日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年12月3日金曜日の終値が、前週の週末(11月26日)の終値に比べて上昇したのは11銘柄、下落したのは37銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はメドレックスで+29.5%だった。第2位はファンペップで+13.1%、第3位はリボミックで+9.0%と続いた。一方、下落率では大きい順にデ・ウエスタン・セラピテクス研究所が-16.6%、シンバイオ製薬が-16.3%、ユーグレナが-13.1%となっている。

メドレックス(180円、前週比+29.5%)

 今週はメドレックスとファンペップの株価が大きく動いた。2021年12月2日から3日にかけて両社の株価は上昇し、3日にメドレックスは180円(前日比+38.5%)を付けストップ高となった。またファンペップも3日に329円(前日比+18.8%)と伸びた。いずれも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株に関する連想買いによる上昇と考えられる。

 きっかけは、大阪大学の森下竜一寄付講座教授のTwitterへの投稿だ。12月1日、森下教授は「オミクロン株に対応するDNAワクチンとペプチドワクチンの開発に、取り組むことにしました。既に設計を開始しました」と投稿した。これにより、森下教授が大株主で、アンジェスのCOVID-19ワクチンの開発にも参画しているファンペップの株価が反応した。ファンペップはまさにペプチドワクチンの技術を持っており、投稿から連想されたものとみられる。

 そして、そのファンペップとワクチンの共同研究を2021年8月から始めていたのがメドレックスで、同じように株価が上昇した。メドレックスはマイクロニードルを用いた経皮薬剤投与デバイスの開発を以前から行っている。生分解性樹脂などで作られた数百μmの微小な針が並んだパッチ状のデバイスで、医薬品やワクチンなどを針の先端に搭載することで、皮内(真皮)にデリバリーすることができる。

 マイクロニードルがCOVID-19関連で材料視される可能性は高まっていた。皮内投与は従来、ワクチンの投与方法として有望視されており、真皮に免疫担当細胞が多数含まれることから少量の抗原で高い免疫反応を引き起こすことができる。最近ではインドZydus Cadila社が2021年8月に、新型コロナウイルスに対するDNAワクチン「ZyCoV-D」が世界で初めてインドで緊急使用許可された。このワクチンに用いられているのが、米PharmaJet社の高速噴射注射システムを用いた皮内投与法だ。また、同じくCOVID-19のDNAワクチンを開発している米INOVIO社も、皮内投与デバイスで第3相臨床試験を実施しており、アンジェスもダイセルの皮内投与デバイスを検証している。

 メドレックスはこうした先行例を追いかける立場にあるが、12月2日に中小企業庁の補助事業にメドレックスのマイクロニードル製剤が採択されたと発表され、実用化研究が進展するという期待も加わったと思われる。補助金は最大6000万円で、メドレックスはマイクロニードル製剤の製造装置購入と動物試験の実施に費用を充てる。同社ではマイクロニードル製剤を用いた何らかの医薬品あるいはワクチンについて、2023年までには臨床試験を開始したいと考えているようだ。

 なお、2日引け後に、メドレックスが発行していた新株予約権が全て行使されたと発表された。これにより上値を抑える圧力が弱まり、時価総額も50億円未満と小さかったことから、3日のストップ高につながったと考えられる。

ファンペップ(329円、前週比+13.1%)

 ファンペップに関しては、ワクチンのアジュバントとして機能するペプチドAJP001を持っており、病原体由来の核酸と同じようにToll様受容体(TLR)に作用して自然免疫を誘導すると考えられている。AJP001と新型コロナウイルスのエピトープを結合した抗体誘導ペプチドが、COVID-19ペプチドワクチンになる。このペプチドワクチンをアンジェスのDNAワクチンと併用することが、アンジェスとの共同研究の開始当初から検討されており、今回のTwitter投稿で買われる一因になったとみられる。

 ファンペップは2020年12月25日に上場し、初値715円を付けて以降、ここまで株価が右肩下がりだった。ただ、ファンペップのペプチド医薬事業は順調に進んでおり、塩野義製薬に導出している皮膚潰瘍治療薬SR-0379は2021年6月に第3相臨床試験に入った。また、抗IL-23抗体誘導ペプチドで乾癬治療薬候補のFPP005も前臨床試験が2021年1月にスタートするなどパイプラインが拡充しつつある。今回の株価上昇で注目が集まり、企業価値の見直しが進めば、反転のきっかけになり得る。

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順位社名株価(終値)騰落率
11月26日12月3日
1メドレックス13918029.5%
2ファンペップ29132913.1%
3リボミック5816339.0%
4テラ961004.2%
5Delta-Fly Pharma124012853.6%
6プレシジョン・システム・サイエンス5155292.7%
7スリー・ディー・マトリックス3473542.0%
8リプロセル2242281.8%
9トランスジェニック4584620.9%
10セルソース686068900.4%
11タカラバイオ265126530.1%
12クリングルファーマ622618-0.6%
13カルナバイオサイエンス960953-0.7%
14ソレイジア・ファーマ106105-0.9%
15ヘリオス13281297-2.3%
16ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング613597-2.6%
17ステムリム545530-2.8%
18免疫生物研究所420408-2.9%
19ラクオリア創薬924895-3.1%
20カイオム・バイオサイエンス215205-4.7%
21ペプチドリーム28162684-4.7%
22ブライトパス・バイオ119113-5.0%
23フェニックスバイオ584554-5.1%
24オンコセラピー・サイエンス7773-5.2%
25メディネット5754-5.3%
26ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ645610-5.4%
27窪田製薬ホールディングス170160-5.9%
28オンコリスバイオファーマ640602-5.9%
29ナノキャリア294276-6.1%
30総医研ホールディングス375352-6.1%
31サンバイオ10831015-6.3%
32ステラファーマ591552-6.6%
33アンジェス424396-6.6%
34ジーエヌアイグループ15261420-6.9%
35レナサイエンス877814-7.2%
36そーせいグループ22322063-7.6%
37セルシード222205-7.7%
38モダリス781715-8.5%
39ファーマフーズ25002275-9.0%
40キッズウェル・バイオ513464-9.6%
41ペルセウスプロテオミクス452405-10.4%
42キャンバス204182-10.8%
43メディシノバ403359-10.9%
44ステムセル研究所53904785-11.2%
45DNAチップ研究所488426-12.7%
46ユーグレナ861748-13.1%
47シンバイオ製薬14771236-16.3%
48デ・ウエスタン・セラピテクス研究所283236-16.6%