国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2019年1月】

(2019.02.07 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2019年1月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。

世界

将来予測:世界のアグリバイオ市場規模は今後4年間に大幅に成長する

 市場調査会社であるTechnavioの報告書によると、世界のアグリバイオ市場は2018年から2022年の間に212億米ドル近くまで成長するとのことだ。 2018年12月に市場調査会社Technavioはその主要な技術市場に関する報告書の中で世界のアグリバイオ市場は今後4年間にその成長を加速し、年平均成長率は約11%になると述べた。この成長の53%は、南北アメリカ大陸からのものである。また同報告書は、成長率を牽引している重要な要因の1つとして、作物収量の向上を上げている。

 同報告書には、さらに市場の競争状況の分析と、ドイツBASF社、ドイツBayer社、中国ChemChina社、米DowDuPont社、ベルギーEurofins Scientific社などの様々な企業に関する製品情報も含まれている。また、成長または市場規模に対する様々な分野からの貢献度の予測も示した。特に、同報告書は、様々な国でトランスジェニック種子が採用されることにより、市場で最も高いシェアを占めることになると予測している。

南北アメリカ

米国農務省(USDA)、組換え遺伝物質が検出されなければ表示は不要

 2018年12月20日、米国農務省は、Sonny Perdue長官から国の生物工学的食品開示基準を発表した。2016年7月に議会を通った国の生物工学的食品開示基準法では、生物工学技術が使われた、あるいは使われた可能性がある食品は「bioengneered」(BE)と表示することが義務化された。

 基準は、生物工学的食品とは、特定の実験室技術によって改変され、従来の育種では作成できない、または天然には見られない検出可能な遺伝物質(genetic material)を含む食品と定義している。この基準の生物工学的食品の定義では、製造された食品および成分に関する幾つかの研究が引用されており、「遺伝物質が検出されない場合、食品または成分は修飾された遺伝物質(genetic material)を含むと結論付けることは不可能である。現在得られる科学的証拠に基づくと、加工条件で最初に原料農産物に含まれている遺伝物質(genetic material)を効果的に分解または排除するため、精製ビートおよびサトウキビの糖、高フルクトースコーンシロップ、精製植物油よびその他の精製成分はBE食品開示を必要としない」としている。

 この基準は、小規模食品製造業者を除き、2020年1月1日に実施される。義務化の施行は2022年1月1日である。2021年12月31日までは自主的に行えばよい。

 詳しくは以下のサイトをご覧下さい。ここには、規制の施行文書も含まれている。
https://www.ams.usda.gov/rules-regulations/be
https://www.federalregister.gov/documents/2018/12/21/2018-27283/national-bioengineered-food-disclosure-standard

アジア・太平洋

良い品種を開発のためにNRGENEとTOYOTAがイチゴゲノム解析を実施

 イスラエルのゲノムインフォマティクス企業であるNRGene社とトヨタ自動車は、市販イチゴのゲノムを解読した。これは日本市場に対して、高品質で、地元で生産される新種開発の重要な一里塚である。NRGene社のイチゴゲノムのアッセンブリは、トヨタのGRAS-Di DNA分析技術とともに、日本市場向けのより良いイチゴの開発を後押しすると期待されている。

 NRGene社によると、2倍体のイチゴゲノムは「DeNovoMAGIC 3.0」というを用いたゲノムビッグデータ人工知能(AI)ツールを使用してアッセンブリされた最も複雑なゲノムの1つ。

 自動車製造事業で知られるトヨタは、1999年以来、環境に良い影響を与える取り組みを通じて地域社会への貢献を行ってきている。イチゴのゲノム解析の他に、トヨタは病気に強いサトウキビ遺伝子の同定にも関わっており、農業の発展を支援するために、NRGene社とのプロジェクトを推進している。

研究

イネの光合成促進により収量向上

 Molecular Plant誌に発表された研究によると、イネの光合成を促進するための新しい生物工学的アプローチによって、イネの収量が最大27%増加する可能性がある。 GOCバイパスと呼ばれるこのアプローチを用いると、光呼吸によって放出されるCO2を植物細胞にため込むことができる。遺伝子操作された植物は、より環境に優しく、より大きく、そして圃場条件下で光合成効率および生産性の増加を示し、特に明るい光の中では有利である。

 主要作物の収量の可能性を高めるための主な遺伝的アプローチは、光合成に焦点を当てたものだ。光合成を増加させる1つの方法は、光呼吸を回避することである。光依存プロセスでは、酸素が吸収され、CO2が放出される。過去に行われた幾つかの研究は植物に光呼吸バイパスを導入したが、実験のほとんどはシロイヌナズナを用いて行われたものである。新しい研究では、研究チームは光呼吸からのCO2を、本質的に光合成に転換する戦略を開発した。彼らは、3つのイネの酵素、すなわちグリコール酸オキシダーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、およびカタラーゼを使用して、光呼吸の産物であるグリコール酸と呼ばれる分子をCO2に変換した。 3つの酵素にちなんで名付けられたGOCバイパスを展開するために、研究者はイネの葉緑体に酵素をコードする遺伝子を導入した。

 結果は、光呼吸率は通常と比較して18%から31%抑制され、正味の光合成率は15%から22%増加した、これは主に光合成に使用された細胞CO2の高濃度のためである。遺伝子操作されていない植物と比較して、GOC植物は一貫してより環境に優しくより大きく、地上乾燥重量は14%から35%高かった。さらに、デンプン粒は100%の大きさで成長し、細胞当たりの数は37%増加した。春の播種期には、穀物収量は7%から27%改善した。

新育種技術

コムギの種子形態形質を改変するために使用できるCRISPR/CAS9

 CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術は、農学的形質の分子基盤を解明し、これらの形質を制御する遺伝子の改変を可能にすることによって、コムギ品種の改良をスピードアップする可能性を秘めている。 CRISPR/Cas9は、合成ガイドRNA(gRNA)をベースにしており、Cas9ヌクレアーゼをゲノム内の特定の標的に向かわせ、二本鎖切断(DSB)を引き起こし、機能喪失変異を引き起こす挿入および欠失を引き起こす。

 Kansas State Universityの研究者、Qianli Pan氏は、効果的なコムギゲノム編集の一連の手法を報告した。次世代シーケンシングデータを用いて、コムギプロトプラストアッセイを適用した幾つかのgRNAのゲノム編集効率を推定し、形質転換に最も効率的なgRNAを選択した。イネの5つのコムギオルソログへの一連の手法の適用に成功すると、以前に同定された構成要素遺伝子が得られる。これらの遺伝子全てについて遺伝子編集体を得た。これらの遺伝子は、イネにおけるものと同様の傾向を示すことが検証および観察された。

 イネでの導入法の発見はコムギの形質にも用いられて育種の効率を上げる可能性を示しており、育種を効率的に行える方策といえる。

遺伝子編集によるピリリとした風味の遺伝子組換えトマトの開発

 遺伝子編集ツールの開発により、ブラジルのFederal University of Viçosaの専門家は、ピリリとした風味のトマトの開発のための生物工学の適用の可能性について探究した。この論文はTrends in Plant Scienceに掲載されている。

 ピリリとした風味のトマト(スパイシートマト)を開発する主な目的は、トウガラシにスパイシーな風味を与え、健康上の利点と産業上の利用があることが証明されている二次代謝産物のカプサイシノイドを容易に大量生産することである。研究者によると、2つのゲノム編集技術を一緒に使用することで、トマトにカプサイシノイド生合成を開始させることができる。

 最初のものは、病原菌であるXanthomonas spp.が植物宿主に感染したときに分泌する蛋白質のセットである転写アクチベーター様エフェクター(TALE)を用いる。TALE遺伝子を、単一のT-DNAベクターに導入して、重要なカプサイシノイド生合成遺伝子の幾つかの発現を同時に上昇させることができると考えられる。実際の実験では、転写物レベルがカプサイシノイド経路を機能させるのに十分であるかどうかを示す必要がある。

 第二の技術は、ゲノム工学技術を用いてプロモーターの標的を置換することである。これは、アントシアニン産生の調節に関与する転写因子をコードするANT1遺伝子に挿入された構成的35Sプロモーターの使用がトマトにおいて有効であることが証明された。カプサイシノイド経路における不活性遺伝子のプロモーター領域は、転写活性遺伝子を有するシスジェニック植物を産生するために、内因性トマト果実特異的プロモーターと置換され得ると考えられる。実際のテストでは、製品が完全に機能しているか、生化学的に活性であるか、そして正しい反応を触媒するかが明らかになる。

作物バイテク以外の話題

空気をきれいにする遺伝子組換え観葉植物の開発

 University of Washingtonの研究者は、一般的な観葉植物であるポトスを、家の中の空気をきれいにするのを助けるために遺伝子組換え植物にした。 クロロホルムやベンゼンなどの危険な化合物が家に蓄積すると、両方の化合物への曝露が癌に関連する。

 改良したポトスは、周囲の空気からクロロホルムとベンゼンを取り除く。 この植物は、シトクロムP450 2E1または2E1と呼ばれる蛋白質を発現し、これらの化合物を変換し、植物が自分の成長するために使用できるようにする。 研究者たちは2E1を作ように遺伝子を合成し、ポトスに導入したところ、植物体の各細胞はこの蛋白質を発現した。 ポトスは温暖な気候では花を咲かせないので、GM植物は花粉を介して広がることはない。

アルゼンチンではゲノム編集ティラピアは遺伝子組換えとは分類されない

 アルゼンチンの農業バイオテクノロジー全国諮問委員会(CONABIA)は、ゲノム編集ティラピア(FLT 01)をアルゼンチンでは遺伝子組換え生物(GMO)として分類しないことにした。

 ティラピア新品種は、米Intrexon社 およびその子会社で、AquaAdvantageサーモンの生産者として知られている米AquaBounty Technologie社によって開発された。 FLT 01は、魚肉フィレ収量の70%の改善、成長率の16%の増加、および飼料転換率の14%の改善があるとして開発された。 CONABIAによると、FLT 01はゲノム編集技術を使用して開発されたもので、外来DNAや遺伝子の新しい組み合わせを含まないため、GMOとは見なされないとした。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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