国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2017年12月】

(2018.01.11 10:00)

(編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2017年12月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください

アフリカ


アフリカの農業研究者に対する科学コミュニケーション研修を開催

 科学に馴染みのない人々のために広報活動を簡潔に行うことが強く求められている。これは、東および中央アフリカバイオサイエンス支部(Biosciences Eastern and Central Africa(BecA-ILRI)Hubが主催し、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)のAfriCenterと国際畜産研究所(ILRI)のナイロビキャンパスの協力の下で行われた2週間の科学コミュニケーショントレーニングワークショップの要点である。ワークショップは2部で構成され、初回は25人、2回目は28人が参加した。この研修は、アフリカおよびアフリカにおける農業研究と革新を促進するためにアフリカ農業研究システム(NARS)の能力を強化することを目指している。

 ISAAAのAfriCenterディレクターであるMargaret Karembu博士は、効果的なコミュニケーションのやり方と、よく練ったメッセージ出すことの重要性、関係者との信頼関係を構築すること、可能な限り簡潔なメッセージの重要性を主題としてグループを指導した。 Karembu博士は、科学に馴染みのない聴衆は、研究が自分たちにどのようなインパクトがあるのかに興味を持っているのに対して、研究者が自分の研究成果を伝えるためには戦略的に優先順位付けを行う必要があると強調した。また「情報を発信することと聴衆に分からせることの違いを認識し、情報の共有と広報活動とを区別すべき」と述べた。

 上級科学者でアフリカバイオサイエンスチャレンジ基金の責任者、Wellington Ekaya博士は、研究成果が社会に影響を与えるようにするために効果的なコミュニケーションが重要であると述べた。「コミュニケーションがなければ科学研究の結果である技術革新は、農業システムを変革すべきときにあるにもかかわらず研究室内に留まったものになってしまう」とも同氏は述べた。

 科学者は、科学的な情報を一般に公開する手段として、マスメディアやソーシャルメディアとの連携が重要であることを認識する必要がある。参加者は、研修中に学んだ原則とテクニックを使用して、模擬メディアのインタビューで科学に馴染みのない聴衆に向けての演習を行った。また、ジャーナリストとの関係を構築することが、メディア関与戦略として重要な鍵であることがよく理解された。

南北アメリカ


EUでの組換え作物禁止は農業の生産性を損失と研究者が指摘

 米Montana State Universityの経済学部を退職したGary Brester教授は、欧州連合(EU)における遺伝子組換え作物禁止が農業の生産性を損なわせていると指摘した。モンタナ州ビリングスで開催されたMontana農業局年次大会で、Brester教授は、GM作物を使わないEUでの収穫高と米国の収穫高との比較の議論は十分な年数のデータを考慮していないと説明した。

 「この議論を聞いたとき、私は1960年代初頭まで遡って生産性を追跡し始めた。1996年までは、米国とEUが技術を共有していた。そして、GMが禁止されてからのEUのトウモロコシとダイズの収穫量には変化がなく、一方米国のGMを利用した収穫量は増加を続けている」

 教授はまた、GM作物の禁止が世界の飢餓を増加させていると指摘。「広範なテストの結果、ヒトの健康課題に問題がなかったにもかかわらず、この技術は禁止されている」とBrester教授は述べている。同教授は、技術の進歩で農業が進歩し、この技術を継続的に利用したところでは、農業の生産性は1940年以来250%に増加したと説明した。

組換え作物には悪い副作用の証拠はないと毒性学会

 世界中の8200人以上の科学者による専門的な学会である米毒性学会(SOT)は、遺伝子組換え(GE)作物が関与する食糧と飼料の安全性に関して新しい声明を採択・承認し、公表した。声明には、安全性、実質的な同等性、および表示に関する5つの重要な項目がある。

 学会は、いまだに遺伝子組換え(GE)作物がヒトまたは動物の健康に悪影響を及ぼすとの議論がある中で、これらの安全性は、規制当局および全ての必要な規制事項が商業化される前に評価は終わっているとした。

 この声明はまた、多くの遺伝子組換え(GE)作物がこの20年間に莫大な商業的成功を収め、その間に健康への悪影響の可能性あるいは、立証された悪影響はないと述べた。

Temple Universityの発表はカノーラ油摂取とアルツハイマー病を関連付ける

 Temple Universityの科学者は最近、アルツハイマー病様の神経病理を発症させるように遺伝子操作されたマウスにカノーラ油を与えた結果を報告した。彼らの発見はアルツハイマー病とカノーラ油摂取を結びつける偽のニュース記事に発展した。University of Florida園芸学部部長のKevin Folta教授は、今回の研究を例に、いかにしてメディアが科学を誤解して事実をねじ曲げ、偽ニュースにつなげてしまうかを解説した。

 Folta博士によると、Temple Universityの科学者の研究結果は、カノーラ油が記憶障害、痴呆、肥満、およびアルツハイマー病を引き起こすことを示してはおらず、特にヒトについては何も言ってないという。にもかかわらずTemple Universityは研究結果とは全く違って、「カノーラ油がアルツハイマー病の記憶および学習能力の低下と関連するとTemple Universityが発表」という表題をプレスリリースにつけてしまった。このプレスリリースはすぐに記者に取り上げられ、カノーラ油摂取に対する一般市民の恐怖を煽る事態を招いた。

 「これは、完全なる不信感の暴走と言っていい。有能な専門家による一連の実験、大学の広報部からの誇張されたプレスリリース、および検閲されていないメディアの暴走が、控えめな結論をパブリックヘルスの危機に至らしめた。真実の種からの偽りの主張を生み出し、偽の情報がどのように伝播し、食糧の選択に結びつくかを示した典型例である」とFolta博士は結論付けた。

アジア・太平洋


ゴールデンライスはバングラデシュの役に立つ

 Wageningen Universityとその研究所の研究者は、ゴールデンライスはバングラデシュの微量栄養素の不足を緩和するのに役立つと報告した。

 この研究は、ゴールデンライスが米胚乳中のカロテノイドのレベルを著しく増加させ、有害作用がないことを示した。トランスジェニック品種GR2 R BRRI dhan29は収量(収量を10%増加させる可能性がある)がより高く、バングラデシュの人々にとって利用可能な食物の量が増える。このような有益性をみて、研究者はバングラデシュでのゴールデンライスの承認を勧告した。

豪連邦科学産業研究機構の科学者は食物繊維が10倍多い新コムギを開発

 国際的な研究者チームが通常のコムギよりも食物繊維の量が10倍多い新品種のコムギを開発した。これは、腸の状態を改善し、大腸癌と2型糖尿病を防ぐの助けることになる。研究チームは、オーストラリア連邦科学産業研究機関(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation :CSIRO)、LimagrainCéréalesIngrédients、Grains Research とDevelopment Corporationの専門家で構成されている。

 研究者らは、コムギでアミロース含量を増加させる2つの酵素を同定した。 「そこから、遺伝子組換え(GM)技術ではなく従来の育種手法を使用し、従来約20%から30%だったコムギ穀粒のアミロース含量を、これまで前例のない85%にまで増加させた」とCSIROのDr. Ahmed Reginaは語る。「難消化性デンプンのレベルが、通常のコムギでは1%未満であるのに対し、穀物中の総デンプンの20%以上に増加している」。これまでに、アイダホ州、オレゴン州、ワシントン州の少数の農家が高アミロース小麦を初めて収穫している。

ヨーロッパ


欧州科学アカデミーが食品と栄養の安全性に関する緊急行動を呼び掛け

 欧州の科学者チームは、食品、栄養、農業、および健康の未来について2年間にわたって広範な分析を行った。この調査は、130の科学アカデミーで構成された世界的なアカデミー間共同プロジェクト(InterAcademy Partnershipプロジェクト)の一部である。研究の結果は、欧州科学アカデミーの科学諮問委員会(EASAC)の報告書として公表された。

 報告書は、農業における動植物について以下の勧告を提示した:

・家畜については、食品生産と動物の健康と福祉のためのゲノミクス研究をどのように活用するかを決定する。これには、ゲノム編集の急速な進歩と、遺伝子バンクで保存された遺伝物質の特性解明の更なる重要性が含まれる。

・海洋では、持続可能な収穫と低下している熱帯域での海洋資源の養殖に関する知識ベースを改善し、農地、淡水および肥料へのバイオマス供給の可能性を探る。

・作物に関しては、植物製品の品質に関する遺伝学およびメタボロミクスの理解を進める。これには、ゲノム編集を使用した作物の標的を定めた改変を基にする新しいやり方を活用する。

・植物や動物科学においては、野生の遺伝子プールを保護し、遺伝資源の配列決定を続けて遺伝資源の可能性を明らかにすることが重要である。

文献備忘録


遺伝子組換え/バイテク作物栽培国の現状と動向

 国債アグリバイオ事業団(ISAAA)は「遺伝子組換え/バイテク作物栽培国の現状と動向」シリーズの最新版を公表した。 「遺伝子組換え/バイテク作物栽培国の現状と動向」は、特定の国の遺伝子組換え/バイテク作物の商業利用に焦点を当てた簡潔な要約版である。

 バイオテクノロジー作物の商業化(面積と導入状況)、承認と栽培状況、利益と将来の見通しに関するデータが国別に簡潔かつ分かりやすい方法で提示されている。 内容は、ISAAA Brief 52、バイオテク/ GM作物の商業栽培の世界的状況:2016に基づいている。

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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