国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年4月】

(2017.05.11 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年4月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

世界のおよそ20億人が輸入食品に依存

 フィンランドAalto Universityの研究者たちは、資源の不足、人口圧力、食糧輸入の関連を示す初めての報告を行った。「地球の未来」に掲載された研究によると、豊かな地域においても食糧は輸入に依存しており、それが必ずしも成功しているとは限らないことを見いだした。約14億人の食料安全保障は輸入に依存しており、さらに4億6000万人が輸入を増やしても現地生産の不足を補うのに十分ではない地域に暮らしている。

 研究者たちは、水の利用可能性が生産を限定している地域に焦点を当てた世界的な分析を行い、1961年から2009年までを調査し、食糧輸入の増加が人口増加圧力をどの程度補ったかを評価した。

 この研究は、国連食糧農業機関(FAO)の統計と技術開発による生産効率の向上データを組み合わせたものである。この分析では、資源不足地域の75%において、自国の生産が不十分になるにつれて食糧輸入が増加し始めたことが示された。 「食糧需要をチェックすることが重要な問題であることが分かった。また、この研究では、人口の増加を抑制することが重要と分かったが、食物の浪費や肉の消費を減らして生産との連鎖を強化することも重要と分かった。世界中で生産された食糧の4分の1が無駄になっており、これを減らすことが世界レベルで非常に重要である」と同研究の共同著者であるJoseph Guillaume博士は語っている

南北アメリカ

気候変動の影響により農業は不安定さを増す

 気候変動の農業への影響を研究している科学者たちは、これまで、降雨量、干ばつの程度、および天候の変動を基に予測を行ってきた。しかし、米University of Illinois Urbana-Champaign校の科学者が実施した新しい研究では、現地の労働日数に基づいて予測を行っている。

以前の研究でこのグループは、過去の気候データをイリノイ州の現場作業日に忠実に変換したモデルを開発した。これらのモデルは、気候変動のシナリオと相まって、新しい研究での将来の現場作業日を予測している。このグループは、軽度から極端までの3つの気候シナリオを使用して、イリノイ州の9つの作物地区のモデルを前期(2046〜2065年)と後期(2080〜2099年)の2つの期間について提案した。

 イリノイ州では、4月と5月の降雨時期を避けて、トウモロコシの播種時期を2つに分割している。初期の植え付け時期は、霜や激しい降水によって妨げられる可能性があり、遅い時期は激しい晩夏の激しい干ばつで播種適期が短くなる可能性がある。

 「全ての気候変動シナリオの下でも、夏の中期から後期に干ばつがひどくなる。もし農業者が4月と5月の雨期を避けて、その後に播種すると、開花期に干ばつに遭遇し、不稔が多くなって収量が悪化するだろう。第二期の播種は、恐らく極めてリスクが高い」とUniversity of Illinoisと、米農務省農業研究庁の生態学者Adam Davis氏はと語った。

カナダの農家が遺伝子組換えジャガイモを初栽培

 J.R. Simplot社によって開発された4種の遺伝子組換えジャガイモを、カナダの農家が初めて植える予定である。ジャガイモ品種Russet Burbank、Ranger Russet、AtlanticおよびSnowdenは、非褐変形質を有し、アクリルアミド産生が低いものであり、カナダ市場で有利になる。この品種は、2016年にカナダ保健省とカナダ食品検査局の承認を受けていたが、2016年春の植え付け時期には間に合わなかった。Simplot社は、2017年の植え付けシーズンに向けて種イモを手配するために、カナダの栽培農家や加工会社と協力したいとしている。

ブラジル農業者の90%が遺伝子組換えの重要性を認識

 ブラジルのバイオテクノロジー情報評議会(CIB)は、遺伝子組換えの情報を地域の生産者に提供する事業の一環として、ダイズやトウモロコシの作物に使用されている技術についての農業者の理解と、実用状況に関する調査を行った。

 その結果として、CIBはブラジルの生産者の90%が害虫抵抗性と除草剤耐性に関する組換え技術の重要性を認識していることを明らかにした。しかし、新技術を開発して立ち上げるには最大15年かかることを知っているのはわずか60%であった。

 調査では、かなりの数の農業者が依然として重要な管理手順を実行していないことが示された。遺伝子組換え技術と化学物質の継続的使用に当たっての管理について質問すると38%が実際に管理を行っており、43%が避難作物を導入していると答えた。

CIB理事長のAdriana Brondani氏は、「この結果によると、害虫抵抗性や除草剤耐性などの技術が失われることの問題を生産者は認識しており、問題の解決に動いている。このような受容状況にあるので、これらの技術の保全について大きな懸念はない」と述べた。

省力化できる作物の開発が進んでいる

 米Monsanto社の野菜部門の研究者は、近代的なバイオテクノロジーを用いて省力化できる品種の開発を行っている。これは、世界中の多くの農業者が労働力不足に直面しているからである。

 「省力化には、農作物の管理を改善するより良い農業形質や耐病性のような方法もあるが、成熟期を均一にすることに収穫に要する時間を短縮化できる形質にする方法もある。また、作物の姿を変える、例えば ブロッコリーの頭を持ち上げることで自動または機械的収穫を可能にできるといった方法もある」とMonsanto社の野菜部門のグローバルR&DリーダーのJohn Purcell氏が述べている。

アジア・太平洋

任意に開花させられる遺伝子組換えイネを開発

 東京大学の研究者らは、特定の殺真菌剤と接触するまで花がつかない遺伝子組換えイネを作った。 結果は、Nature Plantsに掲載されている。

 井澤毅教授らは、自然開花を阻止するために、開花抑制遺伝子Ghd7(Grain number, plant height and heading date 7)を過剰発現させることによって非開花イネを開発した。特定の農薬によって誘導されるイネフロリゲン遺伝子(Heading date 3a)を重ねて形質転換した。この品種は、長期間栄養成長ができるので、作物体の大きさ、穂の大きさ、その他の収量関連特性の改善を示した。

 この研究の結果は、様々な気候条件で成長する作物の開発につながる可能性があり、様々の農業特性の育種にも利用できる。

ヨーロッパ

英国のANNE王女がGM作物の排除は実際的でないと発言

 英国のAnne王女は、2017年3月23日にBBCラジオの放送の中で、遺伝子組換え(GM)作物は食糧を提供するための重要な利点を有ておりし、この作物を自国で栽培するようにすべきであると発言した。彼女は、「我々はこれらを受け入れなければならない」と述べ、これが生産と家畜の健康維持に役に立つとした。

 王女は、作物の能力を改良するのに手段は何ら問題はないとも語った。 「遺伝子組換え技術は本当に有益な利益を提供している」とも述べ、さらに、「もしも何かがあったらという議論は実際的でない」とした。一方、王女の弟のCharles王子は、GM作物に反対しており、環境破壊を起こすと警告している。

 Anne王女はさらに「GMは人々の見解を分けるものの1つである。正当な価格で食品を生産するには、GM技術を受け入れるべき」などと述べた。また、バイオ燃料、農業における科学の利用、また何が将来農業者の助けになるかも議論した。

研究

遺伝子組換えでレスベラトロール高含量としたイネの代謝変化

 レスベラトロールは、ブドウの皮に存在する一般的な抗酸化物質であり、心臓に効果のある物質である。レスベラトロール高含量のイネ(RR)は、レスベラトロールの産生を誘導するstilbene合成遺伝子と除草剤耐性を付与するためのphosphinothricin-N-acetyltransferase遺伝子を含んでいる。韓国Incheon National UniversityのMin Sung Ki氏が率いる研究チームは、レスベラトロールを高含量としたイネの代謝にどのような変化があるかを検討した。

 彼らは、気候条件の異なる韓国の3つの異なる地域で、2収穫期に非RR品種とRR品種を栽培した。彼らは2イネ品種の主成分を分析した。その結果、化学組成が、遺伝的形質転換よりも栽培時期と地域によってより影響を受けていることを示した。さらに、統計的解析により、非RRとRRの生化学的な有意差がなかったことが明らかになった。また除草剤処理がRRの化学組成に影響しないことも示された。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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