国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2019年3月】

(2019.04.16 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2019年3月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

南北アメリカ

研究チームがダイズ害虫に対する戦いに勝利

Iowa State University (ISU)の研究者たちは、ダイズシストセンチュウのDNAの奇妙な点を克服し、そのゲノムの配列を決定した。ダイズシストセンチュウはダイズの根に感染し、感染した畑で収穫量を減らす寄生性害虫である。線虫の個体数は畑で増えるだけでなく、何年にもわたり畑に留まる。

ダイズシストセンチュウの遺伝学的課題は、科学者たちが何年もの間全ゲノムの組み立てができなかったことである。研究者たちはまず、より小さな部分の配列を決定し、次にそれらの部分をつなぎ合わせて完全なゲノムにすることによってゲノムを配列決定した。「線虫の2万9769個の遺伝子の約3分の1が反復性であり、それが配列決定と組み立ての過程を複雑にしていた」とISUバイオテクノロジー研究室の副研究室長で研究の主導者であるRick Masonbrink氏が述べている。

ISU Genome Informatics Facilityの長で、この研究の共同研究者のAndrew Severin氏は、「ゲノム組み立てにあたり、全ての部分の形状と色は区別のつかない同じ青空でのジグソーパズルと見立てた高品質のゲノム配列を長い時間をかけて積み重ねてきた配列決定技術をもって可能になった」としている。

詳細は下記のサイトをご覧ください。
https://www.news.iastate.edu/news/2019/03/01/soybeancystnematodegenome

古代作物のゲノム情報を利用することで収量向上の可能性

米国と中国の研究者と科学者の国際チームが、主に米国の大平原地帯、中国北部、ヨーロッパの一部で栽培されている世界で最も干ばつに強い作物のキビ(Panicum miliaceum)のゲノムの配列を決定した。

キビは他のどの穀物よりも少ない水しかない不良土壌で育ち、アフリカやアジアの絶えず暑く乾燥した帯状地域の自給自足農家で好んで栽培されている。しかし、収量が少ないために収穫が困難になり、食料、飼料、または燃料としての主要作物としての利用性に限度があった。

配列決定プロジェクトは、蛋白質の構築を規定する5万5000を超える遺伝子を同定した。また、この種のゲノムは、500万年以上前に密接に関連した2つのゲノムが融合したことに由来することも明らかにした。比較例を挙げると、パンコムギのゲノムは、ちょうど過去6000年以内に出現したものである。

チームはまた、他の植物種でこれまで報告されたことのない生化学的発見も行った。 キビ(C4植物)は、無機炭素を有用な形に変換するために3つの異なる生化学的経路全てを使用することが分かっている。ほとんどのC4植物は3つの生化学的経路のうちの1つだけを使用し、植物生物学者はごく最近になってトウモロコシで2つの経路を使っている証拠を見つけた。

詳細は下記のサイトをご覧ください。
https://news.unl.edu/newsrooms/today/article/sequenced-genome-of-ancient-crop-could-raise-yields/

アジア・太平洋

数か月以内にバングラデシュでゴールデンライスが入手可能に

バングラデシュの農業大臣のAbdur Razzaque氏によれば、ゴールデンライスとして知られているビタミンA強化米が、すぐにバングラデシュで入手可能になりそうだ。 彼は国際ライス研究所の関係者との会合の後の記者会見で明らかにした。世界保健機関(WHO)によると、バングラデシュの幼児5人に1人はビタミンA欠乏症であり、妊娠女性の23.7%もビタミンA欠乏症である。

大臣は、「ゴールデンライスは、ビタミンA欠乏症と戦うのに役立つので、他の品種よりも重要である。米国、カナダ、オーストラリアでは、このゴールデンライスの品種は既に認可されている。環境省の委員会が、このゴールデンライスの生産を認可することになる。  認可を得て2、3カ月以内にバングラデシュで栽培を始められるようになる」と述べた。

詳細は下記のサイトをご覧ください。

https://geneticliteracyproject.org/2019/02/01/vitamin-fortified-golden-rice-could-debut-in-bangladesh-within-3-months-agriculture-minister-says/

ワタの完全なゲノムアセンブリを発表

中国Zheijiang UniversityのTianzhen Zhang教授らは、インフォマティクス企業であるイスラエルNRGene社のカスタマイズされたDeNovoMAGIC-3ソフトウェアを使用して、2つのワタ種Gossypium hirsutumとG. barbadenseの最も完全なゲノムアセンブリを作成した。結果はNature Genetics誌に掲載されている。

様々な業界でワタが広く使用されているにもかかわらず、その起源についてはほとんど知られていない。 2種類のワタを染色体ごとに精査することで、科学者と育種家はワタの可能性をさらに引き出すことができるようになった。

「2種類の栽培された異質4倍体ワタ種は、繊維の品質、成長様式、および収量において顕著な違いがある」とZhang教授は述べている。 「NRGene社のツールの成果として、これら2つのゲノムを比較し、ワタの起源と栽培種化について、これらの多様な形質の原因となる遺伝的差異を特定するのに役立てられようになった」

詳細は下記のサイトをご覧ください。
https://www.nrgene.com/publication-of-cotton-genome-assemblies/

日本の専門家は、ゲノム編集食品は安全と結論した

遺伝子組換え作物の規制に関する世界的な議論が続いている中で、米国や日本などの国々は、そのような作物からの食品は規制を必要としないという結論に達した。

厚生労働省の諮問委員会は、関連する技術が一定の基準を満たす限り、ゲノム編集食品を安全性評価なしに消費者に販売するのを許可することを推奨している。諮問委員会委員長を務めた新潟大学の内分泌学者である曽根 博仁教授は、次のように述べている。「従来育種法とゲノム編集の間には安全性の見地からは、ほとんど差が見られない」

遺伝子編集食品に関する日本の最終報告書は承認されており、以前の案でも、使用された技術が外来遺伝子または遺伝子の一部を標的生物に残さない限り、安全性スクリーニングは不要であると述べている。諮問委員会は、編集技術、修正の対象となる遺伝子、その他の情報を尊重しながら公開される開発者やユーザからのその他の詳細に関する情報を要求することは合理的であると結論付けた。

詳しくは、以下のサイトの論文をご覧ください。
https://www.sciencemag.org/news/2019/03/gene-edited-foods-are-safe-japanese-panel-concludes

作物以外のバイテク話題

米国FDA、遺伝子組換えサケの輸入禁止を解除

米国食品医薬品局(FDA)は2019年3月8日、遺伝子組換え(GE)サケの輸入を阻止するために2016年に実施された輸入警告を解除したとの声明を発表した。同年、米国議会はFDAに対し、最終的な表示ガイドラインが出るまでは、GEサケの輸入を許可しないよう指示した。この指令は当時、FDAが食品としての安全性を証明したGEサケの科学的証拠を包括的に分析したにもかかわらず出された。 FDAは議会の指示により、2016年の輸入警報を発令でざるを得なかった。

当該輸入警告の無効化は、2018年12月の米国農務省(USDA)による国家バイオエンジニアリング食品開示基準の発表後に起こり、食品製造業者、輸入業者および小売業者はバイオエンジニアリング食品を適切に開示するよう求めている。 USDAが食品開示基準を発行し、効果的に実施していることで、FDAは、USDAが議会の義務を満たしており、したがって2016年の輸入警告の実施を中止できるようになったと考えている。これにより、魚を育てるために使用されるサケの卵を含むGEサケが米国に入ることが可能になった。

FDAは、2015年のレビューでGEサケは安全に食べられ、環境に重大な影響を与えないと指摘した。当局はまた、意図的な遺伝子改変に由来する製品の他の開発者が、製品研究の初期段階でそれらについて規制当局による承認を受けるための予測可能で効率的な方法を早期に知らしめ協力要請するように奨励している。

詳細については、以下のサイトの FDAの声明、 statement 及び米国の国家バイオエンジニアリング食品開示基準、 announcement をご覧ください。

https://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm632952.htm
https://www.usda.gov/media/press-releases/2018/12/20/establishing-national-bioengineered-food-disclosure-standard

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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