日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年9月3日金曜日の終値が、前週の週末(8月27日)の終値に比べて上昇したのは25銘柄、下落したのは21銘柄、不変だったのは1銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はステラファーマで、+17.2%だった。第2位はメディシノバで+16.7%、第3位はステムセル研究所で+9.1%と続いた。一方、下落率では大きい順にDelta-Fly Pharmaが-9.9%、ファーマフーズが-8.1%、カイオム・バイオサイエンスが-6.4%となっている。

ペプチドリーム(3990円、前週比+1.5%)

 9月2日に、富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学から、放射性医薬品事業を305億円で買収すると発表した。時価総額で国内スタートアップのトップを独走する同社だが、企業買収は初めてのこと。大きな株価材料と考えられ投資家の反応が注目されたが、9月3日の株価は3990円(前日比+0.6%)と、ほとんど動かなかった。売買出来高も週内で特段多いということもなく、市場への影響は軽微だった。買収に対するポジティブな考え方とネガティブな考え方が、市場で拮抗していたのではないだろうか。

 まずポジティブな点について、ペプチドリームのペプチド薬物複合体(PDC)技術は放射性医薬品と相性が良く、新薬創出力アップといった事業のシナジーは十分に感じられる。ペプチドの欠点である体内半減期の短さも、体外排出を急ぎたい放射性医薬品では長所になり得る。同社は2018年12月に、放射性医薬品大手の日本メジフィジックスと共同研究開発契約を結んでおり、以前からこの領域に目をつけていたのは明白だ。放射性医薬品は専門性が高く、半減期の短さに伴う独特の流通システムを組まなければならないなど、参入障壁が高いことが挙げられる。後発品の参入リスクが小さく、また海外企業の日本での提携先として選ばれる可能性も高い。創薬から製品販売まで自社で一気通貫する基盤ができるのも今後の医薬品事業にプラスだろう。

 一方、ネガティブな点としては、500人規模の人員や工場などの“重たさ”が挙げられる。流通インフラを維持するための費用もそれなりにかかるため、買収する本事業の収益性は現時点では高くなく、2021年度は売上高155億円、営業損失5億円の予想だ。また、新薬が次々に生まれるといった期待は、少なくとも3年から5年の中期スパンで見なければならない。さらに、投資家としては今回の買収に伴う資金調達も気になるところで、同社が増資について言及していることから、株式の希薄化も当然頭に入れておかなければならない。

 結果として、評価に困る材料となったのではないだろうか。

 なお、同社は2021年度の期初に「2021年度は、4本から8本の臨床入りを想定している」(金城聖文社長)と見通していた。しかしこの9月まで新たに臨床入りしたものは無く、足踏みが続いている。市場が求めているのは、5年後の成長可能性がさらに高まるといった材料よりも、パイプラインの臨床試験入りというような、もう少し短期の成果を感じさせるニュースかもしれない。

 注目されるパイプラインとしては、CD38をターゲットとした「BHV-1100+自家NK細胞」の第1/2相臨床試験が米Biohaven Pharmaceuticals社によって近くスタートしそうな他、COVID-19治療薬も2021年中の臨床試験入りを目指している。直近ではこのあたりの進捗に期待したいところだ。

ステラファーマ(505円、前週比+17.2%)

 8月30日に一時ストップ高を付けるなど、対象47銘柄の中で今週最も上昇したのがステラファーマだった。ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用医薬品の研究開発を手掛ける同社は、4月に上場して初値712円を付けて以降、8月中旬には370円台にまで値を下げていた。その後反転して値上がりが続いており、今週もその勢いが続いた。

 8月30日の材料となったのは、8月27日に発表したリゾートトラスト子会社ハイメディック(東京・渋谷、伏見有貴社長)との提携だ。同社は富裕層向けの医療サービスを展開しており、PET検診やBNCTなどのがん診断・治療向けのサービスが強い。提携によって、PET検診による早期発見とBNCT治療件数増加の相乗効果への期待が高まったことで買われた。なお、ハイメディックの子会社は国立がん研究センターにBNCT用装置を設置しており、ステラファーマと共同で血管肉腫や悪性黒色腫に対するBNCTの第1相試験を共同で実施している。装置の販売やBNCT製剤の適応拡大も視野に入る。8月中旬の底値からの反転で値上がりが続いていたところへブースター効果が付いた格好となり、前週よりも17.2%増で着地した。

 また同社は9月1日、再発高悪性度髄膜腫に対する第2相相当の医師主導治験が被験者登録を終えたと発表した。大阪医科薬科大学病院で実施されているもので、新たな適応拡大に向けて進捗が見られた。高悪性度髄膜腫は年間罹患者数が300~500人程度の希少がんで、5年生存率は90%前後で死亡率は高くないものの、再発を繰り返すためQOLに難がある。主要評価項目は無増悪生存期間で、観察期間は最長3年となっているが、結果が良好であれば早期申請も視野に入り、2024年ごろの承認申請が可能なスケジュール感だ。なお医師主導治験に先立って同病院で行われた臨床研究では、通常5、6カ月で再発する報告が多い中、治療群は2年間無再発が半数に上ったと学会で報告されている。この発表は株価にはあまり影響しなかったが、今後のBNCTの他疾患へ向けた広がりを感じさせる材料になりそうだ。

順位社名株価(終値)騰落率
8月27日9月3日
1ステラファーマ43150517.2%
2メディシノバ41248116.7%
3ステムセル研究所460050209.1%
4トランスジェニック5596078.6%
5プレシジョン・システム・サイエンス6767308.0%
6サンバイオ119312767.0%
7モダリス140414926.3%
8セルソース16350172405.4%
9そーせいグループ176818595.1%
10ラクオリア創薬102010583.7%
11DNAチップ研究所5715923.7%
12タカラバイオ315032653.7%
13ナノキャリア2923013.1%
14ヘリオス225923222.8%
15デ・ウエスタン・セラピテクス研究所2552622.7%
16シンバイオ製薬108511132.6%
17オンコセラピー・サイエンス89912.2%
18フェニックスバイオ6957102.2%
19免疫生物研究所4935021.8%
20セルシード2322361.7%
21ペプチドリーム393039901.5%
22ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング6947031.3%
23総医研ホールディングス3533560.8%
24ペルセウスプロテオミクス6106150.8%
25ソレイジア・ファーマ1301310.8%
26カルナバイオサイエンス119811980.0%
27ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ781780-0.1%
28メドレックス186185-0.5%
29リプロセル312310-0.6%
30ユーグレナ884877-0.8%
31メディネット7978-1.3%
32ステムリム682673-1.3%
33スリー・ディー・マトリックス274270-1.5%
34窪田製薬ホールディングス205202-1.5%
35ブライトパス・バイオ163160-1.8%
36ファンペップ407398-2.2%
37オンコリスバイオファーマ13111279-2.4%
38キッズウェル・バイオ806785-2.6%
39ジーエヌアイグループ16231580-2.6%
40リボミック357345-3.4%
41クリングルファーマ1018975-4.2%
42アンジェス822775-5.7%
43キャンバス338318-5.9%
44テラ213200-6.1%
45カイオム・バイオサイエンス280262-6.4%
46ファーマフーズ31052855-8.1%
47Delta-Fly Pharma15101361-9.9%