
日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年9月17日金曜日の終値が、前週の週末(9月10日)の終値に比べて上昇したのは13銘柄、下落したのは34銘柄だった。
この間、上昇率の第1位はセルソースで、+13.4%だった。第2位はヒューマン・メタボローム・テクノロジーズで+10.8%、第3位はペルセウスプロテオミクスで+7.7%と続いた。一方、下落率では大きい順にキッズウェル・バイオが-11.2%、ヘリオスが-10,6%、フェニックスバイオが-10.2%となっている。
セルソース(19800円、前週比+13.4%)
9月13日に20270円(前日比+16.1%)を付けた。9月10日の取引時間終了後に第3四半期決算発表で大幅な増益が示され、加えて1:3の株式分割も同時に発表となり、高騰した。同社は2020年にも1:3の株式分割を実施したばかり。その際も増益と同時に株式分割を公表して高値を更新していたが、今回、再び大商いに至った。同社では、3カ月ごとの決算発表のたびに株価が上昇するのがほぼ慣例となりつつあるが、短期間での株式分割がその好調さを裏付けている。
同社は脂肪組織幹細胞の抽出・培養および多血小板血漿(PRP)の精製を主な事業としている。2021年10月期の第3四半期決算は売上高21億400万円(前年同期比+60.4%)、営業利益6億7800万円(同+168.5%)と業績が急拡大しており、営業利益率も32.3%と高い。契約医療機関の数も順調に伸びている。ただ、同社のビジネスは国内の自由診療を主戦場としている以上、成長に制限がかかりやすい。今後は薬事承認を前提としたプロダクト開発への期待が高まっていきそうだ。
ペルセウスプロテオミクス(724円、前週比+7.7%)
9月15日に745円(前日比+10.7%)を付けた。14日に、自社開発している抗トランスフェリン受容体抗体(PPMX-T003)の真性多血症患者に対する第1相試験を開始すると発表したことが材料になったようだ。PPMX-T003は赤芽球細胞への鉄の取り込みを阻害することで赤血球の増加を抑え、多血症を改善する効果が期待されている。
PPMX-T003は同社にとって主力パイプラインとなっている。他のパイプラインに目を向けると、抗GPC3抗体(PPMX-T001)は2022年に特許が切れるため収益化の見込みが立たない。中外製薬は二重特異性抗体として開発を進めており、単独の抗GPC3抗体に力を入れている可能性は低い。また抗カドヘリン3抗体(PPMX-T002)を富士フイルムに導出しているが、富士フイルム自体が創薬から手を引きつつあり、開発の進展には黄信号が灯っている。PPMX-T003が事業の屋台骨を支える格好だ。
そのPPMX-T003だが、真性多血症は瀉血療法などの治療プロトコールがある程度確立しており、さらに分子標的薬(JAK阻害薬のジャカビ)も登場するなど、新薬が入り込みにくい状態にある。治療における優先順位を上げるには、比較試験での優位性が求められ、険しい道のりが待っている。他の血液がんに対する開発が急がれる。
ヘリオス(2134円、前週比-10.6%)
9月16日に2183円(前日比-8.7%)を付けた。8月から株価が好調に推移していたところ、9月15日に海外投資家を対象とした資金調達の実施を発表し、急落した。2021年12月期末で112億円の手元資金があり資金は潤沢に見えたが、製品の上市を見据えた準備に多額の投資が必要などの理由で、今回の調達に至った。株価は株式の希薄化率である約6%よりも大きく下げ、翌17日も前日比-2.2%と続落した。
このタイミングでの資金調達は、もちろん株価が好調だったことが理由としてある。細胞医薬HLCM051の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対する有望な第2相試験結果を8月に発表して以降、株価は上場来高値圏で推移していた。有望な結果を受け、HLCM051の承認申請が2021年末から2022年初頭にかけて可能な状況が見えてきたことも株高に影響していた。承認後の商業用の供給体制を今から構築する必要があり、調達する68億円のうち20億円をその費用に充てる。
さらに、HLCM051の次を担う新たなパイプライン開発に、2023年末までに30億円を投じる計画だ。免疫拒絶を回避できるiPS細胞であるユニバーサルドナーセルから、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を調整して固形がんを標的とするパイプライン(HLCN061)を育てる。NK細胞によるがん治療の試験は血液がんを中心に欧米で活発化しており、その開発競争に乗り遅れないための資金となる。金額が大きいだけに臨床試験入りをある程度想定していると考えられる。

順位 | 社名 | 株価(終値) | 騰落率 | |
---|---|---|---|---|
9月10日 | 9月17日 | |||
1 | セルソース | 17460 | 19800 | 13.4% |
2 | ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ | 776 | 860 | 10.8% |
3 | ペルセウスプロテオミクス | 672 | 724 | 7.7% |
4 | セルシード | 234 | 248 | 6.0% |
5 | ステムセル研究所 | 5850 | 6160 | 5.3% |
6 | ファンペップ | 395 | 415 | 5.1% |
7 | そーせいグループ | 1935 | 2022 | 4.5% |
8 | タカラバイオ | 3215 | 3340 | 3.9% |
9 | ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング | 691 | 709 | 2.6% |
10 | キャンバス | 293 | 299 | 2.0% |
11 | ファーマフーズ | 2778 | 2810 | 1.2% |
12 | サンバイオ | 1248 | 1259 | 0.9% |
13 | ナノキャリア | 308 | 309 | 0.3% |
14 | ブライトパス・バイオ | 160 | 159 | -0.6% |
15 | 免疫生物研究所 | 504 | 500 | -0.8% |
16 | テラ | 202 | 200 | -1.0% |
17 | スリー・ディー・マトリックス | 266 | 263 | -1.1% |
18 | ステムリム | 710 | 699 | -1.5% |
19 | トランスジェニック | 598 | 588 | -1.7% |
20 | リプロセル | 301 | 295 | -2.0% |
21 | ペプチドリーム | 3960 | 3875 | -2.1% |
22 | デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | 260 | 254 | -2.3% |
23 | メディネット | 78 | 76 | -2.6% |
24 | ラクオリア創薬 | 1079 | 1050 | -2.7% |
25 | ユーグレナ | 928 | 901 | -2.9% |
26 | Delta-Fly Pharma | 1381 | 1340 | -3.0% |
27 | オンコリスバイオファーマ | 1257 | 1219 | -3.0% |
28 | プレシジョン・システム・サイエンス | 728 | 704 | -3.3% |
29 | リボミック | 361 | 349 | -3.3% |
30 | ソレイジア・ファーマ | 131 | 126 | -3.8% |
31 | クリングルファーマ | 974 | 936 | -3.9% |
32 | オンコセラピー・サイエンス | 93 | 89 | -4.3% |
33 | 窪田製薬ホールディングス | 211 | 201 | -4.7% |
34 | メディシノバ | 452 | 430 | -4.9% |
35 | DNAチップ研究所 | 605 | 574 | -5.1% |
36 | シンバイオ製薬 | 1129 | 1070 | -5.2% |
37 | 総医研ホールディングス | 398 | 375 | -5.8% |
38 | メドレックス | 189 | 178 | -5.8% |
39 | ステラファーマ | 586 | 550 | -6.1% |
40 | ジーエヌアイグループ | 1669 | 1563 | -6.4% |
41 | カイオム・バイオサイエンス | 260 | 243 | -6.5% |
42 | アンジェス | 780 | 725 | -7.1% |
43 | モダリス | 1648 | 1520 | -7.8% |
44 | カルナバイオサイエンス | 1193 | 1097 | -8.0% |
45 | フェニックスバイオ | 732 | 657 | -10.2% |
46 | ヘリオス | 2386 | 2134 | -10.6% |
47 | キッズウェル・バイオ | 797 | 708 | -11.2% |