母の死で知った「二・五人称の視点」

 2022年3月1日、春の訪れとともに兄から訃報が届いた。台湾にいる私は帰国後の隔離期間を計算し、「母」に会えるのは火葬後になると覚悟した上で、PCR検査や飛行機の予約を急いだ。翌日福岡空港に到着し、検疫スタッフに帰国理由を説明した際、思いがけない言葉に救われた。人道的配慮を受けられる可能性があるというのだ。深い雲間から差し込んだ光明のように感じた。手続きの結果、隔離中でも葬儀のための外出だけは認められることとなった。新聞やニュースでしか聞いたことがなかった「人道的配慮」という言葉のありがたみを、私は防疫ハイヤーの中でかみしめていた。既に冷たくなっていたが、生身の「母」に触れることができた時、湧き上がる悲しさとともに、会えた喜びからか、得も言われぬ、温かさもこみ上げてきた。

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