国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2018年1月】

(2018.02.08 08:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2018年1月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

世界

2017年12月に世界食糧価格が低下

 国連食糧農業機関(FAO)が発行した最新の食料価格指数によると、世界食糧価格は2017年12月に下落した。これは、植物油および乳製品の急激な低下によって牽引されたものである。

 報告書によると、マレーシアとインドネシアのパーム油のだぶつきにより価格が急落したため、FAO植物油価格指数が11月から5.6%低下した。 これは大豆油価格の低下にも影響を与えた。 一方、FAOの穀物価格指数は、国際的な小麦の価格がやや軟化したが、トウモロコシと米の価格がしっかりと上昇したので3カ月連続でしっかりと安定していた。 この指数は、2011年のピーク時の37%を下回るが、2016年と比較して2017年は3.2%高かった。

アフリカ

国際熱帯農業研究所が遺伝子組換えキャッサバの隔離圃場試験開始

 国際熱帯農業研究所(IITA)は、ETHチューリッヒ植物バイオテクノロジーラボと協力して、遺伝子組換えキャッサバの隔離圃場試験を開始した。この研究は、作物が収穫される前に芽を剪定した後のキャッサバの貯蔵根のでんぷん分解を減少させることを目的としている。貯蔵根とキャッサバの作物としてのでんぷん代謝に関する基礎知識を得るための事実収集実験でもある。

 キャッサバは、アフリカサブサハラや他の熱帯・亜熱帯地域での重要な食糧作物であるが、キャッサバ農家は収穫後にでんぷんに富んだ貯蔵根が自然に発生する急速悪化により、収穫後損失が高くなっている。このプロジェクトでは、ETHチューリッヒでRNA干渉(RNAi)を用いて育種したキャッサバ植物品種60444を用いて、芽を剪定した後のキャッサバの貯蔵根のでんぷん分解を減らすことを目的としている。

 隔離圃場試験(CFT)の許可は、2017年9月22日から2018年12月31日までのもので、国立バイオ安全局規定 2015に準拠して国立バイオ安全管理局から発行された。IITAは国内および国際的なバイオ安全性基準に厳格に準拠し、ナイジェリアのイバダンにあるIITAキャンパス内で試験が実施される。隔離圃場からのキャッサバは、市場向けでも商業開発用でもないため、消費されない。また、国の規制に従って、すべての作物体は分析後に隔離圃場内で破棄処分される。

ナイジェリアの農業者が遺伝子組換えササゲを栽培へ

 ナイジェリアは、ほぼ15年間の研究の結果、遺伝子組換え(GM)作物であるBtササゲを栽培する最初の国になる準備を整えた。

 「ササゲ栽培者は非常に熱心なBtササゲに対して支持的であり、彼らはGM作物を望んでいる。農業者は、その状況をよく見ており、それを栽培する準備ができている」とアフリカ農業技術財団(AATF)のBtササゲプロジェクトのマネージャーであるIssoufou Kollo Abdourhamane氏が述べている。

 Btササゲの圃場試験は2009年に始まり、2018年に承認される予定である。2015年に、ナイジェリアは農業バイテクに関する法律を可決した。 ガーナとブルキナファソも圃場試験を行っている。

 オーストラリアの連邦科学産業研究機関(CSIRO)でBtササゲの開発を支援した科学者T.J. Higgins氏によると農業者の平均収量をヘクタールあたり約700kg(1540lbs)から1t(2205lbs)に増加させると予想している。

ケニアの秋アワヨトウによる食害の解決策としてBtトウモロコシ推奨

 ケニアは、トウモロコシへの秋アワヨトウ(fall armyworm)による猛烈な食害によって飢餓の危機に瀕している。昨年3月に初めての報告では、この害虫は、47カ国のうち27カ国で25万ha以上のトウモロコシ農場を荒廃させた。

 地元ジャーナリストのチームによるマチャコス郡への実情調査によると、この害虫による非常に荒廃した農業の現実があり、ほとんどのトウモロコシに食害を及ぼしていることが判明した。ほとんどの農業者は全く収穫がなかった。小規模の農業者のElizabeth Nduku氏は、「私の作物は、秋アワヨトウの被害で全滅し、農場には何も残っていない」と語った。

 ケニアの農業畜産研究機関(KALRO)の科学者たちは、遺伝子組換え作物であるBtトウモロコシの性能を評価し、害虫の侵入と干ばつに対する持続可能な解決策を提供するために、国内で圃場試験を行っている。

 「私たちの研究の過程で、Btトウモロコシはニカメイガだけでなく、秋アワヨトウをも制御できることがKitale(Trans Nzoia郡)とKiboko(Makueni郡)での隔離圃場実験で実証されたことを示した。」とKALROのトウモロコシ育種家のMALNGA Mwimali博士が語った。

 ケニアの農業者は、遺伝子組換えBtトウモロコシの商業的リリースを早急に行ってこの悲惨な状況を終わらせるように政府に要請している。 「害虫や干ばつに対抗できるのであれば、遺伝子組換えトウモロコシの導入をためらうことはない」とNduku氏は自信をもって認めている。

南北アメリカ

TRUMP米大統領が米国農場局連盟大会でバイオテクノロジーに言及

 2018年1月5日から10日にテネシー州ナッシュビルで開催された米国農場局連盟(AFBF)の2018年年次大会でDonald J. Trump米大統領が演説した。1月8日、大統領は、「我々は、最先端のバイオテクノロジーを阻む規制を合理化し、農業者の革新的バイテク技術、革新的改革、繁栄、成長を自由に行えるようにする」と述べた。 彼の演説は、年次大会に集まった7400人の農業者、牧畜業者に向けて行われた。

 Trump大統領は、地方のブロードバンドアクセスの拡大に資金を提供し、合理化する2つの大統領令に署名した。 彼の演説は、過度の規制のコストを訴え、規制、労働、貿易などの農業者にとって特に重要な問題に触れた。

米FDAが中国の遺伝子組換えイネを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、Huazhong 農業大学によって開発された遺伝的に改変されたイネ品種Huahui-1を承認した。

 「Huazhong農業大学が行った安全性および栄養価の評価に基づいて、Huahhong No.1由来のヒトの食糧および動物用飼料は、その成分組成、安全性、およびその他の関連要素は、市場にある米穀由来のものと全く異なることはなく、遺伝子組換えHuahhong No.1は、FDAによる市場に出す前の評価や承認を必要とするものではない」と、 FDAの食品添加物安全局局長のDennis Keefe氏は語った。

 Huahui-1 は、害虫抵抗性蛋白質Cry1Ab/Cry1A を発現するように遺伝子組換えしたもので鱗翅目害虫抵抗性がある。

アジア・太平洋

オーストラリア・ニュージーランド食品標準局がプロビタミンAイネ系統由来の食品の承認報告書を公表

プロビタミンAイネ系統GR2E由来の食品は、オーストラリアおよびニュージーランドで販売することができる。オーストラリア・ニュージーランド食品標準局(FSANZ)は、国際イネ研究所が提出した申請書A1138の承認書を公表した。イネ系統GR2EはプロビタミンAカロテノイド、特にβカロチンの生産が穀粒中にみられるもので、これ由来の食品の承認を求める申請書を出していた。

 FSANZは、この承認は、穀物の輸入品にGR2Eが意図しない混入があって貿易混乱を引き起こさないようにすることを目的とするものと強調した。

 遺伝子組換え系統GR2Eの安全性評価と栄養上のリスク評価が報告書の補足資料として含まれている。潜在的な公衆衛生上および安全上の懸念事項は、特定されていない。本出願で提供されるデータおよび他の利用可能な情報に基づいて、GR2E系統由来の食物は、従来のイネ品種由来の食物としてヒト消費にとって安全であると考えられる。

ヨーロッパ

食品および飼料用の6つのGM作物を欧州委員会が承認

 欧州委員会は、2017年12月22日に、食物/飼料用に6種の遺伝子組換え作物(GMO)を認可した。

 認可されたものは以下の通り。
•ダイズ305423 x 40-3-2
•ダイズDAS-44406-6
•ダイズFG72 x A5547-127
•ダイズDAS-68416-4
•ナタネMON88302×Ms8×Rf3
•トウモロコシ1507(更新)

 承認されたGMOは、全て欧州食品安全機関(EFSA)による科学的評価を含む包括的な承認手続きを経ている。

 許可決定は栽培を対象としていない。 これらのGMOは、常設委員会と控訴委員会の両方で加盟国から「意見なし(no option)」の投票を受けていたため、委員会は暫定決定を採用しなければならなかった。 認可は10年間有効であり、これらのGMOから製造された製品は、EUの厳格な表示およびトレーサビリティの規則の対象となります。

EU裁判所がゲノム編集作物は遺伝子組換え食品法から除外されるべきと主張

 裁判C-528/16の意見陳述で、欧州司法裁判所控訴裁判所でMichal Bobek裁判官は、突然変異誘発によって得られた生物は、原則として、欧州議会の遺伝子組換え生物指令(GMO指令)の義務から除外すべきと述べた。GMO指令は、遺伝子組換え生物(GMOs)の環境への意図的な放出とEU内での市場投入を規定している。

 意見陳述では、指令は、突然変異誘発のような特定の遺伝子改変技術によって得られた生物には適用されないと述べた(「突然変異誘発免除」)。遺伝子導入とは異なり、突然変異誘発は、原則として、外来DNAの生きた生物への挿入を伴わない。

 裁判官はまず、突然変異誘発によって得られた生物がGMO指令に定められた実質的な基準を満たしていればGMOであると考えた。彼は、この指令は、外来DNAの生物への挿入によってGMOとみなすということを求めてはおらず、遺伝物質が自然発生しない方法で改変されているだけであることを認めている。また、加盟国が突然変異誘発によって得られた生物に関して立法することができるとの意見も述べられた。

 この陳述への最初の反応は、欧州植物科学機構(EPSO)からのものであり、裁判官の意見を歓迎し、2001年以降の最近の突然変異誘発技術によって改変された生物に関するEU指令を明確にする重要なステップであるとした。

研究

キャッサバのβカロチンを増やしてプロビタミンA含量増と商品寿命延長を達成

 サハラ以南のアフリカにおける新たな研究の結果によると、キャッサバ貯蔵根のβカロチン含量を増やすことでプロビタミンAの含量を増加できる。これは、ビタミンAの欠乏によるこの地域の課題に対処する上で重要なマイルストーンになると期待できる。結果はPlant Biotechnology Journalに掲載されている。

 食糧農業機関(FAO)は、サハラ以南のアフリカの就学前の子供の推定47%に影響を及ぼしており、ビタミンAの欠乏が主要な健康問題であると報告している。この欠乏症は、失明の発生率が増加し、免疫力が抑制され死亡率が上昇することの原因となっている。

 研究では、ガラス温室条件下で栽培された3つの最高性能の遺伝子組換え系統の貯蔵根は乾燥重量にして1g当たり40μgから60μgのカロテノイドを蓄積し、非遺伝子組換えの対照から収穫された根と比較して20倍から30倍の増加を示した。この研究では、これらのカロテノイドの85%から90%が、最も栄養的に有効なカロテノイドである全トランスβカロチンとして蓄積されることが発見された。

 興味深いことに、研究者らは、カロテノイドの蓄積は、収穫後の貯蔵根の生理学的劣化を5倍低下させることも発見した。これは、増加したカロテノイドが、収穫された貯蔵根の貯蔵寿命を延ばすことを示唆している。キャッサバ貯蔵根の短い貯蔵寿命は、サハラ以南のアフリカの農業者の収穫キャッサバ貯蔵根を農村生産地から都市市場に輸送することを大いに阻害しており、この地域のほとんどの農業者にとって現金収穫源としての可能性を阻害している。

 この研究はまた、キャッサバの成分増加が可溶性糖およびトリアシルグリセロールの濃度を増加させるが、根のデンプン含量を減少させることも示した。

 これは、University of Nebraska–Lincolnと国立根茎作物研究所とが相互協力を結び、ナイジェリアで実施した遺伝子組換え作物の政府承認隔離圃場試験の初めて実施するプロジェクトの一環である。

新育種技術

CRISPR/Cas9技術を使用するイネの干ばつおよび塩耐性の改善

 Δ1-ピロリン-5-カルボキシレートシンセターゼ(P5CS)は、プロリン(Pro)合成における律速酵素であり、植物における干ばつおよび塩ストレス耐性に関与する。ストレス処理された市販のイネ品種BC15からOsP5CS遺伝子を単離した。

 イネOsP5CSの長さは2173ヌクレオチドであり、2つの調節アミノ酸残基アスパラギン(Asp)およびフェニルアラニン(Phe)を有する716アミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含有していた。 P5CS蛋白質のアミノ酸配列整列は、イネ、トウモロコシ、タバコ、豆およびトマトの間で相同性を有することが示された。 BC15 OsP5CSはまた、ジーンバンク登録日本晴品種(AC111016.2)のOsP5CSと99.6%の相同性を示した。

 DNA単離された配列に基づいて、4つのgRNA(ガイドRNA)構築物を、BC15 OsP5CSのCRISPR-Cas9編集のために設計し、細胞におけるPro蓄積を増加させた。本研究では、ゲノム編集技術を用いて干ばつと塩耐性をもつ高収量品種の開発の基盤を確立した。

最適化されたCRISPR/Cas9でキウイフルーツに標的特異性突然変異を誘発

 キウイフルーツ(Actinidia deliciosa)は重要な果物であるが、遺伝的改良のための技術は限られている。 CRISPR/Casシステムは、多くの作物でうまく使用されているが、キウィフルーツには使用されていなかった。効率的なゲノム編集を達成するためには、特定の植物種におけるその使用条件を最適化することが必要である。

 中国科学アカデミーのZupeng Wangチームは、キウイフルーツにCRISPR/Casを適用することを目指していた。チームはキウイフルーツの phytoene desaturase遺伝子(AcPDS)を標的とする合成ガイドRNA(sgRNA)/Cas9ベクターを作製した。その結果、アルビノ型のキウイフルーツをAcPDS遺伝子をノックアウトすることでさ首尾よく得られた。

 使用したベクターを、異なるsgRNAを含む他のベクターと比較した。全てのベクターがキウイフルーツのアルビノ表現型を誘導することができるが、ポリシストロニックtRNA-sgRNAカセット(PTG/Cas9)システムはキウイフルーツゲノム編集において有意により効率的であることを見出した。

 この研究は、CRISPR/Cas9システムがキウイフルーツゲノム編集に適用できることを証明した。この系におけるsgRNAは、PTG/Cas9によって例示されるように最適化することもでき、他の植物におけるCRISPR/Cas9系の最適化の手がかりを提供することができた。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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