米Gilead Science社が開発した抗ウイルス薬「レムデシビル」の最初の被験者はクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客だった(画像:123RF)
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 私が住んでいる米国カリフォルニア州は、完全な自粛モードだ。当初、売り切れているのはマスクだけだったが、自粛モードが広がるにつれて、一般用医薬品、食料品なども次々売り切れるようになり、大手薬局チェーンやスーパーなどの大型店でも空っぽの陳列棚が目立つようになっている。仕事では、学会も会議も全てキャンセル。あらゆる日常生活が制限され、外で食べようと思ってもレストランでは食べられず、テイクアウトするかデリバリーしてもらうかのみである。

 ヘルスケア領域では、臨床試験にも影響が出ている。感染者の隔離、施設の閉鎖、渡航制限、サプライチェーンの中断、施設職員や被験者が感染するかもしれないといったあらゆるリスクを考慮して、臨床試験の実施が困難になっている。

 こういった状況を受け、米食品医薬品局(FDA)は、プロトコルの変更が必要になったり、プロトコルの逸脱が避けられない可能性について、認識をしていると公表。治験薬や臨床試験の実施施設にアクセスできなくなった被験者に対し、電話での接触、バーチャルでの訪問など、代替方法による安全モニタリングを許容する考えなどを示した。その他、それぞれの臨床試験の状況によって、さまざまな点が考慮される見通しだ。

 一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬やワクチンの臨床試験は積極的に進められている。2020年2月25日、米国立衛生研究所(NIH)は、米国内で初めてのCOVID-19に対する臨床試験として、米Gilead Science社の抗ウイルス薬であるレムデシビルを投与するランダム化比較試験を開始した。

 同試験の最初の被験者は、COVID-19の集団感染が確認されたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの乗客で、隔離後に米国に帰国した米国人であった。2月26日には、Gilead社が企業主導で、レミデシビルを用いた2本の第3相臨床試験を開始。3月16日には、米Regeneron Pharmaceuticals社が、COVID-19の患者を対象に、インターロイキン6(IL-6)受容体に対する完全ヒト化モノクローナル抗体のサリルマブを用いたランダム化比較試験を、同日、NIHはシアトルで45例の健常な成人ボランティアを対象に米Moderna社が創製したmRNAベースのワクチンの第1相臨床試験を開始した。

 治験薬やワクチンの必要性を十分理解した上で、迅速な対応を取っているFDAだが、あくまで「十分かつよくコントロールされた臨床試験において、安全性と患者へのベネフィットが評価された場合に、治療薬やワクチンを使用することが可能かどうか判断がなされる」としている。