日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年11月5日金曜日の終値が、前週の週末(10月29日)の終値に比べて上昇したのは19銘柄、下落したのは29銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はセルソースで、+12.6%だった。第2位はユーグレナで+8.8%、第3位はタカラバイオで+8.0%と続いた。一方、下落率では大きい順にテラが-28.6%、ステラファーマが-10.1%、キャンバスが-9.4%となっている。

タカラバイオ(3200円、前週比+8.0%)

 11月4日に3100円(前日比+3.4%)、5日に3200円(前日比+3.2%)と連騰した。3日の日本経済新聞電子版で、タカラバイオが日本国内でCOVID-19のmRNAワクチン受託製造を2022年1月から開始するとの報道があった。それを裏付ける形で、タカラバイオは4日、mRNAワクチン開発を手がけるVLP Therapeutics Japan合同会社(東京・千代田、赤畑渉代表)と、COVID-19ワクチン原薬の製造に関する契約を締結したと発表し、さらに買いが集まった形だ。

 VLP社のmRNAワクチンはレプリコンワクチンと呼ばれ、コロナウイルスなどのRNAウイルスが自己複製するのに用いるRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の機能を応用し、体内でmRNAが自己増幅するよう設計されている。このため投与量が10分の1から100分の1で済む点が特徴だ。次世代のmRNAワクチンとも呼ばれており、医薬基盤・健康・栄養研究所など国内の6機関と共同で、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて開発を進めている。国産かつ次世代のmRNAワクチン開発ということでキーワード的に分かりやすく、期待が高まったと思われる。

 タカラバイオはCOVID-19のPCR検査により好業績を続けていたが、ここへ来て国内の感染者が激減しており、10月から試薬などの販売減を懸念した売りが優勢となって株価の低下が続いていた。今回の製造受託は、同社の遺伝子・細胞プロセッシングセンターについて、その評価の高さがあらためて印象付けられる形となり、製造受託ビジネスの伸びにつながるとの連想がありそうだ。

テラ(95円、前週比-28.6%)

 11月1日に急落し、108円(前日比-18.8%)を付けた。10月29日、テラは自社の第3四半期報告書について、金融商品取引法に定める期限(11月15日)までに提出できない見込みとなったことを発表した。10月22日にテラは会計監査人から監査契約を解除されており、一時会計監査人を探すなど対応してきたが、29日、提出を断念したという。

 これにより、テラは29日から、東京証券取引所の監理銘柄に指定された。同社が四半期報告書を12月15日までに提出しなかった場合、東証は同社株式の上場廃止を決定するとしている。カウントダウンがスタートする中、一時急騰を見せるなど、大幅な値動きを利用したマネーゲームも始まっているようだ。

アンジェス(507円、前週比-6.3%)

 今週も値下がりが続いた。COVID-19ワクチンの開発が遅れており、期待感の後退が株価に反映されていると考えられる。そんな中、同社は11月5日の株式市場終了後、COVID-19ワクチンの臨床試験3本の結果を公表した。いずれも成功とは言えない結果で、かつ具体的なデータは示されていない。

 臨床試験の結果公表が遅れていたことが同社の先行き不透明感を強める要因となっており、発表自体はプラスだが、データが示されなかったのは残念なところだ。アンジェスは2021年8月から高用量製剤でワクチンの治験をやり直しており、これまでの結果が芳しくなかったのは織り込み済みで、それ以上のことが明かされなければゼロ回答に近い。DNAワクチンのモダリティとしての有用性を判断する上でも、今後の詳細な発表が期待される。

 発表された試験の1つ目は、大阪市立大学で実施された第1/2相試験(30例)の結果である。2020年6月下旬から試験が始まり、接種は7月下旬に完了している。結果は「有効性として液性免疫の誘導は一部の被験者で認めたものの期待する効果を得ることはできなかった」というのが同社の発表内容だ。これを基に、用量を増やした形で次の2つ目の第1/2相臨床試験(大阪大学)が始まることになった。

 2つ目は、大阪大学で実施された第1/2相試験(30例)の結果だ。2020年9月に開始し、10月に全症例への接種が完了した。公表された結果は「有効性としての細胞性免疫はある程度の上昇を確認したが、液性免疫の誘導は一部の被験者で認めたものの、より多い症例数で確認する必要があると判断した」というもので、これを受けて次の3つ目の第2/3相試験が開始された。

 3つ目は、8施設で実施された第2/3相試験(500例)の結果だ。2020年12月から接種を開始し、3月に接種が完了した。公表された結果は「有効性としての細胞性免疫はある程度の上昇を確認したが、液性免疫の誘導は一部の被験者で認めたものの、期待する効果を得ることができず、さらに有効性を高める必要があることを確認した」というもの。これを受けてアンジェスはこれまでの用量では不十分と判断、さらに高用量の製剤を作って2021年8月から第1/2相試験(400例)をやり直している。

 第1/2相の2本の結果は国内CROによる分析で2021年初頭に得られていた。その段階で発表は可能だったはずだが、なぜここまで公表が遅れたのか。同社によれば、中和抗体価を測るための標準抗体が当時は無く、公表してもデータの判断が難しいことが考えられ、政府側当局(厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、AMED)との協議の結果、第1/2相の結果を第2/3相の結果と合わせて発表することに決まったためだという。その第2/3相は、2021年初夏にもデータが得られるはずだったが、カナダの分析企業Nexelis社に分析を依頼したところ、そこからの結果報告が10月になってしまったため、この段階での公表となったというわけだ。

 政府の意向があったとはいえ、公表が遅れた上に、結果がネガティブだったことで、同社に対する信用が低下した感は否めない。また、今回具体的な数値を公表しなかった理由として同社は「既に高用量で試験を行っており、低用量で実施した試験の具体的な数値を現時点で公表しない方が良いと判断した」と説明する。しかし、いずれAMEDの報告書などで公表されるべきデータであり、その判断も議論を呼びそうだ。

順位社名株価(終値)騰落率
10月29日11月5日
1セルソース6440725012.6%
2ユーグレナ8078788.8%
3タカラバイオ296232008.0%
4フェニックスバイオ6466815.4%
5ファーマフーズ257426794.1%
6ペプチドリーム275328403.2%
7オンコリスバイオファーマ6156322.8%
8セルシード2272322.2%
9サンバイオ120112252.0%
10メドレックス1611641.9%
11ステムリム5345431.7%
12Delta-Fly Pharma120712271.7%
13ステムセル研究所517052301.2%
14トランスジェニック5435480.9%
15ファンペップ3343370.9%
16スリー・ディー・マトリックス2902920.7%
17総医研ホールディングス3183200.6%
18ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ7537560.4%
19ジーエヌアイグループ159616020.4%
20ナノキャリア317316-0.3%
21レナサイエンス743740-0.4%
22免疫生物研究所449447-0.4%
23ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング660653-1.1%
24ラクオリア創薬993982-1.1%
25リボミック404399-1.2%
26オンコセラピー・サイエンス8079-1.3%
27ヘリオス17211699-1.3%
28メディネット6463-1.6%
29窪田製薬ホールディングス192189-1.6%
30デ・ウエスタン・セラピテクス研究所234230-1.7%
31メディシノバ405398-1.7%
32ソレイジア・ファーマ115113-1.7%
33カルナバイオサイエンス999975-2.4%
34カイオム・バイオサイエンス244238-2.5%
35そーせいグループ18171767-2.8%
36ブライトパス・バイオ136131-3.7%
37プレシジョン・システム・サイエンス598576-3.7%
38DNAチップ研究所551530-3.8%
39キッズウェル・バイオ482463-3.9%
40ペルセウスプロテオミクス555532-4.1%
41リプロセル240229-4.6%
42モダリス10621004-5.5%
43クリングルファーマ706666-5.7%
44アンジェス541507-6.3%
45シンバイオ製薬1068999-6.5%
46キャンバス224203-9.4%
47ステラファーマ614552-10.1%
48テラ13395-28.6%