日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年9月10日金曜日の終値が、前週の週末(9月3日)の終値に比べて上昇したのは25銘柄、下落したのは19銘柄、不変だったのは3銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はステムセル研究所で、+16.5%だった。第2位はステラファーマで+16.0%、第3位は総医研ホールディングスで+11.8%と続いた。一方、下落率では大きい順にキャンバスが-7.9%、メディシノバが-6.0%、リプロセルが-2.9%となっている。

そーせいグループ(1935円、前週比+4.1%)

 8月12日終値で1549円を付けてから、約1カ月で23.9%上昇し、年初来高値圏の2000円突破をうかがう状況だ。その主な要因としては、8月12日に決算説明会で言及された、ムスカリン受容体作動薬プログラムに関する進展が挙げられる。

 同社のムスカリンプログラムは、精神神経領域の新薬候補となる化合物群で、そーせいの最重要パイプラインに位置付けられる。2016年にアイルランドAllergan社(当時)に権利が導出され臨床開発が進んでいたが、2018年9月にその内の1つであるM1作動薬(HTL18318)に関する長期毒性試験で懸念が発生し、開発が中断した。その後Allergan社が米AbbVie社に買収され、ムスカリンプログラムはAbbVie社のパイプライン戦略に合致しなかったため、2021年1月にそーせいに権利が返還された経緯がある。

 決算説明会では、ムスカリンプログラムの再導出について田村眞一CEOが「精神神経領域に強い複数の企業と交渉が進んでいる。遅くとも年内に導出できる可能性が非常に高い」と述べ、2021年末までの導出に対して自信を示した。また、それと並行して臨床試験入りの展望も示され、M4受容体作動薬(HTL16878)は、2022年上期にも第2相臨床試験入りするとした。また、新規M1受容体作動薬および既存のM1/M4デュアル作動薬に関しても、2022年中に臨床試験開始の準備が整うとした。再導出に伴うマイルストーンの獲得などが連想され、買いが集まっているものとみられる。

 導出への展望が単なる希望的観測ではないとして、同社が紹介したのが競合他社の事例だ。そーせいと同じくM4受容体作動薬を開発している米Cerevel Therapeutics社が2021年6月、統合失調症を対象として行った第1b相試験で統合失調症スコアの統計的に有意な改善効果を示したと発表、製薬業界や投資家などの大きな注目を集めた。Cerevel社の株価は発表直後に2.5倍に上昇し、現在は3倍近い水準で推移している。そーせいは以前からCerevel社を競合として紹介していたが、そのポジティブな試験結果が出たことで、さらに説得力が高まっている。

ステムリム(710円、前週比+5.5%)

 9月10日に710円(前日比+6.6%)を付けた。同社は大阪大学の玉井克人寄付講座教授が見いだした合成ペプチドであるHMGB1ペプチド(レダセムチド)を、再生誘導医薬品として開発している。最も進んでいるパイプラインは表皮水疱症に対する適応で、第2相相当の医師主導治験が好結果で終了しており、導出先の塩野義製薬が承認申請に向けて検討を進めている段階にある。

 同社は9月9日に2021年7月期の決算を発表しており、その関係で買いが入ったものとみられる。材料としては決め手を欠くが、手元資金が101億円あり、2026年までの運転資金が確保されていると記載されたことは安心感を誘う内容だ。

 新たな情報としては、新型コロナウイルス感染症に対するレダセムチドの効果について言及された。同社は、日本医療研究開発機構(AMED)の新型コロナウイルス感染症に対する治療薬開発で2020年度公募に採択されている。その結果、肺線維症マウスモデルで、肺中コラーゲンの指標であるハイドロキシプロリン量を最大で70%有意に抑制し、線維化スコアの低下も確認したとしている。肺線維症はコロナ後遺症として一般のメディアにも取り上げられるほど注目されており、その改善効果に対する期待もありそうだ。

 今後の注目点としては、1つはレダセムチドの表皮水疱症の承認申請に向けた進捗、もう1つはレダセムチドの急性期脳梗塞の第2相試験の結果発表だろう。

 レダセムチドは2020年1月に表皮水疱症に対するポジティブな結果が得られてから、既に1年半以上経過している。塩野義製薬が承認申請の主体で、同社は2021年度の中盤にレダセムチドを表皮水疱症向けに上市する方針を掲げていたため、遅延が気になるところ。医薬品医療機器総合機構(PMDA)との協議で時間を要していると考えられる。塩野義製薬は9月29日にR&D説明会をアナリスト向けに開催するが、その中でレダセムチドの進捗が公開される可能性があり、注目が集まる。

 また、急性期脳梗塞に関しては塩野義製薬が実施中の第2相試験で2021年7月に患者の組み入れが目標症例数に到達し、近くデータ解析に入る見込みだ。90日後の状態を評価するプロトコールであるため、順調にいけば2021年末ごろにはそのデータが公表されるものとみられる。

順位社名株価(終値)騰落率
9月3日9月10日
1ステムセル研究所5020585016.5%
2ステラファーマ50558616.0%
3総医研ホールディングス35639811.8%
4モダリス1492164810.5%
5ペルセウスプロテオミクス6156729.3%
6ユーグレナ8779285.8%
7ジーエヌアイグループ158016695.6%
8ステムリム6737105.5%
9リボミック3453614.6%
10窪田製薬ホールディングス2022114.5%
11そーせいグループ185919354.1%
12フェニックスバイオ7107323.1%
13ヘリオス232223862.8%
14ナノキャリア3013082.3%
15オンコセラピー・サイエンス91932.2%
16DNAチップ研究所5926052.2%
17メドレックス1851892.2%
18ラクオリア創薬105810792.0%
19キッズウェル・バイオ7857971.5%
20Delta-Fly Pharma136113811.5%
21シンバイオ製薬111311291.4%
22セルソース17240174601.3%
23テラ2002021.0%
24アンジェス7757800.6%
25免疫生物研究所5025040.4%
26メディネット78780.0%
27ブライトパス・バイオ1601600.0%
28ソレイジア・ファーマ1311310.0%
29クリングルファーマ975974-0.1%
30プレシジョン・システム・サイエンス730728-0.3%
31カルナバイオサイエンス11981193-0.4%
32ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ780776-0.5%
33ペプチドリーム39903960-0.8%
34ファンペップ398395-0.8%
35デ・ウエスタン・セラピテクス研究所262260-0.8%
36カイオム・バイオサイエンス262260-0.8%
37セルシード236234-0.8%
38スリー・ディー・マトリックス270266-1.5%
39トランスジェニック607598-1.5%
40タカラバイオ32653215-1.5%
41ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング703691-1.7%
42オンコリスバイオファーマ12791257-1.7%
43サンバイオ12761248-2.2%
44ファーマフーズ28552778-2.7%
45リプロセル310301-2.9%
46メディシノバ481452-6.0%
47キャンバス318293-7.9%