国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年4月】

(2018.05.10 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年4月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

農業に最大の損失を引き起す災害は干ばつとFAOの報告書

 自然災害による農業損失は毎年何十億ドルにもなる。中でも干ばつは最も破壊的な脅威である。 これは、国連食糧農業機関(FAO)が発表した報告書によるものである。

 FAOの「農業および食糧保障に対する病害と災害の影響」と題する報告書によると干ばつ、洪水、森林火災、暴風雨、植物病害虫、動物病害の発生、化学物質漏出、有毒藻類の繁茂などの自然災害は、途上国に2005年から2015年にかけて960億ドル の損失を引き起こした。損害の約50%(480億ドル)はアジアで発生した。 干ばつがあらゆる自然災害の中でも最も大きな脅威であることが判明した。 干ばつによる経済損失の約80%は農業分野であり、290億ドルの損失となった。

バイオエコノミーのための全世界的な協調をFAOが呼び掛け

 バイオエコノミーは、飢餓、貧困、気候変動などの世界的な課題に対処する方策を提示できる。これは、2018年4月20日にドイツのベルリンで開催されたグローバルバイオエコノミーサミットで、国際連世界食料農業機関(FAO)の気候・天然資源副長官であるMaria Helena Semedo氏が述べた。

 バイオエコノミーとは、化石資源の代わりにバイオマスを利用して、食料品やその他の物資、例えばバイオプラスチックやバイオ医薬品などを生産する経済を指す。 Semedo氏は、バイオエコノミーこそが自然およびバイオマスの保全と生産に関与し、家族規模の農業者、森林業および漁業者など、「持続可能な方法で天然資源をいかに管理するかについての重要な知見を持っている」者の関与が重要だと強調した。

 Semedo氏は「国際的に協調した取り組みを促進し、地方、国家、世界レベルでの複数の関係者の関与を確実にしなければならない」とも述べ、これを達成するには、適切に可視化した目標、それを達成する具体的手段、そしてその進歩のコスト効果を可視化する手段が必要であるとした。

 Semedo氏は、「誰一人残さない全員で持続的なバイオエコノミーの発展に協力して取り組みましょう!」と述べ、FAOが加盟国や他のパートナーと協力して農業、林業、漁業に加え、関連の深いバイオテクノロジーや情報工学技術など農業分野に役に立つものと協力して進めるように働きかけるべきと語った。

アフリカ

ウガンダの国民が科学技術に基づくバイオテク政策を要望

 2018年4月14日、科学者、学生、政策立案者、農業者、市民社会など科学に大きな期待をかけるウガンダの人々が熱い熱帯の熱気に基づく様々な要望を掲げ、ウガンダの首都カンパラの通りを行進し、科学を支持し、政策決定における優先順位付けを主張した。ウガンダ最大の都市で100人以上の参加者を集めたこの行進は、世界中の300以上の都市で数多く行われた同様の企画の1つである。

 デモにはかなりの数の参加者が行進し、まずは政府に対し、ウガンダで遺伝子組換え(GM)作物の商業化を可能にする法案であるNational Biosafety Bill(バイオセーフティ法)が通過することを要請した。反GM活動家などによる長期にわたる政治的議論によって、GM作物などの現代農業技術成果を農業者に渡す努力を怠ってきた国において、このデモ行進は、関係者に指導的行動を促すためのプラットフォームを提供したことになる。

 デモ行進は、ウガンダ科学同盟、Makerere大学、ウガンダバイオサイエンス情報(UBIC)、その他の科学技術支援機関によって組織された。

南北アメリカ

農業科学技術審議会が農業バイオの規制障壁に関する報告書発表

 米国の非営利組織である農業科学技術審議会(CAST)は、「小規模企業および大学による革新的農業バイオテクノロジーの開発への規制障壁」と題した報告書を発表した。この報告書は、米国の現在の遺伝子組換え作物の規制制度を総括し、主要な貿易相手国と比較し、農業バイオテクノロジーへの影響を考察している。

 この事業は、委員長のAlan McHughen氏の主導で行われた。専門家は、遺伝子組換え(GE)作物の革新と開発には公共財源を大きく投入し、貢献してきたにもかかわらず、学術機関や小規模な民間企業は、ほぼ完全に農業バイオ市場から除外されていることを示していると指摘している。

米国農務省がゲノム編集などの植物育種革新に関する声明

 Sonny Perdue米国農務長官は、ゲノム編集を含む革新的な新しい育種技術によって生産された植物に関する米国農務省(USDA)の明確な見解を示した声明を発表した。

 声明によると、植物病害虫由来の遺伝子や、植物病害虫を使って開発したものでない限り、USDAはバイオテクノロジー規制の下、伝統的な育種技術によって開発された植物を規制する予定はないとしている。これには、新しい植物品種を生産するために植物育種家によって使用された、伝統的な育種方法によって開発されたものとは区別できない一連の新しい技術が含まれる。ゲノム編集のような最新の方法は、新しい植物形質をより迅速かつ正確に導入することができるため、伝統的な植物育種ツールを拡大することになり、農家に必要な新しい品種をもたらすのに要する時間を、数年から数十年単位で節約させる可能性がある。

 Perdue長官は、「植物育種の革新は、栄養価を高め、アレルゲンを排除しながら、干ばつや病気から作物を保護するのに大いに期待できる。この科学を使って、農業者はより少ない天然資源を使って、消費者が望む健康で入手可能な食物を今日休止続けることができる。この新しい革新は、誰にでも食事を供給するという我々がUSDAでなすべきことであり、農業者が行うことに役立つ」と述べている。

アジア・太平洋

韓国に農業バイオテクノロジー研究センターが発足

 韓国の農村開発局(RDA)は次世代バイオグリーン21プロジェクトのための農業バイオテクノロジー研究センターを公募により設立した。 2018年1月、Kyungpook National UniversityのPark Soon-ki教授が研究チームリーダーに選出された。
次世代のバイオグリーン21プロジェクトは、韓国における産学官連携の国家プロジェクトである。本プロジェクトの目的は、研究基盤の確立と農業バイオテクノロジーの確保を通じ、グローバルな技術競争力と韓国における農産業の将来性を確保することである。プロジェクトに対しては、RDAにより年間246億ウォン、年間で82億ウォンの資金が3年間提供される。

 世界を牽引する農業バイオ産業の発展を目的として、将来の食糧安全保障、将来の気候変動に適応するバイオテク作物、世界の種子市場のためのコア遺伝子と資源技術の確保、新技術開発GM安全性評価と規制管理を含むものである。
「農業バイオテクノロジーとバイオテク種子開発に関する研究は、既存の育種技術では解決が難しい農業分野の問題を克服する最先端の農業技術を目的とするもので、国家的側面で確保しなければならない重要な技術である。巨額の研究費を要することと社会的な反対があることから、米国や欧州など他の先進国に比べて韓国は遅れをとっている」と、農業バイオテクノロジー研究センターのPark Soon-ki所長は語った。

 同所長は続けて、「上記のように遅れをとっているが、今後の気候変動適応のためのバイオテク作物開発技術を確保し、このプロジェクトを通じて韓国の農業の限界を克服し、グローバルなバイオテク種子開発者として飛躍できるよう、私は最善を尽くす」とも述べた。

ヨーロッパ

英国人は遺伝子技術に慎重だが楽観的と、英国王立協会の報告書

 英国王立協会(The Royal Society)の報告によると、英国の人々は、DNA配列解析、遺伝子治療、ゲノム編集などの技術を、ヒトの健康を改善し、不平等を減らし、気候変動の影響に対応するような地球規模の課題に取り組むために利用することに対して慎重だが楽観的でもあるとのことだ。王立協会が、人間、植物、動物に適用される遺伝的技術に関する英国の見解を調査し、その使用に関するいくつかのジレンマと論議を探るために世論調査を行った。

 2061人を対象とする調査では、46%が「ゲノム編集は一般的に地球規模の課題に取り組むには多大なリスクを伴う」との意見に賛成する一方、特定の分野、例えばヒトの健康への使用については非常に肯定的だった。植物のゲノム編集を利用して、より安価な医薬品作る(69%)、低栄養の課題を解決にするために作物をより栄養豊かにする(70%)、カビなどの病害による作物の被害を防ぐ(77%)ことには多数が賛成した。

 ヒト疾患を予防または治癒するための動物におけるゲノム編集の使用も支持されている。例えば、調査参加者の71%がマラリアの広がりを制限するために遺伝子組換え蚊の使用を承認している。

 調査回答者の約43%が、大学の学者、科学者、研究者を、遺伝子技術に関する情報とアドバイスを提供する最も信頼できる人と位置付けた。この見解は、このグループがより公平であるとしたワークショップを含む調査への参加者によって支持されている。遺伝子工学研究に取り組んでいる、または資金調達している企業は、第2位の信頼を得て(16%)、政府機関/政策立案者(14%)、規制機関(12%)と続いている。

研究

家畜の健康と成長に対する遺伝子改変の役割に動物科学者が着目

 食糧生産牛の遺伝的特徴を改善するためには、伝統的育種方法より遺伝子改変が向いているとする研究者が多数いる。例えば、Washington State Universityの生殖生物学センター所長のJon Oatley氏が挙げられる。

 Oatley氏は、「現在我々は、洗練されたツールや分子ツールを使って、動物の遺伝的特性を改善して、自分たちが望む特性を持つようにできるようになった。我々は、何千年も前から行ってきた方策と比べて、動物の健康、成長、幸せを飛躍的に改善させる方策を取ることができる」と述べた。
Oatley氏は、遺伝子医薬品を使用することの大きな利点として、望ましい結果を得るために非常に必要な時間を節約できることを強調した。 「2050年までに地球の人口は100億人になると予想される。次の30年、40年で地球上にいる人の数は2倍になるだろう。我々が現在行っている方法では、生産を2倍にはできない。我々は、異なる方法でより効率的にやり遂げる方法を見つけなければならない。そうすれば今日の栄養基準で、増加する世界の人口に食糧を提供することができる。私たちの研究は、いまそれを目指している」とOatley氏は、言った。

CRISPR/Cas9でトマトのリコピン含有量を増加

 リコピン含量の高いトマト植物を開発することは、トマト果実の見た目をよくするともに栄養的特性を改善することになる。そこでthe China Agricultural University のXindi Li氏のチームは、CRISPR/Cas9を用いてトマトのリコピン含量を増加させることを目指してきた。 チームは、カロチノイド代謝経路に関連する遺伝子をノックダウンするためにCRISPR/Cas9を使用することによりリコピンの蓄積量を改善することを期待した。

 研究者らは、カロチノイド代謝経路に関連する5つのトマト遺伝子を標的とした。 CRISPR/Cas9により、目的の複数の遺伝子を同時に標的にした突然変異を誘導することに成功した。 得られたトマト系統の果実は、リコピン含量が5.1倍に増加したという。 突然変異はまた、次世代に安定して受け継がれることも分かった。
これらの結果は、CRISPR/Cas9をトマトのリコピン含量の改善に用いることができることを示唆している。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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