国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年2月】

(2017.03.09 08:00)

 (編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年2月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

中国の研究者ら、おいしいトマトを作る遺伝子を同定

 よりおいしいトマトを作るための方策を得た。中国農業科学アカデミーのDenise Tiemanと共同研究者らが原種由来品種と甘いチェリートマト品種を含むほぼ400種類について大規模遺伝子解析を行った。 その結果、風味を豊かにするトマトの遺伝子を特定した。 これらの成分の多くが、現代の市販品種では失われているか、既に低濃度なっていることが分かった。 研究チームは、味覚を上げる成分の生産に関与する遺伝子を同定し、分子育種を用いてより良い味のトマトを開発する方法を提供した。

気候変動対応型のイネが登場

 ストレス耐性イネ品種は、気候変動に直面している農家を助けられると、フィリピンにある国際ライス研究所(IRRI)のMatthew Morell所長が述べた。 Morell氏は、2001年2月10日、インドのChennaiにあるスワミナサン研究財団(M.S. Swaminathan Research Foundation)での記念講演で、これを強調した。 さらに、世界の人口の半分以上が米を主食としているところからこのイネの品種を「食糧安全保障の原動力となるイネ」と名づけた。 このように、イネの科学者がイネの改良の努力をすることは、途上国の飢餓と栄養不良に対処する上で不可欠である。

 また、Morell氏はIRRIとそのパートナーによって開発された気候変動に対応したイネ品種は、高収率と同時に洪水、干ばつ、および高塩土壌に対応するものであると述べた。

南北アメリカ

気候変動に対応できるトウモロコシの遺伝子を同定

 メキシコのMasAgro Biodiversidad(MAB)/ Discovery(Seeds of Discovery)の研究者らは、ゲノミクス進歩を生かした画期的研究により、米国全土から集めた4000種以上のトウモロコシ在来種のDNAを解析し、特性を解明した。

 トウモロコシの適応の根底にある遺伝子を理解するためにユニークな実験戦略を開発した。この研究では、緯度、高度、生育時期、およびトウモロコシ開花地点に適応するのに働く100個の遺伝子を、4万種のトウモロコシから同定した。

 「この研究は、トウモロコシなどの非常に多様な作物種の遺伝資源を迅速に評価し、育種家や農家に利益をもたらすトウモロコシゲノムを特定し、その遺伝子を手にするための青写真を提供するものである」と分子遺伝学者Sarah Hearne氏は述べた。 Hearne氏は、国際トウモロコシと小麦改良センター(CIMMYT)が率いるMAB / SeeDのトウモロコシ研究の指導的研究者である。

ヨーロッパ

イタリアの科学者がコムギにおけるカノチノイド合成遺伝子を検索

 カロチノイドはビタミンAの前駆体で、植物の光合成および光酸化防御において重要な役割を果たす。コムギでは、カロチノイドが穀物の色に影響を及ぼす。穀物黄色色素の遺伝的基礎を理解し、関連マーカーを特定することは、コムギ品質を向上させるための基礎を提供することになる。

 イタリア、University of Bari ‘Aldo Moro'のPasqualina Colasuonno氏は、比較ゲノミクスを用いてカロチノイドの合成と異化に関与する24の候補遺伝子を同定した。チームはまた、四倍体コムギ品種群の遺伝子型判定に基づいて、ゲノムワイド関連研究を行った。このゲノムワイド関連研究(genome-wide association study; GWAS)は、以前に検出された量的形質遺伝子座(QTLs)を検証し、また、穀物色関連形質のためのに関連する新しいQTLを発見した。 10個のカロチノイド遺伝子が、色素含有量QTLの下にある領域にマッピングされ、候補遺伝子と形質との間の機能的関係の可能性を示した。

 リンクする候補遺伝子マーカーが利用可能になることで、望ましいレベルのカロチノイドを有するコムギ品種の育成を容易にすることができる。カロチノイド色素関連するQTLを同定することは、コムギ穀粒中のカロチノイド蓄積に関連する遺伝子の理解にも寄与できる。

ROTHAMSTED研、英環境・食糧農村省からGMコムギの圃場試験の許可取得

 英国の環境・食糧農村省(Department for Environment, Food and Rural Affairs ;Defra)は、遺伝子組換え(GM)コムギの光合成をより効率的に実施するための圃場試験を行う許可を、英Rothamsted研究所に与えた。圃場試験では、圃場での遺伝子組換え作物の性能の評価を行う。

 Rothamsted 研究所の科学者は、英University of Essexと英Lancaster Universityの研究者とともに、太陽光からのエネルギーをバイオマスに変換する効率を高めた小麦植物コムギを開発した。 Rothamsted 研究所は、2016年11月3日にDefraに申請書を提出し、2017年から2019年の間にRothamstedの圃場でGMの圃場試験を実施する許可を得た。リスク評価は独立した環境への諮問委員会(Advisory Committee on Releases to the Environment ;ACRE)が行い、さらに Defraによって48日間の公的協議が行われた。 ACREによれば、この応募に関して一般市民から提起された全ての科学的問題が取り上げられた。

 Rothamsted研究所の植物生物学および作物科学部門責任者であり、Rothamstedの指導的科学者であるMalcolm Hawkesford博士は、「この試験は、実際の環境条件でこの植物が同じ資源と土地を使って相当する非遺伝子組換え植物よりも多くの生産ができることを評価できる重要な前進となるものである。この圃場試験が農民に経済的便益をもたらし、長期にわたるこの研究への投資に対して英国の納税者にお返しをし、全体として英国の経済に便益をもたらし、かつ全体として環境にも利益をもたらすものである」と語った。

研究

代謝工学でゴム含量の高いタンポポを開発

 天然ゴム(NR)は、工業製品の重要な原材料であり、主な原料はゴムの木(Hevea brasiliensis)である。しかし、世界的な需要の増加で代替源が必要になっている。ロシアのタンポポ(Taraxacum koksaghyz)は、その根系に多量のNRが生成されるため、潜在的な選択肢である。しかしながら、タンポポを代替物とするには、タンポポのゴム合成能を改善しなければならない。 T. koksaghyzはまた、篩管の近くの実質細胞根の液胞に貯蔵に大量の炭水化物イヌリンを産生する。

 ドイツMuenster大学のAnna Stolze氏らは、T. koksaghyzおよびその関連するT. brevicorniculatumにおけるイヌリンおよびNR代謝の包括的な分析を行い、イヌリンを分解して、フラクトースとスクロースに分解する酵素フルクタン1-エキソヒドロラーゼ(1-FEH)の特性を研究した。Tk1-FEHの過剰発現で貯蔵されたイヌリンを分解してNR産生を行うので2つのタンポポ種の植物自体には何ら影響を与えないでNRを2倍に増強した。

 これは、予備の炭水化物イヌリンがタンポポ中のNRの合成を促進するために使用できることを示す最初の研究である。

組換え技術で油糧作物ナタネの種子重量と大きさを改善

 ナタネ(Brassica napus L.)は重要な油糧作物であり、バイオ燃料の原料でもある。種子収量には種子重量と種子の大きさが直接影響し、これが直接油の収量にも影響する。遺伝子DA1は、種子の大きさに負の調節することが知られており、Arabidopsis(AtDA1)におけるDA1遺伝子を負に制御することでより大きな種子および重量をもたらす。中国のJiangsu UniversityのJie-Li Wang氏は、DA1の機能しない形であるAtDA1R358Kを過剰発現させることによって、B.napusのBnDA1を負に制御した。

 遺伝子組換え体は、バイオマス、種子の大きさ、子葉、葉、花、および長角果が有意な増加を示した。さらに、1000種子重量は21.23%増加し、植物当たりの種子の収量は野外条件下で13.22%増加した。この変換は収量に悪影響を及ぼさなかった。

 この研究は、DA1遺伝子の調節が、ナタネの種子改良のための有望な標的であることを証明した。

CRISPR/Cpf1でダイズの脂質含有量を改良

 韓国の基礎研究機関(IBS)のゲノム工学センターの研究チームは、新しいCRISPR/Cpf1技術を用いてダイズ油の脂肪含量に寄与する2つの遺伝子を首尾よく編集した。この技術は、広く使用されているゲノム編集ツールCRISPR/Cas9に代わるものである。

 IBSの科学者は、以前はヒトDNA細胞を編集するためにCpf1を使用していた。今回は、CRISPR/Cpf1複合体を植物細胞に導入した。チームは、ダイズ中のFAD2遺伝子の2つを切断するようにCRISPR/Cpf1を設計した。これらの遺伝子は、オレイン酸を多価不飽和リノール酸に変換する経路の一部である。 FAD2遺伝子を変異させることにより、ダイズ種子中のオレイン酸の割合が増加し、より健康なダイズ油が得られる。

 IBISの研究チームはまた、CRISPR/Cpf1にCRISPR/Cas9よりも3つの利点を発見した。CRISPR/Cpf1技術はより短いCRISPR-RNA(crRNA)を有しているため、化学的に合成することができる。 CRISPR/Cpf1は標的遺伝子中により大きな欠失(7塩基対)を生じ、これは遺伝子を完全に不作動にするのに適している。 Cpf1の残された切断片は、さらなる遺伝子編集プロセスに使える可能性がある。

遺伝子組換え作物以外の話題

ゲノム編集で心臓病のリスクを低下

 英国の製薬会社AstaZeneca社の研究者グループは、遺伝子編集が心臓病のリスクを軽減できるという証拠を提供した。 DNA編集技術の研究をリードするLorenz Mayr氏によると、コレステロール値が非常に低い自然変異を持つ人がいる。 AstraZeneca社は、1回の注射投与で突然変異を導入する方法のを開発した。 注入をマウスで試験すると、コレステロールレベルの有意な低下が観察された。 研究者は、この手順が人間にとって安全であることを確認するために、より多くのテストを実施している。研究が肯定的な結果を提供し続けているとすれば、ヒト試験は10年後に行える可能性があると予測している。 この治療法は、一部の患者に負の副作用を有するスタチン類の良い代替薬となりうる

哺乳動物に初のジーンドライブ、オーストラリアで侵襲性齧歯類の根絶を計画

 オーストラリアの科学者は、米国の保全チームと協力して島の海鳥への侵襲性齧歯類の根絶することを目的として、最初の哺乳類へのジーンドライブ技術の適応を計画している。

 ジーンドライブ技術は、遺伝の傾向を変える新しい方法で例えば、大幅な個体数の減少を起こしている野生動物の子供を遺伝的に強化するために、遺伝の傾向を変える方法である。この技術はこれまでに昆虫、特にマラリア、デング熱、ジカなどの蚊伝染病を取り除くために蚊に使用されている。

 オーストラリアUniversity of Adelaideのマウス遺伝学者、Paul Thomas氏は、CRISPR技術を用いて「娘の生まれないマウス」を開発した。このマウスは雄の子孫しか産生しないため、島のマウス個体数は減少し、技術が有効に働くと最終的にゼロになる。研究者らはまたこの遺伝的に改変したマウスを追跡するためにブラックライトを当てると赤く輝く遺伝性の蛍光蛋白質をマウスで発現すること可能にした。

 この手法が効果的であると判明した場合、齧歯類を根絶するために毒を適用することに代わる有効な代替手段となり得る。

文献備忘録

ISAAAがバイオテクノロジーに関するボードゲーム作製

 ISAAAは、バイオテクノロジーに関する最初の印刷可能なボードゲームを発行した! 新ゲームボードは#バイテクは楽しい( #BiotechisCool)と呼ばれ、作物改造に使用される不思議な菌や遺伝子銃、遺伝子組換え作物の植え付けについての農家の意見など、作物バイオテクノロジーに関する楽しい事実を強調している。 このボードゲームは、実験室から試験圃場、そして最終的には農民の農場に遺伝子組換え作物に至る紆余曲折を理解することができる。 新ゲームは、高校や大学の学生だけでなく、専門家でも予備試験されたものである。

 以下のサイトからダウンロードできるので友人と遊んでください。
http://www.isaaa.org/resources/interactivegame/biotechiscool/default.asp

 また、やってみた感想をFacebookに載せてください。Twitter (@isaaa_org)には前記のタグを使ってください。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧