国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年3月】

(2018.04.12 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年2月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界


女性がバイオテクノロジー分野で重要な役割を果たす

 2018年国際女性デー(IWD)を世界中で祝う中で、より多くの女性がその権利、平等、公正を求めて声を上げている。国連委員会は「今こそ女性の生活を農村でも都会でも変革する時である!」をテーマに掲げて、世界人口の四分の一以上を占め、開発の全ての指標で取り残されている農村女性の活動に焦点を当てた。

 中国、インド、フィリピンでの国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の研究によれば、この地域の女性は、遺伝子組換え作物栽培において重要な役割を果たしている。インドでは、男性が肉体労働を必要とする農業活動を担当しているが、女性は雑草の除去、抜き取り、清掃などの活動を行っている。中国では、綿花栽培は、女性の仕事になってきている。女性が農地での作業を行っているので、男性は、農場以外の作業に携わることができている。フォーカスグループの議論によると農薬の使用量の削減と労働需要の少ないGM作物が女性に大きな利益をもたらした。フィリピンでは、農業費の予算設定、資金導入決定、農場で働く労働者の雇用などの管理作業を女性が担当している。遺伝子組換え作物栽培に従事しているこれらの女性は、農業経営に提供するそれらによる価値と彼らがその技術から得られる利益を味わっている。

 ISAAAおよびそのバイオテクノロジー情報センター(BICs)は、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を通じて「Science And She ;科学と女性」題するキャンペーンを行って遺伝子組換えの有用性をこれらの女性群が発信することを奨励している。女性科学者や科学コミュニケーターは、科学と公衆の間のギャップを埋めるために彼らが得た経験や指向性を一般公衆と共有するように活動している。

南・北アメリカ

ブラジル製糖会社が遺伝子組換えサトウキビの栽培を開始

 ブラジルの約100の製糖会社は、初めて遺伝子組換えサトウキビの商業栽培を開始した。ブラジルCentro de Tecnologia Canavieira (CTC)社が開発したニカメイ虫に耐性である品種が400ヘクタール(988エーカー)に初めて栽培されることになる。

 ニカメイ虫は、ブラジルの製糖会社の共通の害虫であり、毎年15億米ドルの損害と殺虫剤の費用がかかっている。専門家によって提案された害虫の問題に対する解決策の1つは、耐性のあるサトウキビを植えることである。収量を改善し、生産コストを削減し、利益を増やすことが予測される。 2017年6月、ブラジルでGMOに関する規制を担当するNational Biosafety Technical Commissionは、Bacillus thuringiensisという細菌が産生する殺虫性蛋白質を産生するよう遺伝子操作したBtサトウキビから得られた砂糖とエタノールが、従来のサトウキビと同一であることを証明した後、Btサトウキビを承認した。研究はまた、Bt遺伝子および蛋白質が、処理後にサトウキビ製品から完全に排除されていたことを証明した。環境研究によると、Btサトウキビがマイナスの影響を引き起こさないことが明らかになった。

25%少ない水で栽培できる干ばつ耐性作物への改良

 農業は世界最大の淡水のユーザーであり、人口増加がこの貴重な資源に大きなプレッシャーとなっている。米国と英国の科学者は初めて、水の使用量を25%減らしても生産性を低下させない作物を全ての植物にあるたった1つの遺伝子の発現を変えることで改良した。

 この研究は、米University of Illinoisが率いる国際的な研究プロジェクトである「光合成効率の向上の実現」(Realizing Increased Photosynthetic Efficiency、RIPE)の一環である。 RIPEディレクターのStephen Long氏は、光合成蛋白質(PsbS)のレベルを上げ、植物の気孔を閉じさせて水を節約した。気孔が開いていると、二酸化炭素が植物に入って光合成を行うが、水は大気中に発散する。大気中の二酸化炭素濃度は過去70年間で25%増加したので植物は気孔を完全に開けなくても体内に二酸化炭素を蓄積できる。

 気孔は、湿度、植物体の二酸化炭素レベル、光の質、光の量の4つの要因で開閉する。この研究は、光量に対する気孔応答を利用した最初の報告である。PsbSは、光の量に関する情報を中継する植物におけるシグナル伝達経路の重要な部分である。 PsbSを増加させることにより、植物が光合成するのに十分な光エネルギーが無いというシグナルが伝わり、光合成に燃料を供給する二酸化炭素が必要なとされないので気孔が閉鎖される。

雑草のグリホサート耐性獲得機構を発見

 米Kansas State University (K-State)の研究者は、一般的に使われている除草剤グリホサートに対する耐性を雑草が獲得する機構を発見した。パーマーアマランス(Palmer amaranth。ヒユ、ブタクサの一種)と一般的な水麻(waterhemp)は、非常に短時間でグリホサート耐性を獲得した。研究によると彼らはパーマーアマランスのグリホサート耐性が非常に急速に起こることを発見した。

 彼らは、グリホサート耐性のパーマーアマランスは、グリホサート標的遺伝子を何百コピーも持っていることを発見した。 K-Stateの雑草科学者で米科学アカデミー紀要(PNAS)の論文の共同執筆者であるMithila Jugulam氏は、「グリホサートの推奨投与量をはるかに超えても植物は殺されないだろう」と付け加えた。

 チームの染色体専門家は、グリホサート耐性雑草を調べてみるとグリホサート標的遺伝子が他の数種の遺伝子とともに染色体から切り出されて自己複製環状DNA構造を形成していた。この構造は染色体外環状(extra-chromosomal circular DNA、eccDNA)と呼ばれている。各eccDNAは、グリホサートの標的である酵素を産生する遺伝子の1コピーを有する。各細胞には何百ものeccDNAが存在するため、豊富な量の酵素が存在する。従って、植物はグリホサート散布の影響を受けず、雑草は除草剤に対して耐性である。

 Jugulan氏は、「グリホサートは除草剤として多くの優れた特性を持っている。K-Stateと他の多くの人々が推奨しているのはグリホサートを使いすぎないことで、農業の持続可能性のためにはグリホサートを使用し続けられるよう、統合された雑草管理戦略を取ることである」と述べている。

Btトウモロコシの導入が他の作物の害虫管理にもベネフィットもたらす

 米University of Maryland (UMD)農業・天然資源学部(AGNR)の研究者は、Bacillus thuringiensisという細菌が産生する殺虫性蛋白質を産生するよう遺伝子操作したBtトウモロコシのメリットを定量化するために40年のデータをまとめた。これまでの研究では、Btトウモロコシが米国のアワノメイガのような害虫管理にもたらしたベネフィットが示されているが、この調査は北米において初めての他の作物への影響を調べたものである。

 1996年に米国で導入された遺伝子組換え作物であるBtトウモロコシは、現在、トウモロコシの全生産量の90%以上を占めている。UMDの昆虫学科の総合的害虫管理(IPM)コンサルタントであるGalen Dively博士と、UMD研究員のDilip Venugopal博士は、1976年から2016年までのデータを使用し、BTトウモロコシ導入20年前と20年後の傾向を調査した。「BTトウモロコシや他の遺伝子組換え作物の安全性は、綿密に試験され、証明されているが、この研究は、Btトウモロコシ自体というよりも、特に異なる場所にあるオフサイト作物や異なる作物に対する害虫管理戦略としてのBtトウモロコシの有効性についてを検討した」とVenugopal氏は説明している。

 アワノメイガの数を制御することにより、トウモロコシだけでなくピーマン、インゲン豆、および主要な北米農業での他の作物にも推奨されている薬剤散布、害虫数の顕著な減少がみられた。このようなベネフィットは以前には見られなかったことであり、BTトウモロコシが害虫抵抗性の発揮や先進的農業技術として役に立つことの証左となっている。

 Venugopal氏は、次のステップは「農薬散布や害虫の管理、作物の被害軽減、環境へのベネフィットを踏まえると、何百万ドルもの経済的便益を示すものだ」と述べた。さらにBTトウモロコシは、IPMツールボックスにある多数のもの1つとして考えるべきだと指摘した。 「利点は否定できないが、潜在的なリスクを最小限に抑えながら、幅広いツールを使用し、利益を最大化するために、他の多くの選択肢も重視する必要がある」と彼は付け加えた。

カナダ保健省がゴールデンライスを承認

 2018年3月16日、カナダ保健省は、国際的なイネ研究所(IRRI)に、プロビタミンAの含量を増加したGR2E品種(一般にはゴールデンライスとして知られている)の食品としての利用に問題ないことを報告した。この決定は、2017年12月のオーストラリアニュージーランド食品規格(Food Standards Australia New Zealand 、FSANZ)の承認と一致している。

 カナダ保健省は、その報告の中で「この栄養的な変化のある品種は、カナダの市場に今出ている品種に比較して大きなリスクを人間の健康にもたらすものではない」と発表した。さらに、カナダ保健省は、GR2Eがアレルギーに影響を及ぼさず、プロビタミンA以外の他の栄養価が従来の品種と差異がないと結論付けた。

 分子生物学、微生物学、毒性学、化学、栄養学の専門家は、データの十分な解析とIRRIが提出した実験実施要項と、実験結果の確証を行った。カナダ保健省は、新規食品の安全性評価ガイドラインに基づき、ゴールデンライスの包括的な評価を実施した。そこでのGM食品の安全性評価のやり方は、過去20年間にわたる世界保健機構(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、および経済協力開発機構(OECD)の国際的専門家と協議して開発したものである。このやり方は、現在世界、EU、オーストラリア/ニュージーランド、日本、米国でも適用されているものである。

アジア・太平洋

南オーストラリア州でのGM作物禁止は農業者に何の利益ももたらさない

 農業バイオテクノロジー評議会(Agricultural Biotechnology Council of Australia、 ABCA)と南オーストラリア州の穀物生産者は、畜農産業の市場調査会社であるMecardo社の独立した市場解析専門家に対して、南オーストラリア州の遺伝子組換え(GM)作物禁止措置が貿易や市場において効果をもたらしたかについて、伝聞と逸話によらない事実を証拠に基づいた報告を出すように委託した。その結果、「南オーストラリアGM禁止政策の下でのプレミアム価格の分析」という報告書が発表された。

 Mecardo社の解析は、南オーストラリア州のGM作物モラトリアム措置によって、南オーストラリア州の農業者はプレミア価格を達成できていない一方で、安全で承認された遺伝子組換えナタネを栽培する経済的、環境面でのベネフィットを経験する機会を持てなかったとの証拠が出た。
GM および非GMの作物が栽培されているビクトリア州と西オーストラリア州の市場と南オーストラリア州の市場価格を直接比較すると、非GMナタネ、小麦、大麦、ワインブドウ、牛、羊、羊肉の価格について、南オーストラリア州の農業者は高値を達成できていなかった。この報告書は、GM作物禁止を止めさせるべきであり、非GM農業者はいかなる形でも影響を受けないとしている。この報告書は、また、非GM農家とGM農家との共存がオーストラリアで行われており、異なる生産システムが並んでいるという証拠でもある。

オーストラリアでのGMナタネ導入の遅れのコストを試算

 「遺伝子組換え/GM作物の導入の遅れによるコストはいくらか?」との問いに対してオーストラリアSaskatchewan大学(uSask)とSGA Solutionsの専門家がオーストラリアのGMナタネについての答えを出した。その結果は、「GM Crops&Food」誌に掲載されている。

 GMナタネは、2003年に科学的証拠に基づいたリスク評価後にオーストラリアで承認された。しかし、主なナタネ生産州および他の州の州政府は、貿易の影響を理由に6年間にわたって栽培を解禁しないモラトリアムを続けている。Saskatchewan大学のScott Biden 氏らは、カナダでのGMナタネ導入曲線を用いて、モラトリアムが実施されていない場合、2004年から2014年のGMナタネを導入した際の環境的および経済的ベネフィットを推定した。

 オーストラリアでのGMナタネ導入の遅れによる環境的コストには、ナタネ栽培地における有効成分650万kgを含み、農業者、消費者、生態系などへの影響は14.3%増加した。また 870万Lのディーゼル燃料が余分に使用され、これは、2420万kgの温室効果ガス(GHG)とその他の排出物が放出されたことになる。また一方、110万tのナタネの生産減とナタネ農家の純経済損失は4億2560万オーストラリアドルとなる。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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