国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年1月】

(2017.02.09 08:00)

 (編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年1月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

世界

国連生物多様性会議、農業分野で生物多様性保全を取り入れる政策求める

 167カ国の政府代表が、食糧安全保障と気候変動対策を含む持続可能な農業の発展を達成するためには、全ての農業分野で生物多様性保全を図ることが不可欠であると述べている。これは、2016年12月にメキシコのカンクンで開催された国連生物多様性会議(COP13)で明らかにされた。

 会議の宣言によると、国際社会は、生物多様性保全のために環境省とは別に、様々な政府・経済部門も参加すべきであるとしている。各国政府は生物多様性保全とその持続可能な利用を人間の福利のために主流化する詳細な行動計画に従うことに合意した。

 国連食糧農業機関(FAO)の副局長であるMaria Helena Semedo氏は、「今が転換点だ」と述べた。「農業部門と生物多様性は、しばしば別のものと捉えられ、しばしば相反するものとも見られることもあったが、両者は、密接に関連するものである。農業は、本来生物多様性の主要な利用者であるが、同時にその保全にも貢献するものである」と付け加えた。

国際研究チームがコムギ品種改良に必要な多種多様な遺伝子資源を開発

 英国のHoward Hughes Medical Institute(HHMI)、University of California、Davis、英国のJohn Innes Centerの研究者は、コムギ遺伝子機能の解析を加速するために多様な遺伝子資源を開発している。その中で1000万以上の遺伝子配列およびカタログ化された遺伝的変異を明らかにしたパンおよびパスタ用コムギの種子資源をコムギの育種者や研究者が自由に入手できるようにした。

 コムギは重要な作物だが、遺伝的特徴により研究や遺伝子操作が困難である。コムギは倍数体であり、各細胞に複数のゲノムのコピーがある。パスタ小麦は全ての遺伝子の2つのコピーを持ち、パンの小麦は3つを持っている。

 5年前、研究チームは、何千種もの変異をコムギ種子に化学的にランダムに誘導した。蛋白質をコードするゲノムの小さな部分に焦点を当てる方法を開発した。チームは4000億塩基のDNA塩基配列を決定し、突然変異した種子から2375個の変異株を分析した。 2375のコムギ系統の塩基配列が定まったものが一般に公開されており、3000種以上の種子が世界のコムギ研究者に分与されている

アフリカ

ブルキナファソにおけるGMワタの導入は農業に好影響

 ブルキナファソでの遺伝子組換え(GM)ワタの栽培は、農薬使用量を3分の2に減らし、従来のワタよりも収量を増やし、投入労力も減らした。これは、6年間の農業調査データを集積したOklahoma州立大学とブルキナファソの環境および農業研究所(L'Institut de l'Environnement et de Recherches Agricoles、INERA)の研究者による6年間の調査結果である。

 農場の大きさがGMワタの導入を妨げるものではないことも分かった。大きさにかかわらず、全ての農場は、GMワタの栽培で大きな収益を得た。この結果はまた、労働力が従来のワタよりもGMワタ農場で高く評価され、効率的に利用されることを示した。

南北アメリカ

キューバは2017年春から遺伝子組換えダイズとトウモロコシを栽培

 キューバは、2017年の春に、遺伝子組換えダイズとトウモロコシをより多く栽培できるようになると、遺伝子工学・バイオテクノロジー農業研で研究センター(CIGB)のMario Estrada局長が述べた。Estrada局長は、キューバの規制機関が要求する試験を全て完了したとも述べた。

 「我々は現在、小規模な実験区画で、世界の主要国が達成した水準に近い9t/haのトウモロコシの収量が得られた」とEstrada局長は述べた。また、除草剤耐性の遺伝子組換えダイズについても試験しており、圃場試験で最大2.8t/haの収量を示したとも述べた。

米農務省は遺伝子組換えクリーピングベントグラスの規制を緩和した

 米農務省の動物衛生検査機関(APHIS)は、Scotts 社およびMonsanto社が開発した遺伝子組換えクリーピングベントグラスのリスク評価を終えた。評価の結果、農作物およびその他の植物にリスクを起こす可能性がないことを認めた。したがって、APHISは遺伝子組換えベントグラスの規制緩和を発表した。

 決定の記録と最終的な環境への影響に関する文書はUSDA-APHISウェブサイトに掲載されている。

 ベントグラスの新品種は、グリホサート除草剤に耐性を示す。

ホワイトハウスが新たな2017年版バイオテクノロジー規制の更新枠組みを公表

 ホワイトハウスは、「調整整備したバイオテクノロジー規制枠組み(2017年更新版)」を発表した。 2017年更新版は、バイオテクノロジー製品の規制に関わる環境保護庁(EPA)、食品医薬品局(FDA)、および米国農務省(USDA)の3つの主要規制機関の役割と責任の包括的な要約を提供している。

 2016年9月に発表された「バイオテクノロジー製品の規制制度の最新化に関する国家戦略」と合わせて、2017年更新版は、現代バイオテクノロジーによる全ての製品を適切に監督する確固たるしかも柔軟な規制構造を提供している。

 製品開発者および一般国民が製品の規制をどのように見ているかを理解するための助けになるように、2017年の調整整備したバイオテクノロジー規制枠組みでは、次のような規制機関の役割と責任に関する情報が提供されている。

•規制機関の役割に関して機関特有のものをグラフィックスで概要を示した
•製品開発者が規制の枠組みをどのように進めるべきかを例示で示してある
そして
•バイオテクノロジー製品分野の規制の監督のために、EPA、FDA、およびUSDAの現在の責任と関連する調整をまとめた包括的な表を示した。

米国農務省は遺伝子組換え作物に関する規制の改定を提案

 米国農務省(USDA)の動物および植物健康検査サービス(APHIS)は、遺伝子組換え生物の規制を改正する勧告を事前公開した。 APHISによると、これは1987年以来実施されて以来最初の大幅な改正となる。

 米国種子貿易協会(ASTA)の理事長兼最高経営責任者(CEO)Andy LaVigne氏は、次のように述べている。「米農務省の提案は、遺伝子編集の応用が、伝統的な育種法によって開発された品種と本質的に同等の植物品種をもたらすものであり、得られた品種を同等に扱おうとすることを喜んでいる」 またさらに「この提案をまだ検討しているところであるが、このアプローチは、米国の農業がイノベーションの最前線に留まり、世界的にリーダーシップの役割を維持できるようにする」と付け加えた。

 この提案とともに、米国食品医薬品局(FDA)は、遺伝子編集によって開発された新しい植物品種に関するコメントを集める意向を発表した。

アジア・太平洋

インド農業研究協議会、コムギ遺伝資源の遺伝的有用性を明らかに

 インド農業研究協議会(ICAR)の植物遺伝資源管理局(NBPGR)は、インド国立ジーンバンクで保存されている1万9460のコムギ受託品種の膨大な野外評価調査を実施し、サビ病および黒斑病耐性品種源を同定した。3つのコムギ種、Triticum aestivum、T. durum、およびT. dicoccumについて、2011年から2014年の栽培期に複数の病気の多発地域で順次スクリーニングし、耐性を示した品種を次の段階の評価に回した。 NBPGRは、1万9460のコムギ受託品種のうち、複数のサビ病に耐性の可能性がある498個の受託品種および黒斑病に耐性の可能性のある868個の受託品種を同定した。スクリーニングは、小麦のサビ病の多発地域であるWellington (Tamil Nadu)、縞状サビ病の多発地域であるGurdaspur(Punjab)、黒斑病の多発地域であるCooch Behar(West Bengal)などで行われた。

 研究の結果は、インドジーンバンクに保存されている244種類のパン小麦および253種のデューラム(マカロニ)コムギが、2つの病気の多発地域で縞状サビ病に抵抗性または中程度の抵抗性があることを再確認した。この結果は、また縞状サビ病に対する部分的な耐性の多様な遺伝子源、および急速に進化するサビ病原体に対する緩やかなサビ病への抵抗性遺伝子源を特定できる可能性を示した。マーカーベースのスクリーニングは、コムギ遺伝資源には十分な遺伝的多様性のある耐性遺伝子のあることを示した。

バングラデシュ農業研究所の科学者が遺伝子組換えジャガイモの商用化申請

 バングラデシュは、Btナスの後に2番目の遺伝子組換え作物の便益を得る予定である。バングラデシュ農業研究所(Bangladesh Agricultural Research Institute 、BARI)の科学者たちは、疫病に耐性を示す様々なジャガイモ品種を開発し、それらの商用リリースを申請した。 疫病は、真菌によって引き起こされる最も壊滅的な病気の1つである。 毎年、バングラデシュの農家は、疫病を防ぐために500トンの殺菌剤を使用し、Tk100 crore(1280万米ドル)も使っている。 現在、バングラデシュは世界的に7番目のジャガイモ生産国である。

 BARIの塊茎作物研究センターの科学者であるMd. Abu Kawochar氏によると、前年度の栽培期にバングラデシュの6カ所で行われた最終的な規制圃場試験でポジティブな結果を示した。 その結果をもとに商用リリースの申請を2016年12月29日に提出した。

パキスタンPunjab州農業大臣が遺伝子組換えトウモロコシ圃場を訪問

 パキスタンのPunjab州農業大臣Naeem Akhtar Khan Bhabh氏は、遺伝子組換えトウモロコシ圃場を訪問した際にバイオテクノロジーの重要性を確認した。

 同大臣は、パキスタンのMonsanto社が実施した圃場試験場で、遺伝子組換えトウモロコシ有用性を確認した。彼はまた、技術の特徴、作物の特徴、試験項目および農業実践についても説明を受けた。

 視察に地元の農民も参加し、バイオテクノロジーの発展について学んだ。 将来遺伝子組換えトウモロコシ栽培することで農業者の資金投入と労働力を減らし、作物収量を維持することへの助けとなることが期待された。

オーストラリアの遺伝子技術規制局はGMワタの圃場試験を承認

 オーストラリアの遺伝子技術規制局(OGTR)は、オーストラリアMonsanto Australia社に承認証を発行し、害虫抵抗性および除草剤耐性に関するワタの遺伝子組換え(GM)栽培を限定的かつ制御下の圃場試験を承認した。

 圃場試験は、New South Wales州、Queensland州、Northern Territory州、Victoria州、Western Australia州のワタ栽培地域で、2017年3月から2021年7月まで実施される。この提案は、2017年に50ha、2018年に100ha、2019年と2020年に250ha/年の最大総合面積で年間50地点に栽培することである。個々の試験栽培での最大植栽面積は2017年に2ha、2018年に10ha、2019年と2020年の50ha/年である。遺伝子組換え(GM)ワタは人間の食糧や飼料には使用されない。

 最終的なリスクアセスメントおよびリスク管理計画(RARMP)は、この限定的かつ制御された解放栽培での結果から人および環境に対するリスクがなく、特定のリスク処理手段を必要としないと結論付けている。

作物バイオテクノロジー以外の話題

ベクター媒介病に対抗するFriendly Aedesプロジェクトがインドでも立ち上げ

 インドのGangabishan Bhikulal Investment and Trading Limited(GBIT)と米Oxitec社は、マラリア、デング熱、およびチクングンヤを含むベクター媒介疾患の脅威に対抗するFriendly Aedesプロジェクトの立ち上げを発表した。インドは最近、Oxidec社のFriendly Aedes蚊の野外ケージ試験を開始して、Aedes aegyptiの集団を抑制するためのFriendly蚊の有効性を実証した。

 インド医学研究評議会(ICMR)の事務局長であるSoumya Swaminathan博士は、Dawalwadi、Jalna、Maharashtraの野外飼育施設を開設し、インドの規制当局からの承認を待っているFriendly™蚊の保健圃場試験を実施した。

 「最近、デング熱やチクングニヤ症例の増加が報告されているが、現在入手可能な方法ではこれらの公衆衛生上の疾病に有効ではありませんでした。しかしOxitec社の先駆的技術が、これらの疾患の拡がりに関わる蚊を制御できた。」とGBITのディレクター、Shirish Barwale氏が述べた。

 デングとチクングニヤは毎年インド市民に甚大な影響を及ぼしており、インドでは、デング熱、チクングニヤ、ジカ、黄熱病の原因となるウイルスの主要な媒介を行うA. aegypti 蚊に対抗する新しいツールが必要であり、最近発表された研究によると、デング熱単独では毎年約580万人のインド人が感染しており、総費用は年間10億ドル以上と推定されている。さらに、2016年には、デリーを含む都市部でチクングニヤの深刻な流行が見られた。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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