示義務化を否決

 カナダ議会議員は、2017年5月17日の下院での2回目の評決において、遺伝子組換え食品表示義務化に反対した。C-291法案は、食品医薬品法(遺伝子組換え食品)として. ケベック州シャーブルックの新民主党(NDP)議員Pierre-Luc Dusseault氏が提案したものだが、賛成67、反対216の大差で敗れた。

 この法案は、「食品の購入者または消費者が欺かれたり誤解したりするのを防ぐために、ラベルに情報が含まれていない限り、遺伝子組換え食品を販売してはならない」とするものである。しかし、法案には遺伝子組換えという用語の説明がなく、それゆえに第2回目の評決で大きな議論が生じた。反対派は、「言葉の定義があまりにも漠然としている」と主張したが、支持者は、「そのような幅広いことが重要である」と述べた。

アジアと太平洋

インドで遺伝子組換えマスタードの商業栽培を承認

 インドの遺伝子組換え(GM)作物規制当局である遺伝子工学評価委員会(the Genetic Engineering Appraisal Committee, GEAC)は、遺伝子組換え(GM)マスタードの商業的使用の推奨を環境省に提出した。環境保護庁(MOEF)の下にあるGEACは、安全性の視点から報告書を査読したとしている。

 作物遺伝子操作センター(Centre for Genetic Manipulation of Crop Plant 、CGMCP)とDelhi大学サウスキャンパスがGMマスタード(Brassica juncea)ハイブリッドDhara Mustard Hybrid-11(DMH-11)と新しいハイブリッドの開発のための親品種(bn 3.6およびbarnase、barstarおよびbar遺伝子をもつmodbs 2.99)の環境放出に向けての申請を2015年に行った。承認されれば、GMマスタードは、2004年の商業栽培を承認したBtワタに続く、インドで第2のGM作物になる。

 環境省は、これまで省庁のウェブサイトに掲載していたGM マスタードの食品・環境安全性評価報告書(AFES)に関する学生、農業者、研究者など、様々な関係者から750件以上のコメントを受けた。報告書には、欧州食品安全機関(EFSA)、遺伝子技術規制局(OGTR)、カナダの規制当局など、よく知られている規制機関による国際的評価と比較して、バイオ安全性データの徹底的な評価の結果が含まれており、また対象とする課題に関する既存のピアレビューされた科学文献を含んでいる。この報告書はまた、インドでのマスタードの特定の用途に対処し、GMマスタードは消費にとって安全で栄養価が高いと結論付けた。

文献備忘録

2016年の遺伝子組換え作物ハイライト

 ISAAAは、「遺伝子組換え/GM作物の商業栽培の世界動向:2016」(ISAAA Brief 52)の報告書のPocket K版を公開した。 2016年の遺伝子組換え作物のハイライトと題したPocket Kは、遺伝子組換え作物(1996-2016)の世界的な領域、産業および発展途上国のバイオテクノロジー作物、26カ国の遺伝子組換え作物の分布、遺伝子組換え作物の世界的価値をまとめたものである。

 ポケットKは知識のポケット版であり、遺伝子組換え作物・それらの製品および関連する問題に関する情報をパッケージ化してある。 農業バイオテクノロジーに関するグローバルナレッジセンターによって開発され、重要な農業生物情報を分かりやすい形式で提供し、PDF形式でダウンロードして簡単に共有および配布することができる。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧