国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年2月】

(2018.03.08 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年2月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

FAOとOECDが農業分野への投資を促進

 経済協力開発機構(OECD)と国連食糧農業機関(FAO)は、OECD-FAOの持効性のある農業供給チェーンを作成するための指針の実用化を目指したパイロットプロジェクトを開始した。これは企業が実効性のあるビジネス指針とその必要な基準を順守するのを支援する実用的なツールの開発を目指すものである。このプロジェクトの目的は、国際的に合意された基準に基づく実効性のある農業生産、農業分野における調達および供給チェーンのための標準化と指針を改善することである。

 農業者にとって、生産者と消費者にとって必要とされる投資、適切な雇用、生産性と実効性のあるサプライチェーンの開発が、持続可能な開発目標の達成に不可欠である。しかし、農業者におけるこれらの活動は、労働者、人権、環境、食糧安全保障/栄養、および永久保有権に悪影響を与える可能性もある。 30の先進農業者で始めるこのプロジェクトは、世界的な持続可能性に向けての挑戦に悪影響を及ぼすことを軽減することで、これらの人々や企業の能力を強化するのに役立つと期待される。

アフリカ

ナイジェリアはGM種子の商業化を目指す

 ナイジェリアでは、遺伝子組換え(GM)種子が市場で入手可能になると、地元の種子企業が農家に向けて種子を繁殖させて流通させる戦略的役割を果たすことになる。このことが、国立バイオテクノロジー開発庁(NABDA)の副所長、Rose Gidado博士によって述べられた。

 2015年にナイジェリアのバイオ安全法が制定され、続いてバイオ安全規制の実施を担当する国立バイオ安全庁(NBMA)が設立された。 NBMAによると、同国はGM製品の商業化が熟している。これは、隔離圃場で農家が試験しているMaruca耐性ササゲと一般的に発売されているBtワタをナイジェリアが商業栽培することを示している。

 「GMの種子が最終的に市場に出されると、従前からの種子会社が種子の商業化と繁殖に非常に大きな役割を果たすことになる。もちろん海外の会社が参入してもそれらが置き換わるのではなく、地元の会社が協力してその供給に携わることになる」と農業に関するオープンフォーラムのコーディネーターでもあるGidado博士は語った。また、彼女は、地元種子会社は、既に種子の増殖と販売に加わっていると付け加えた。

南北アメリカ

メタアナリシスで遺伝子組換えトウモロコシの有用性が明らかに

 世界的に見た導入状況から26カ国で栽培されている主要な遺伝子組換え(GE)作物の中で、トウモロコシは、承認された品種数(単一およびスタック(多重)形質を含め)が最多であり、第2位はダイズである。このような状況にあるにも関わらずGEトウモロコシのリスクと有用性は依然として議論されており、安全性への懸念が残されている。

 イタリアの研究者Elisa Pellegrino、Stefano Bedini、 Marco Nuti、Laura Ercoliの4氏は、1996年から2016年の21年間の収穫に関して、メタアナリシスの結果を、Scientific Reports誌に査読付き総説として発表した。解析では、新しい要因として穀物の品質、科レベルでの非標的生物(NTOS)、標的生物(TOS)と土壌バイオマスの分解を含め、GEトウモロコシの圃場でのより厳しい評価を含めている。

 研究者がレビューした6006の出版物のうち、メタアナリシスに適うものは76であった。 GEトウモロコシの農業環境影響に関する21年間の圃場データのメタアナリシスでは、穀物の収量と品質の向上、かつ標的とした害虫のDiabrotica spの減少といった利点が示された。

 分析によると、GEトウモロコシはマイコトキシンが少なく、多くの有益な昆虫に影響を与えなかった。非標的昆虫群の多様性に実質的な影響はないことが示された。 GEのトウモロコシ栽培でトウモロコシの粒内のマイコトキシンが減少し、農産物の収入と品質の向上の他、マイコトキシンのヒトへの暴露量の減少に伴う健康リスクの削減につながる強い証拠が出た。

USDAとFDAは食品安全を確保するために共同作業を行う

 米国の食糧安全法の強化改善に責任のある米国農務省(USDA)と米国食品医薬品局(FDA)が、バイオ安全性管理、新規農場安全性点検システムの施行に関して、両者が協働・協力することで合意した。

 彼らの正式な合意によると、USDAとFDAは、州際通商で食品の管轄を共有している。具体的には、USDAは、連邦食肉検査法(FMIA)、家禽製品検査法(PPIA)と卵製品検査法(EPIA)および施行規則制定の下で、一定の肉、鶏肉や卵製品を規制している。 FDAは、これらの法令の範囲内で他の全ての食品を規制している。現状の枠組みの共有責任の下で、食品の加工工場は、 FDAとUSDAの両者の管轄の中にある。

 USDAとFDA は、両者とも、他の連邦機関からの助けを借り、バイオテクノロジー製品のための効率的かつ科学的な規制慣行を開発するために、国家戦略の一環としてバイオテクノロジー規制協定と米国農業バイオテクノロジー規制制度の近代化に努めていると表明した。

米Minnesota大の大学院生がGM作物開発のプロセスの規制緩和を要望

 米University of Minnesota College of Food, Agriculture and Natural Resources (CFANS)の大学院生が、持続可能な資源を生成する可能性を秘めている繊維と燃料(食品ではない)用の遺伝子組換え作物を開発するためのプロセスの規制緩和する超党派の法案を出すよう、米国下院議員に宛てて嘆願書を提出、公表した。

 当グループは、米国環境保護庁(US Environmental Protection Agency)または米国農務省動物衛生検査機関が現法で求めている承認事項ではなく、新しい承認をする法案の提出を求めている。大学院生は、両機関ともそれぞれ様々なアイデアをもっており、それは、ベンチャー企業の出現を促すと同時に、現在の規制の下で現在幾つかの巨大会社が優位になっている環境に、より良い競争原理を持ち込むことになると述べている。

 「燃料や繊維作物に適用することに限っており、FDAの枠組みの外にあるので、より緩和された法案を作成することが必要である」と大学院生は述べている。

「ARCTIC FUJI」 リンゴがカナダでの商業栽培承認を取得

 カナダOkanagan Specialty Fruits(OSF)社が開発した、褐変しない「ARCTIC」リンゴとしては第三世代に当たる「ARCTIC FUJI」リンゴが、カナダの食品検査機関(CFIA)とカナダ保健省(HC)の認可を受けた。

 CFIAとHCは、「ARCTIC FUJI」の品種は、「現在カナダの市場に現在あるリンゴに比較してヒトの健康へのリスクは大きくない。カナダ保健省は、「ARCTIC FUJI」は、アレルゲンとして問題はなく、これまで消費されているリンゴと栄養価に違いはない」と結論した。2018年春には、ARCTIC FUJIがArctic GoldenやArctic Granny Applesに加わり、商業的果樹園で栽培可能となる。

ヨーロッパ

ドイツの消費者は遺伝子組換え作物の健康リスクより環境リスクを懸念

 ドイツで実施された調査によると、消費者は遺伝子組換え(GM)作物の健康に対するリスクよりも、潜在的な環境リスクをより懸念していることが判明した。結果は、国際消費者調査誌に掲載された。

 ドイツUniversity of Bonn とスウェーデンのSwedish University of Agricultural Sciencesの科学者からなる研究チームはドイツの消費者439人を対象に、遺伝子工学に関するにリスクについての感じ方を調査した。研究課題は、以下の4グループに分けられた。まず、2つの政策シナリオに基づいて、遺伝子工学を研究開発にのみ認めるというグループと、遺伝子組換え(GM)製品の完全な商用化を認めるグループに分けた上で、最終製品の用途によりバイオエネルギーと食料の2つに分けた。

 その結果、食品に使用される可能性が高いものよりも、バイオエネルギー製品に利用する遺伝子組換え作物の方がよりリスクが低いと判断された。GM食糧の完全な商業化は、個人の健康に対する懸念を高め、バイオエネルギーに対する遺伝子組換え作物の使用は、より高レベルの社会経済的リスクと関連していた。ほとんどの消費者が、健康へのリスクが最も重要だと言いながらも、環境への影響に最も高い関心を示した。

温度変化に耐性の作物の育種が「達成可能な夢」へ

 新しい研究によると繁殖温度変化に耐性を持つ作物の育種が達成されつつあることが明らかになった。英国の研究機関であるJohn Innes Center(JIC)は、温度上昇と「pod shatter」(早熟種子散布)との遺伝的関連性を確立した。 Vinod Kumar博士とLars Ostergaard博士が率いるこの研究は、早熟種子散布「pod shatter」が、カリフラワー、ブロッコリー、ケールを含むアブラナ科の幾つかの種において高温下で早まることを明らかにした。

 ポスドク研究員であるXinran Li博士は、17℃、22℃および27℃の3つの異なる温度でシロイヌナズナの子実形成を観察した。この結果、油糧作物のナタネを含むアブラナ科では、高い温度領域で種子散布を起こす組織の細胞壁が固くなることを示した。

 チームは、より高い温度への応答を調節する遺伝的メカニズムを解明した。これまでの研究は、INDEHISCENT(IND)と呼ばれる遺伝子によって種子散布が制御されることを示していた。この研究では、H2A.Zと呼ばれるヒストンが重要な役割を果たす感熱機構の制御下に、INDがあることを明らかにした。

セプトリアコムギ班病に耐性がある遺伝子を発見

 研究者は、初めてセプトリアコムギ班病(Septoria tritici blotch、STB、Septoria)に対する自然抵抗性を持つ遺伝子を単離した。セプトリアコムギ班病は世界の温帯のコムギの主要な葉の病気であり、作物の収量を半分にすることから、世界のコムギ生産にとって大きな脅威となっている。 この病気は、真菌病原体Zymoseptoria triticiによって引き起こされる。

 Stb6と呼ばれる遺伝子は、20年前から知られているが、その遺伝子地図の作成およびその遺伝子の単離は、Rothamsted ResearchのKostya Kanyuka博士と国立農業研究所(INRA)のCyrille Saintenac博士の研究チームにより、5年掛かりで行われた。

Kanyuka氏は、Stb6遺伝子は真菌株の一部、具体的にはAvrStb6と呼ばれるこの遺伝子とマッチする蛋白質を分泌するものに対して有効であると述べた。 Stb6蛋白質は、何らかの形でカビの蛋白質を認識して、コムギの防御反応の活性化につながっている。

疫病耐性トマトを遺伝子工学で開発

 スペインPolytechnic University of Valencia (UPV)と、スペイン国立研究評議会(CSIC)の合弁事業であるスペイン植物分子生物学研究所(IBMCP)の研究者らによる研究により、遺伝子組換えトマトで害虫疫病Tuta absolutaに対する耐性がどのように向上したかが明らかにされた。

 毎年の作物生産の推定40%は疫病や病原菌で失われている。そしてその13%は害虫によるものである。IBMCP に所属するCSICの研究者であるLuis Cañas氏は、「これまで大きな害虫ではなかったTuta absolutaが世界中のトマト栽培地を脅かす主な疫病の1つとなってきて、適切な管理をしなければ生産の80%から100%の損失を被ることになる」と説明する。

 研究者らは、オオムギが有するプロテアーゼ阻害剤から保護する作用のある遺伝子をトマトに遺伝子工学で導入した。オオムギから得たセリンプロテアーゼ阻害剤(BTI-CMe)およびシステインプロテアーゼインヒビター(HV-CPI2)の、昆虫Tuta absoluta対する効果を検討した。遺伝子組換えトマトを用いて両方の阻害剤の単独あるいは合わせた作用を別々に試験した。二重遺伝子組換え体を給餌されたTuta absoluta幼生は顕著な体重減少を示し、幼虫のわずか56%しか成虫期に達しなかった。また、成虫になったものも羽の変形や出生率の低下がみられた。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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