国際アグリバイオ事業団

アグリバイオ最新情報【2016年12月】

(2017.01.12 00:00)

 (編集部注)この記事は、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によるアグリバイオ最新情報【2016年10月】から話題を抜粋し、日本語訳を掲載したものです。 抜粋していない全文はこちらをご覧ください。

 

世界

農業科学技術会議が貿易と遺伝子組換えの課題を調査した新報告を発表

 米国科学アカデミー/米国研究評議会により設立された非営利団体である農業科学技術会議(CAST)は、文献調査とその報告者を公開した。「遺伝子組換え作物に対する承認の同調性のないことによる持続的農業、貿易および技術革新に及ぼす影響」と題する出版物は、遺伝子組換え作物に対する承認の同調性のないことによる問題を取り上げている。著者は主要な国際商品輸出業者および輸入業者である国における経済効果に焦点を当てた。ここでは、新しい遺伝子組換え作物の世界的承認の同調性のないこととその結果としての低レベル遺伝子組換えの存在(LLP)のリスクによって数十億ドルもの物資が危険にさらされているとしている。

 この論文は、貿易、川下産業、バイオテクノロジー革新技術の導入、バイオテクノロジー投資/研究開発、作物育種、農業生産者収入への影響に関する研究を行った。

 CASTレポートは、承認の同調性のないこととLLPの悪影響を緩和する方策を提供している。著者によれば、「承認の同調性のないこととLLPによる世界的レベルでのコスト、革新と作物改良に対する影響、公的部門と民間部門の両方のバイオテクノロジー開発者の意思決定方策への影響を評価する研究が必要であり、政策立案に情報を提供し、政策手段の設計をよりタイムリーに改善する」ことが大切としている。

アフリカ

エチオピアがBtワタを向こう2年間で商業化へ

 エチオピア農業研究院の農業バイオテクノロジー部門長であるEndale Gebre博士によると、エチオピアは2年間でBtワタを商業化する準備が整っているという。彼は、自国のBtワタの隔離圃場試験が現在最終段階にあると説明した。この試験は4年間行われ、インドとスーダンからの4種類のBtワタを試験した。彼は、隔離圃場試験の結果は、Btワタが収量、アワノメイガ感染、除草剤使用、および他に農場に及ぼす影響を明らかにしたと付け加えた。

 Gebre氏はまた、Btワタは約20年間批判されてきたと説明した。しかし、Btワタはインドで広く使用されており、特に小規模農家の95%が使用している。これは、Btワタがエチオピアの農民だけでなく、経済全体にもプラスの効果をもたらすことを意味している。Gebre氏はアフリカの代表団の一員で、2016年11月にインドのBtワタ農場を訪問した。

ナイジェリアで2019年にも遺伝子組換えササゲの種子が入手可能に

 ナイジェリアの国立バイオテクノロジー開発機構(NABDA)の局長であるLucy Ogbadu教授は、2019年またはそれ以前に、遺伝子組換え(GE)ササゲが国内で商業的に入手可能になるとNABDA 11月の開放フォーラム農業バイオテクノロジー(OFAB)で発表した。 Ogbadu教授は、GEササゲが現在圃場試験中であり、これまで肯定的な結果を示していると述べた。

 「生産にあたって規則に従うことになる。倫理委員会が規則に違反のないように働いている。ナイジェリアは、GM豆類やその他の作物が、今後この国で安全に消費できることを保証されると確信している。2〜3年後、ササゲは国内で商業的に量産されることになる。」とOgbadu教授は語った。彼女はGM食品が健康に良くないことは全くないと強調し、100人のノーベル賞受賞者の署名したGE作物の安全性を保証する先導文書も強調した。

南北アメリカ

ブラジルは2017年に遺伝子組換えサトウキビを承認の予定

 ブラジルのサトウキビ技術研究所の理事長であるGustavo Leite氏によると遺伝子組換え(GE)サトウキビはすぐにブラジルの市場に出てくるとのことである。 彼は、GEサトウキビの最初の品種は2017年初頭に商業的に入手可能であると述べた。GE作物の承認は、作物の研究と商業的使用の規制を担当するNational Technical Biosafety Commission(CNTBio)から受けた。

アルゼンチンがSyngenta社の組換えトウモロコシの商業栽培を承認

 アルゼンチンの規制当局は、Syngenta社の遺伝子組換え(GM)トウモロコシの商業的栽培を承認した。GMトウモロコシSYN-BTO11-1 x SYN-IR162-4 x MON-89034-3 x MON-00021-9の商業栽培承認は、付加価値および新技術庁(Agregado de Valor y NuevasTecnologías)長官NestorRouletが署名した第96号公式連合官報で発表された。

 GMトウモロコシは、サトウキビアワノメイガ、ヨトウムシ、およびコーンイヤーワームの効率的な制御を行う。農業省によると、「この新しい品種では、大きな殺虫作用が今やこの技術の持続可能性と耐久性を向上させることになっている」としている。

米国FDAが遺伝子組換えピンク果肉パイナップルを承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、遺伝子組換え(GE)ピンク果肉パイナップルの評価を完了し、従来のパイナップル品種と同じく安全で栄養価が高いと結論付けた。ピンク果肉バイナップルはDel Monte Fresh Produceによって開発され、ピンク色のlycopeneを黄色の色素のベータカロテンに変換する酵素が低いものとして開発された。新しいパイナップルの品種はデルモンテの「黄金の極甘いパイナップル」と区別して「極甘ピンク果肉のパイナップル」として峻別している。

アジア・太平洋

ベトナム農業農村開発省、遺伝子組換えトウモロコシの栽培拡大を期待

 ベトナム農業農村開発省(AGRI)は2015年のTrung Son Commune(Do Luong地区)における0.5エーカー(1800m2)の遺伝子組換え(GM)トウモロコシの実地試験で高い生産性と経済効率を得た。 Trung Son communeには560 haの農地があり、80 haはトウモロコシに特化している。2016年にTrung Son ではGMトウモロコシの面積を55農家で6 haに拡大した。

 評価の結果、GMトウモロコシは高収量であることが示された。今年はTrung Son communeのGMトウモロコシ6 haで48t収穫された。

 GMトウモロコシの利点は、その害虫抵抗性である。しかし、GMトウモロコシの種子の価格が高いので、農家が購入して栽培するのをためらっている。平均して、非GMトウモロコシ種子価格は9万-13万VND(ベトナムドン、1万VND=約52円)/kgであり、GMトウモロコシは21万VND/kgである。農家はGM種子には非GM種子よりも高額の支払いが必要かもしれないが、農薬や除草剤などの必要量を少なくできるのでむしろ経済的とも考えられる。

 農業農村開発省のNghe An氏は、GMトウモロコシの栽培面積を拡大して、トウモロコシの生産性と品質を向上させる計画である。

研究

Bt技術を用いて耐虫抵抗性トマトを開発

 トマトアワノメイガ(Helicoverpa armigera)は、特にインドでのトマト生産において最も有害な害虫の1つである。トマトは、アワノメイガに対して耐性を与える遺伝子を有さず、害虫を管理する従来のやり方では効果がなかった。そこで、インドの科学者チームは、Bt技術を使って耐性トマトを開発した。

 アグロバクテリウム媒介形質転換により、Arka VikasトマトにCry2A蛋白質を発現させ、トマトアワノメイガに構成的に耐性を持たせた。導入遺伝子の組み込みは、PCRおよびELISAによって確認した。遺伝子組換え植物は、害虫に対して強い抵抗性を示した。アワノメイガの平均死亡率は95%で、24時間のバイオアッセイで観察された。

 この発見により、Bt技術がトマトに害虫抵抗性を付与する効果的な手段であることが分かった。

新育種技術(NBT)

サトウキビにおけるゲノム編集の課題

 ゲノム編集は、植物育種者に作物生産を向上する独特の機会を開いている。CRISPR/Cas9系のようなRNA誘導遺伝子工学的ヌクレアーゼの出現が、単純で効果的な育種の大きな可能性を秘めていることが分かった。 CRISPR/Cas9システムは既に幾つかの作物で成功している。しかしながら、この技術の使用は、サトウキビ(Saccharum sp.)では、まだほんの初期にある。

 ブラジルのFederal University of Sao CarlosのChakravarthi Mohan氏の研究では、サトウキビの改良にCRISPR/Cas9システムの使用を検討している。今日までのサトウキビのゲノム編集に関する唯一の報告は、リグニン含量をバイオ燃料生産に適したものにすることに関するものである。

 ゲノム編集の要件の1つは、既知の機能を有する特定のgRNAおよび標的遺伝子を設計するためのゲノムリソースが利用可能でなければならない。しかし、サトウキビゲノムはまだ解読されておらず、ゲノム資源はサトウキビではまだ限られている。さらに、サトウキビがコードする1万を超える遺伝子の機能はいまだ発見されていない。

 この研究では、大きなゲノムサイズ、倍数性、低形質転換効率、トランスジーンサイレンシング、およびサトウキビにおけるゲノム編集を妨げる可能性のあるスクリーニング技術の欠如などの課題も議論されている。

ゲノム編集作物由来の食品に対する一般市民の受容性

 CRISPR/Cas9系のようなゲノム編集技術は、導入遺伝子を含まない遺伝子改変を達成することができ、広範囲の植物に利用されることが期待されている。しかし、遺伝子組換え作物(GMO)に対する一般市民の受容性を見ると、これらの植物の受け入れが躊躇されることが示唆される。

 北海道大学の石井哲也氏と荒木素子氏は、ゲノム編集によって開発された導入遺伝子を含まない作物由来の食品に対する消費者受け入れのボトルネックを探り、提言を行った。その内容は以下の通りだ。

 人々はそのような作物に関してゼロリスクバイアスを追求するべきではない。また開発者は農家だけのものとは別に、消費者のニーズを満たす形質を持つ品種を生産することを目指すべきである。

 開発者は、結果として得られる植物の標的以外の突然変異も調査し、最初に多重ゲノム編集を控える必要がある。規制に関しては、政府はその地位を考慮し、適切な規制を確立すべきである。政府は、一般市民と開発者の間のコミュニケーションを促進すべきである。人々がゲノム編集植物の利点を知り、規制を信頼するならば、導入遺伝子を含まない作物は徐々に社会に受け入れられる。

文献備忘録

ポケットK NO. 53:抗アレルギー遺伝子組換え作物

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、抗アレルギー遺伝子組換え作物に関する新しいPocket Kを発刊した。このPocket Kには、GM作物がどのようにアレルゲンについて試験されたか、食品工学におけるアレルゲンの除去にどのように遺伝子組換え技術が応用されているかが示されている。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)のウェブサイトから無料でコピーをダウンロードしてください。

 ポケットKは知識のポケット、作物バイオテクノロジー製品および関連する問題に関する情報をパッケージ化したものである。 これは、農業バイオテクノロジーに関するグローバルナレッジセンターによって開発され、重要な農業生物情報を分かりやすい形式で提供し、容易に理解できるように書かれ、配布のためPDFとしてダウンロードできる。

ISAAAビデオでGM作物の導入による有益性を提示

 国際アグリバイオ事業団(ISAAA)は、Voices and Viewsシリーズで、GM作物の導入による有益性というタイトルの新しいビデオを公開した。 このビデオは、非導入国が遺伝子組換え作物の商業化を行った場合の遺伝子組換え作物の効果について、各国のバイオテクノロジー専門家およびその関係者の視点を明示したものである。

https://www.youtube.com/watch?v=DfFbsemHLM8

国際アグリバイオ事業団
国際アグリバイオ事業団(ISAAA)が配信するニューズレター「アグリバイオ最新情報」の中から幾つかの話題を抜粋し、日本語に訳したものを毎月第2木曜日に日経バイオテクONLINEに掲載している。ISAAAはニューヨーク州に本部を置き、米国、ケニア、フィリピンに活動拠点を有する非政府系の国際的ネットワーク組織で、政府機関や農業関連の団体、大学、農薬企業などの寄付によって運営されている。

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