(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2019年2月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

GM食品についての知識が増えれば積極的に受け入れる方向に

 米国、オランダ、および英国の研究者グループによって行われた研究によると、遺伝子組換え(GM)食品の背後にある科学を人々に教えることでGMについてのより多くの知識とより積極的な対応、GMを食べることへのより大きな意欲をもたらし、GM食品を危険性が低いと認識することになる。一方、遺伝子組換え作物や遺伝子組換え食品は厳しい世論に遭遇することがよくあるが、その理由を理解するための研究はほとんど行われていないと報告している。研究チームは、GM食品懐疑論の強くてユニークな予測因子としてのGMテクノロジーの正しい理解の欠如を検討する4つの研究を行った。

 研究1と2は、遺伝子組換え技術に関する知識が、一般的な科学知識と人口統計学的コントロールよりも優れた、遺伝子組換え食品への対応に関するユニークな予測因子であることを示した。研究3は、GM特有の知識のユニークな予測的価値が、米国、英国、そしてオランダで同じであることを確認した。4番目と最後の研究では、5週間の縦断的実験計画法を用いてGM技術の背後にある基礎科学を人々に教えることによって、この知識の欠如を克服しようとした。

 結果は、遺伝子組換え技術の背後にある科学について学ぶことは、遺伝子組換え食品に対するより積極的な明確な対応、遺伝子組換え作物を食べる意欲、および危険なものとしての遺伝子組換え食品の認識の低下をもたらすことを示した。これらの結果は、GMの懐疑論を克服するための将来の介入のための比較的単純なやり方を提供し、研究者と科学者はGM技術の背後にある基礎科学のコミュニケーションと科学リテラシーの向上に力を入れるべきとしている。

南北アメリカ

Bt作物の環境安全性に関する包括的レビューが発刊された

 スイスと米国の科学者によって作成された包括的なレビューでは、Bt作物の実験室および圃場での研究に関する既報の文献を総括した。著者、JörgRomeis、Steven E. Naranjo、Michael Meissle、およびAnthony M. Sheltonの諸氏は、Bt作物の保全生物学的防除への貢献を強調している。

 Biological Control誌に掲載された論文は、過去20年以上にわたってBt作物が10億エーカー以上、2017年だけで1億ヘクタールで栽培されていることを報告している。この技術に関連する主な関心事は、蛋白質が非標的生物、特に生物学的防除などの重要な生態系サービスを提供する生物を害する可能性があるとするものだった。しかしながら、Bt作物からの蛋白質は、標的害虫の天敵には害を及ぼさないことが研究により証明されている。さらに、Bt作物は天敵の保護を行い、標的害虫と二次害虫の両方に対する効果的な生物的防除に貢献し、殺虫剤使用の削減につながる。

 この論文は、重要な標的害虫の防除におけるBt作物の有効性は非常に高いと結論している。世界の幾つかの地域でBt作物が大規模に採用されたことで、この技術を採用した農家と採用しなかった農家の両方に恩恵をもたらし、対象となる害虫個体数の地域規模の抑制がもたらした。

アジア・太平洋

植物による匂い検出の分子機構を発見

 鼻がなくても植物は匂いを感知する。この植物の匂いを感知する能力は遺伝子に依存し、東京大学の研究者たちは匂い分子からの情報が植物の遺伝子発現をどのように変えるかの最初のステップを発見した。東原和成教授が率いる東京大学の研究者によるこの発見は、植物における匂い検出の分子的基礎を明らかにした最初のものであり、これには18年以上かかった。植物は、揮発性有機化合物である臭い分子を検出する。これは、鳥やミツバチを引きつけたり、害虫を防いだり、近くの植物の病気に反応したりするなど、生存戦略に不可欠である。これらの化合物はまた独特の香りを与える。研究者らはタバコ細胞と生後4週間のタバコ植物を異なる揮発性有機化合物に曝露した結果、臭気分子が、遺伝子をオンまたはオフにすることができる転写共抑制因子と呼ばれる他の分子と結合することによって遺伝子発現を変化させることを発見した。

 東原氏らの発見を遺伝子編集や農薬使用などの複雑なことを行わないで作物の品質や特性に影響を与えるために応用することを望んでいる。彼は、農業者の畑に望ましい植物行動に関連する臭いを吹き付けることができると述べている。例えば、害虫が集まらないように葉の味を変えることを引き起こす臭いをつけることを考えている。

ヨーロッパ

白錆病に抵抗性を示す遺伝子

 カリフラワー、ブロッコリー、キャベツ、マスタード、および芽キャベツのようなアブラナ科に属する植物は異なる味がするが、共通の敵(白錆病)が存在する。病原体Albugo candidaによる白さびの一種は、キャベツを脅かす。実際には真菌ではないが、A. candidaは、真菌のように振る舞い、湿度と温度の適切な条件下で広がり、攻撃する植物の栄養素を食べる。

 NorwichのSainsbury Laboratoryが率いる8つのヨーロッパの大学および研究センターからの研究者のチームは、A. candidaに耐性のある4つの遺伝子を同定した。これらの遺伝子は、シロイヌナズナを用いて同定されたヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート(NLR)免疫受容体である。Arabidopsis thalianaに感染するA. candida race 9の分離株に対する耐性を付与する追加の遺伝子が同定された。この論文は、NLR遺伝子によって与えられる免疫が病原体に対する種全体の耐性を提供することを報告している。

研究

鉄含量が高いバイオ強化キャッサバを開発

 鉄欠乏性貧血は子供の免疫システムに影響を及ぼし、成長の妨げと認知発達の障害を引き起こす。この健康問題に対応するための戦略の1つは、バイオテクノロジーツールを介した主要食品へのバイオ強化である。 Donald Danforth Plant Science CenterのNarayanan氏らは、Nature Biotechnologyに報告しているように、より高レベルの鉄を含むバイオ強化キャッサバを開発した。

 研究チームは、キャッサバ中でシロイヌナズナの鉄輸送体V1T1を過剰発現させ、それが貯蔵根への鉄の蓄積をもたらし、非トランスジェニック対照における鉄のレベルよりも3倍から7倍高くなることを明らかにした。変異したA. thaliana鉄輸送体(IRT1)およびA. thalianaフェリチン(FER1)を共発現するように操作された植物は、非トランスジェニック植物におけるものより7倍から18倍高い鉄のレベル、および3倍から10倍高い亜鉛のレベルまで蓄積した。成長因子と貯蔵根収量には、大きな影響は見られなかった。

 研究者らによると、加工されたトランスジェニックキャッサバ(IRT1 + FER1)中の鉄と亜鉛は、推定1歳から6歳の子供と、授乳中でなく、妊娠してもいない西アフリカの女性に対して、推定平均鉄要求量の40%から50%と亜鉛の推定平均要求量の60%から70%を提供できることになる。

新しい育種技術

遺伝子編集を使って安全なグルテン含有コムギを育種

 グルテンフリーダイエットは多くの健康志向の個人の間で盛んな傾向にある。しかし、この食事療法は、セリアック病(CD)の人、または消化器系の特定の種類のグルテンに耐えられない人のために設計されたものである。グルテンは、小麦、大麦、ライ麦、およびその他の関連種に含まれるタンパク質で、調理時または焼成時に接着剤として機能し、パンとケーキができ上るにつれて一緒に保持される。有害反応を引き起こす原因となるグルテンはグリアジンと呼ばれる。

 Wageningen University and ResearchのAurélieJouanin氏は、グリアジン遺伝子を正確に改変し、免疫原性エピトープを除去し、安全なグルテンを有するコムギを開発するためにCRISPR-Cas9を使用して免疫原エピトープとなる遺伝子を除き、安全なグルテンをもったコムギを開発した。原理の証明として、彼女はグリアジン遺伝子のいくつかが改変または欠失されているコムギ品種を開発した。コムギには多数のグルテン遺伝子が存在し、すべてのグルテン遺伝子が標的とされているわけではないため、これらのゲノム編集されたコムギ植物はまだCD患者にとって安全ではない。彼女はまた、どの遺伝子が改変され、どれが編集されるべきかを決定するためのハイスループット方法を開発した。

作物バイオテク以外の話題

β-キシラナーゼを発現するトランスジェニックブタは栄養素利用能が改善

 中国のSouth China Agricultural University とLongyan Universityの科学者たちは、より栄養利用能力の高いトランスジェニックブタを開発した。結果は Transgenic Researchに掲載されている。

 キシランはブタの飼料に含まれる抗栄養因子である。キシランの消化性および栄養素の吸収を改善するために、耳下腺においてAspergillus NigerCGMCC1067由来のβ-キシラナーゼ遺伝子(xynB)を発現するトランスジェニックブタを開発した。

 結果は、4匹のトランスジェニック個体において、唾液中のβ-キシラナーゼ活性が改善されたことが示された。非トランスジェニックブタと比較して、糞便中の粗蛋白質(CP)の含有量は有意に減少し、F1トランスジェニックブタ中の総エネルギーおよびCPの消化率は増加した。これらの知見は、耳下腺からβ-キシラナーゼを産生するトランスジェニックブタが動物飼料中の抗栄養効果を減少させそして栄養素の利用を改善することができることを示している。

文献備忘録

ゲノム編集:全く新しい農作物開発のカギ

 金融サービスを提供するCoBank社の上席経済学者であるCrystal Carpenter氏のビデオ付きの新報告書が発刊された。ここではゲノム編集の利点とチャレンジを論じている。「ゲノム編集:全く新しい農作物開発のカギ」と題する報告書は、ゲノム編集を「新興技術」、「革命的技術」、「新発展技術」と述べている。

 報告書は、ゲノム編集の有益性は極めて大きく、しかも科学者が引き続き技術革新を行い、農業上の最大の挑戦課題を解決すべく新応用性を開発しているとしている。しかしながら報告書は消費者の受容性、規制、技術及び知財がこの技術利用の大きな課題であるとしている。最後に著者は、ゲノム編集が広い分野で成功するには以下の二つの大きな要因があるとしている。即ち、この技術について責任あり、正しく、しかも透明性の高い広報活動と多くの人々に有用性あることを知らしめることである。

2018年度のISAAAの活動報告

 ISAAA は、正しい施策と規制が行われるように願って継続的な活動で遺伝子組換え作物の責任ある発展と導入が図られることを狙っている。ISAAAは、バイオ技術が適切に移転できるようにすると共に効果的な科学の広報を行なうことで科学に基礎を置いた議論を促進することを願っている。2018年度のISAAAの活動報告は、バイオ技術の導入についてバイオ技術を欲しており、これで活水準を向上させることを願っている人々、特に発展途上国に導入できるように努力している。報告書コピーは、以下のサイトからダウンロードして下さい。

http://www.isaaa.org/resources/publications/annualreport/2018/default.asp