国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年3月】

(2017.04.13 08:00)

 (編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年3月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

米国国立科学アカデミー、PLOS One論文に異論を申し立て

 米国国立科学・工学・医学アカデミーは、2016年に発表した遺伝子組換え作物に関する包括的報告書を執筆した国立アカデミーの委員の間で利害の衝突があったと主張するPLOS Oneの論文の著者に対して、思慮のないものであるとの声明を発表した。国立アカデミーの声明によると、議論は厳格かつ明確かつ透明な利益相反を取り扱う方針の下で実施したということだ。委員会は約1000以上の論文を見直し、3回の公開会合、15のウェブセミナーを開催し、遺伝子組換え作物に関する専門家の助言と情報を募集めた。この報告書は、最終版がリリースされる前に、外部の匿名の者による厳密なピアレビュープロセスを受けたとしている。

 「報酬なしで奉仕した委員会メンバーが、この重要な問題について徹底的かつ慎重な調査を献身的に実施したことに感謝している。米国政府は、国立アカデミーが政策決定と一般市民に証拠に基づいた情報を提供するために、多くの専門家が快く奉仕してくれたことを、幸いかつ誇りにしている。我々はこの報告書を誇りとし、委員会の意見に従うものである。報告書は今日までに、169カ国から3万3618回のダウロードがなされた」と国立科学・工学・医学アカデミーが声明で表明した。

米国国立科学アカデミー、未来の組換え製品の準備に関する報告書を発表

 未来の遺伝子組換え製品と遺伝子組換え規制システムの能力を高めるために米国国立科学・工学・医学アカデミー(NAS)委員会は2017年3月9日に「遺伝子組換えの未来製品への準備」と題する報告書の発刊前段階のものを公表した。

 この新報告書は、2015年7月に米大統領行政府科学技術政策局(OSTP)によって開始された遺伝子組換え製品の規制を担当する機関の役割を明確にするために開始された事業の一環である。 NASは、3つの規制機関(米国環境保護庁=EPA、米国食品医薬品局=FDA、米国農務省=USDA)から依頼され、次の5年から10年の遺伝子組換え製品の未来と未来の製品の動向を洞察し、今後の各機関が備えるべき能力を予見して提供することを委託された。

 委員会は、「遺伝子組換え規制システムが将来の遺伝子組換え製品に求められる消費者の安全と環境保護を監督する能力を高める」ことが必要とされるとし、これらの課題に対応するための3つの勧告を出した。

・将来の遺伝子組換え製品の規制に関与するEPA、FDA、USDA、およびその他の機関は、自然科学、規制、社会科学を含む遺伝子組換えの期待される成長の主要分野において、科学的能力、ツール、専門知識を高める必要がある。

・EPA、FDA、USDAは、未知かつ複雑な将来の遺伝子組換え製品の環境学的リスク評価および利益分析の理解と活用を促進するパイロットプロジェクトの利用を増やし、外部のピアレビューと一般市民参加取り込んだ反復リスク分析の新しいアプローチを創生する必要がある。

・国立科学財団、国防総省、エネルギー省、国立標準技術研究所、および新しい遺伝子組換え製品につながる可能性のある遺伝子組換え研究に資金を提供する他の機関は、規制科学への投資を増やし、研究と教育をつなぐ規制・科学活動を増強すべきである。

南北アメリカ

米国環境保護庁、3品種の組換えジャガイモを承認

 米国環境保護庁(EPA)は、アイルランドのジャガイモの飢餓を引き起こした病原体に対して、抵抗性を持った遺伝子組換え(GE)ジャガイモ3品種の栽培を承認した。EPAによると、GEジャガイモは環境に対して安全であり、食して安全である。

 GEジャガイモテは、米J.R. Simplot社によって開発された。.Simplot社によると、GEジャガイモは、ジャガイモ遺伝子のみを含み、疫病耐性遺伝子は、アルゼンチンのジャガイモ品種に由来する自然病原性耐性のものである。

 EPAによる決定は、2017年1月に食品医薬品局によって与えられた安全性要件に合致している。

米Cornell University教授が遺伝子組換え作物の消費を促す

 米Cornell UniversityのSarah Davidson Evanega教授(Cornell Alliance for Science所長)は、「気候変動に関する科学的コンセンサスを維持しながら、GM作物の安全性に関する科学的コンセンサスを否定することはできない」と 語った。Evanega教授は、「食糧安全保障と世界成長:3月4日の大きな旗印として」をテーマとする学長主宰の「Cornell University女性評議委員会(PCCW)シンポジウム2017」の行事の一環として、世界レベルの食糧安全保障に遺伝子組換え生物(GMOs)が重要な役割を果たすと強調した。

 Evanega氏はGMOsについての見方をもう一度見直すように、またケースバイケースで各GMOを評価し、消費者と環境に対するリスクと利益を評価するように促した。 「私は、環境保護主義者と言いながら、Bt(Bacillus thuringiensis)作物などの農薬使用を減らす技術を役立てられない立場には立ちえない」とも語った。

 Cornell Alliance for Scienceを通じてEvanega氏は、農業バイオテクノロジーが環境に対する負の影響を最小限に抑えるのにいかに役立っているかを、一般市民が理解するのを助けるために働いている。

真菌由来のRNAを用いてアフラトキシンフリーコーンを開発

 米Arizona State Universityの植物遺伝学者であるMonica Schmidt氏は、アフラトキシンを作る植物につく菌類の能力をオフにする様々な遺伝的操作をトウモロコシに施した。 彼女の発見は、オープンアクセスジャーナルのScience Advancesに掲載されている。

 アフラトキシンは、真菌Aspergillusによって産生されるマイコトキシンである。 アフラトキシンがヒトや動物に摂取されると、肝毒性、肝臓癌、クワシオルク(kwashiorkor)、ライ(Reye's)症候群、成長障害を引き起こす。

 Schmidt氏らは、Aspergillus.リボ核酸(RNA)の断片をトウモロコシ取り込ませた。 宿主植物と真菌の間で小さい遺伝子情報を感染中に交換して、アフラトキシンを産生する真菌の能力を停止または消滅させた。この技術は、アフラトキシンフリーとするのに100%有効で、試験の結果では、アフラトキシンフリーの穀粒を生産できた。

アジア・太平洋

日本農学アカデミーがGM作物の圃場試験の実施を提言

 農学専門学術機関である日本農業アカデミーは2017年3月1日、農林水産省で記者会見を行い、「北海道での遺伝子組換え(GM)テンサイを優先し、各種GM作物の圃場試験を実施すべきである」と提言した。

 提言は、GM作物、特に除草剤耐性GMテンサイの圃場試験を実施して、米国およびカナダなどの除草剤耐性(HT)テンサイ作付け国が享受する技術のコスト削減効果を確認することを目指している。非労働集約的な新技術は、苗の植え付けよりもむしろ直接播種を利用して、労力や雑草除去で発生からコストを節約できる。

 同アカデミーはまた、日本の全地域で共同して圃場試験を実施することを望んでいると、中央政府と北海道庁に提案した。さらにこの技術の恩恵を受けると考えられる各方面に提言を発信している。この提言は、当アカデミーのウェブサイトにアップロードされ、政府およびその研究機関ならびに関連学会に郵送された。

欧州

欧州化学物質庁がグリホサートに発癌性は認められないと結論

 欧州連合(EU)の専門機関の1つである欧州化学物質庁(ECHA)のリスク評価委員会(RAC)は、入手可能な科学的証拠が、グリホサートを発癌物質、変異原または繁殖毒性物質として分類するための分類、表示および包装規則の基準を満たしていないと結論した。 RACは、分類、表示および包装規則の基準に対するグリホサートの危険性を評価し、広範な科学的データを検討した。

 委員会はまた、グリホサートに関する発表された研究を除いて、業界が実施した研究の元の報告書に完全にアクセスできたとした。 RACは、2016年の公開協議中に受け取った科学的に関連する情報を含む全ての科学的データを評価した。RACは、2016年12月の第39回会議で関係者との最初のディスカッションを開催した。委員会と加盟国は、グリホサートを農薬の有効成分として2017年後半に使用する承認を更新するかどうか検討する際にこれらの意見を取り上げる予定である。

研究

CRY10AA遺伝子は、組換えワタにワタゾウムシ耐性を付与

 Washington State Universityの研究者であるDa Lu氏は、Bacillus thuringiensis(Bt)の遺伝子であるcry10Aaによって付与されたワタゾウムシ耐性(CBW)に対する耐性の高い遺伝子組換え(GM)ワタの開発に成功した。

 チームは、ワタプロモーターuceA1.7で駆動されるcry10Aa遺伝子を含む形質転換ベクターを設計し、バイオリスティック形質転換を介してブラジルのワタ品種に導入した。T0  GMワタの葉および花芽組織の両方においてcry10Aaの転写レベルが高いことを明らかにした。 分析によると、T0 GM個体は1つまたは2つの導入遺伝子コピーを有していた。

 CBW感受性バイオアッセイは、有意な殺虫効果および高いCBW死亡率を示した。 分子分析によると、組換え体の安定性およびCBWに対する殺虫効果がT1世代にも維持され、cry10Aa毒素発現レベルは組織内に高いままであることを明らかにした。

新育種技術(NBT)

CRISPR / CAS9による高アミロースイネの開発

 高アミロースと難消化性澱粉の穀物は、健康に有益である。以前の研究によると澱粉分枝酵素(SBE)が澱粉の構造および物理的特性を決定する上で主要な役割を果たすことが実証されている。しかしながら、澱粉の分枝を制御することは、商業的品種改良には依然として課題である。

 中国農業科学アカデミーのYongwei Sun氏が率いる研究でCRISPR / Cas9技術を用いて、イネのSBEIおよびSBEIIb遺伝子の標的突然変異誘発を行った。チームはT0ホモ接合型または倍数型対立遺伝子のSBEIおよびSBEIIb変異株を得た。ホモ接合型T0系統の突然変異は、安定してT1世代に伝達され、一方、対立遺伝子系統の突然変異はメンデル様式で分離された。

 SBEI突然変異体と野生型との間には明白な違いは観察されなかった。しかし、SBEII突然変異体は、脱分岐アミロペクチン中に存在する長い鎖の割合が高く、アミラーゼ含有量および難消化性澱粉含量が有意に増加し、澱粉の微細構造および栄養特性が変化した。

 これらの結果は、SBEIIbのCRISP / Cas9媒介性遺伝子編集により高アミロースイネを開発する可能性を明示している。

作物バイテク以外

ゲノム編集によりブタ繁殖・呼吸器症候群抵抗性のブタを開発

 The University of Edinburghの科学者は、世界中のほとんどの産豚国でウイルス病の主要な病原体であり、ヨーロッパの豚肉産業は毎年15億ユーロの損害があるブタ繁殖・呼吸器症候群(PRRS)に抵抗性を示すブタを開発した。

 以前の研究では、PRRSウイルスがマクロファージと呼ばれる免疫細胞を標的とすることが示されている。CD163と呼ばれるこれらの細胞の表面上の分子は、PRRSウイルスの感染を確立するのに重要な役割を果たすことがしられている。

 エジンバラ大学のRoslin Instituteの研究チームは、動物ベンチャーの英Genus社と協力して、CRISPR / Cas9遺伝子編集ツールを使用して、ブタのDNAコード中のCD163遺伝子の小さな部分を切り出した。 改変されたCD163遺伝子を有するブタ由来の細胞に関する試験で、その変化がPRRSウイルスの感染を引き起こすのを阻止することが示された。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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