
日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年10月22日金曜日の終値が、前週の週末(10月15日)の終値に比べて上昇したのは4銘柄、下落したのは1銘柄、不変だったのは43銘柄だった。
この間、上昇率の第1位はリボミックで、+10.1%だった。第2位はレナサイエンスで+4.9%、第3位はDNAチップ研究所で+2.5%と続いた。一方、下落率では大きい順にオンコリスバイオファーマが-39.6%、クリングルァーマが-18.1%、ヘリオスが-12.9%となっている。
オンコリスバイオファーマ(700円、前週比-39.6%)
10月20日、21日と2日連続でストップ安を付け、前週比で40%近くの下落となった。原因は、2019年4月に締結した中外製薬とのライセンス契約が解消することが決定したと19日に発表されたため。主力パイプラインである腫瘍溶解ウイルス「テロメライシン」の契約だっただけに、落胆した投資家が売りを浴びせた格好だ。
両社のリリースでは、提携解消に至った理由として「両社の協業によって開発を進めることが本剤の製品価値最大化につながらない」と記載されていた。何の説明にもなっておらず、投資家の混乱を招いた側面がある。わざわざ「テロメライシンの有効性・安全性の問題によるものではない」と記載したのは、それを自覚してのことだろう。テロメライシンに重大な問題が生じたとの懸念が生じないよう最大限配慮したとみられるが、「ではなぜ解消するのか」といった疑問を際立たせた。
提携解消の主な要因は、1つはテロメライシンの製造に関するトラブル、もう1つは臨床試験に対する患者登録の遅れと考えられる。そして、そのいずれにも新型コロナウイルス感染症の拡大が大きく影響している。これまでオンコリスバイオファーマの浦田泰生社長は、ウェブサイトや決算会見でこれらのトラブルを報告してきた。世界的にウイルスベクターやワクチンの開発に向けた製造設備の逼迫が生じており、要因としては十分に納得がいく。
少なくとも2021年1月までは順調だった。この時期、中外製薬は新たにテロメライシンで頭頸部がんの試験を計画し公表している。雲行きが怪しいと感じられたのは2021年4月、中外製薬がテロメライシンの承認申請時期を2022年から2024年に変更した時だ。食道がんに対する放射線治療との併用第2相試験が滞ったためで、遅延の理由として、「新型コロナウイルス感染症の影響により患者登録が難航」「テロメライシンの治験薬供給や製法開発に予想外に時間を要した」と説明された。
さらに2021年9月29日には、中外製薬と共同で実施予定だった4本の試験のうち、2本の試験が中止されたと発表された。臨床試験の中止は中外製薬の判断によるもので、この時も「ウイルス製剤の製造開発の状況や、新型コロナウイルス感染症蔓延による症例の登録難航の影響など」が理由とされた。そこから1カ月もたたないうちに今回、契約が解消された。
この経緯を見ると、もちろん製造と患者登録の問題もあるが、それ以上に中外製薬が急激にテロメライシンへの興味を失い、契約解消を急いだように見える。想像の域を出ないが、スイスRoche社および中外製薬の、テロメライシンの有力な併用相手であるテセントリクについて、戦略上の大きな変更があったのかもしれない。
提携は解消となったが、テロメライシンの承認可能性がなくなったわけではない。資金さえあれば自社開発は可能で、同社はその方向で検討を進めている。今後は、いかに製造の問題をクリアしていくかがポイントになりそうだ。
モダリス(1095円、前週比-9.7%)
10月20日、モダリスの元社外取締役で創業科学者である濡木理(ぬれき・おさむ)東京大学教授が、保有する株式を社内ルールに違反して大量に売却していたことが発覚し、同社の株式が値下がりした。同社では、2021年3月にやはり大株主によるロックアップ違反の株式売却があったばかりで、投資家の利益を損なう行為が続くことに対して、厳しい視線が投げかけられている。
今回の売却は、社内ルールとして定めた規程に反したもので、法に違反するわけではない。そのため罰則も無い。この点、3月のロックアップ違反もやはり東証の規程に反しただけで、罰則は無かった。もっともこの時はロックアップ違反をした大株主がモダリスに金銭を支払い、“お詫び”の姿勢を見せている。
また、今回の売却は故意であるとの見方がある。なぜならモダリスはリリースで、「当社株式の売却可能スケジュールの遵守を定め、濡木氏も役員在任中である2021年3月12日開催の取締役会において確認致しました」と説明しているからだ。濡木氏とモダリスの関係にも大きな亀裂が生じたと見られる。
現在のCRISPR-GNDM技術はモダリス側で遺伝子の配列設計などをしているとみられ、その研究開発に大きな問題は生じないと考えられる。だが、今後、次世代の基盤技術開発が必要になった場合はどうなるか。長期的な影響が気になるところだ。
順位 | 社名 | 株価(終値) | 騰落率 | |
---|---|---|---|---|
10月15日 | 10月22日 | |||
1 | リボミック | 358 | 394 | 10.1% |
2 | レナサイエンス | 873 | 916 | 4.9% |
3 | DNAチップ研究所 | 559 | 573 | 2.5% |
4 | カイオム・バイオサイエンス | 236 | 238 | 0.8% |
5 | 窪田製薬ホールディングス | 196 | 196 | 0.0% |
6 | ファーマフーズ | 2596 | 2593 | -0.1% |
7 | タカラバイオ | 3000 | 2961 | -1.3% |
8 | ペルセウスプロテオミクス | 584 | 576 | -1.4% |
9 | 総医研ホールディングス | 334 | 329 | -1.5% |
10 | セルシード | 231 | 226 | -2.2% |
11 | オンコセラピー・サイエンス | 83 | 81 | -2.4% |
12 | デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | 248 | 242 | -2.4% |
13 | サンバイオ | 1240 | 1206 | -2.7% |
14 | 免疫生物研究所 | 471 | 458 | -2.8% |
15 | フェニックスバイオ | 669 | 650 | -2.8% |
16 | ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ | 778 | 755 | -3.0% |
17 | ユーグレナ | 872 | 844 | -3.2% |
18 | メディシノバ | 435 | 421 | -3.2% |
19 | ラクオリア創薬 | 1009 | 975 | -3.4% |
20 | そーせいグループ | 1944 | 1877 | -3.4% |
21 | ファンペップ | 356 | 340 | -4.5% |
22 | ステラファーマ | 570 | 544 | -4.6% |
23 | リプロセル | 263 | 251 | -4.6% |
24 | カルナバイオサイエンス | 1050 | 1000 | -4.8% |
25 | トランスジェニック | 575 | 546 | -5.0% |
26 | プレシジョン・システム・サイエンス | 662 | 627 | -5.3% |
27 | メディネット | 69 | 65 | -5.8% |
28 | セルソース | 19420 | 18270 | -5.9% |
29 | メドレックス | 168 | 158 | -6.0% |
30 | ペプチドリーム | 2711 | 2549 | -6.0% |
31 | ステムセル研究所 | 5170 | 4860 | -6.0% |
32 | シンバイオ製薬 | 1039 | 976 | -6.1% |
33 | Delta-Fly Pharma | 1239 | 1157 | -6.6% |
34 | キッズウェル・バイオ | 516 | 481 | -6.8% |
35 | ブライトパス・バイオ | 143 | 133 | -7.0% |
36 | ナノキャリア | 323 | 299 | -7.4% |
37 | テラ | 148 | 137 | -7.4% |
38 | ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング | 691 | 638 | -7.7% |
39 | ジーエヌアイグループ | 1764 | 1625 | -7.9% |
40 | ソレイジア・ファーマ | 121 | 111 | -8.3% |
41 | キャンバス | 246 | 225 | -8.5% |
42 | アンジェス | 595 | 539 | -9.4% |
43 | モダリス | 1213 | 1095 | -9.7% |
44 | ステムリム | 601 | 529 | -12.0% |
45 | スリー・ディー・マトリックス | 316 | 276 | -12.7% |
46 | ヘリオス | 1951 | 1700 | -12.9% |
47 | クリングルファーマ | 891 | 730 | -18.1% |
48 | オンコリスバイオファーマ | 1159 | 700 | -39.6% |