日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年8月6日金曜日の終値が、前週の週末(7月30日)の終値に比べて上昇したのは7銘柄、下落したのは39銘柄、不変だったのは1銘柄だった。決算期で株価変動のきっかけとなる材料が出やすく、株価を大きく上下させる株式が多かった。特に10%以上の下落を記録した銘柄が8銘柄に上り、重い雰囲気で夏休みを迎える投資家が多そうだ。

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 この間、上昇率の第1位はヘリオスで、+9.5%だった。第2位はタカラバイオで+7.9%、第3位はカルナバイオサイエンスで+5.1%と続いた。一方、下落率では大きい順にシンバイオ製薬が-40.7%、モダリスが-24.6%、ステムセル研究所が-16.9%となっている。

ヘリオス(1802円、前週比+9.5%)

 8月6日に、1802円(前日比+12.3%)を付けた。同日朝、ヘリオスが日本で急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を対象に開発を進めていた骨髄由来間葉系幹細胞製品のHLCM051について、良好な結果が発表されたことから、朝から買いが集まった。ARDSには有効な治療法が無く、治療薬に対するニーズが高い。HLCM051は希少疾病用再生医療等製品の指定を受けている。

 速報値では、肺炎由来ARDSの30例(実薬20例、プラセボ10例)について、投与後28日間のうち人工呼吸器を装着しなかった日数(VFD)が実薬群で中央値20日となり、プラセボの11日よりも多くなった。90日後の死亡率は実薬群が26.3%、プラセボ群が42.9%となり、死亡率を約39%低下させた。また、COVID-19由来ARDSの患者が別コホートで5例組み入れられており、VFDが25日だった。5例中3例は、3日以内に人工呼吸器を離脱したという。安全性にも問題ないことが確認された。

 会見を開いた鍵本忠尚社長は、「ARDSに関しては、明確な有効性は傾向として見えていると考えており、承認申請の手続きを進めている。2021年第4四半期から、2022年第1四半期にかけて承認申請できればと考えている」と展望した。なお、COVID-19由来ARDSコホートの扱いだが、それも含む形で承認申請する。「原因を問わないARDSとして申請し、承認を受けた後に、COVID-19に関する追加の試験などを求められる可能性はあるだろう」と鍵本社長は述べた。

 なお同日、ヘリオスはHLCM051導入元の米Athersys社と権利拡大の契約を締結し、製造ライセンスも取得した。これによりCMOとして契約しているニコン・セル・イノベーションでの国内製品製造について、ヘリオスの直接指揮下で製造をマネージできることになり、安定供給への体制作りが強化された。同社は国内200カ所以上の医療機関を念頭に自社販売する計画を立てており、MR体制を構築中だという。細胞の保管・流通体制も整備しており、いよいよ製品販売のめどが立ってきたといえそうだ。

モダリス(1114円、前週比-24.6%)

 8月6日に、1114円(前日比-14.5%)を付けた。5日、アステラス製薬と共同研究契約を結んでいた遺伝子治療薬MDL-206について、アステラス製薬から契約を延長しないとの通知を受領したことが、急落の材料となった。これによりMDL-206は自社パイプラインとして開発を継続することになった。契約終了の理由は説明されていない。

 MDL-206はエンジェルマン(アンジェルマン)症候群を対象とした遺伝子治療薬であることが確認された。エンジェルマン症候群は単一遺伝子病の1つで、UBE3Aという遺伝子の機能喪失により発症するとされている。UBE3Aの発現量を高める治療戦略が有望視されており、遺伝子治療薬および核酸医薬が複数開発中だ。

 先行するアンチセンス核酸医薬では、米GeneTX Biotherapeutics社、スイスRoche社などが臨床試験に入っている。米Ionis社も2021年中の臨床入りを計画している。遺伝子治療は米Sarepta社やPTC Therapeutics社などが探索段階にある他、CRISPR/cas9を活用したゲノム編集治療は米AskBio社が前臨床に入っている。

 MDL-206も、これらと競合しながら開発を急ぐ必要がある。アステラス製薬が契約を終了させたのは「戦略上の理由で、それ以上はお答えできない」(アステラス製薬広報部)としており、こうした開発の混雑具合が原因なのか、安全性や有効性に関する理由なのかは確認できなかった。モダリスでは「1回の投与で長期の効果が期待できる遺伝子治療のアドバンテージは高い」(森田晴彦社長)とし、MDL-206の開発を継続する道を選んでいるが、他の遺伝子治療に対するアドバンテージなど、投資家が必要とする情報について、説明を求められていくことになりそうだ。

シンバイオ製薬(1191円、前週比-40.7%)

 8月5日、6日と、2日連続でストップ安となった。2021年度上期の決算が発表され、そのタイミングで売りが殺到した。決算発表では、自社販売体制に切り替えた主力の抗がん薬「トレアキシン」(ベンダムスチン)の売り上げが好調で赤字が前年に比べ大幅に縮小した。決算の数字自体はまずまずだったが、上期での黒字化を予想していた一部の層には悪材料となり、売られることになった。同社は決算発表の場に株主を抽選で招待しており、それが上期の黒字化や上方修正を連想させていた向きもある。個人投資家との対話の場を増やすのが目的だったようだが、これが裏目に出た格好だ。

 それにしても下落幅が大きい。関係者によれば、ヘッジファンドが空売りを仕掛けている様子が見受けられるという。同社の株主は9割が個人投資家で、信用買い残高も大きい。空売りがトリガーとなって個人の狼狽売りを誘い、売り込まれたとの見方が強い。同社は3月にも上場廃止騒動が持ち上がり、ストップ高からのストップ安を演じるなど、ボラティリティーの高さが際立っている。空売りの標的になりやすい傾向が続いており、安定的な株主である海外投資家や機関投資家の購入比率を高めるための市場替えなどを、本格的に検討していく必要がありそうだ。

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順位社名株価(終値)騰落率
7月30日8月6日
1ヘリオス164518029.5
2タカラバイオ273329507.9
3カルナバイオサイエンス121012725.1
4ジーエヌアイグループ158616262.5
5メディネット81821.2
6ユーグレナ9529610.9
7トランスジェニック5305320.4
8オンコセラピー・サイエンス82820.0
9フェニックスバイオ609608-0.2
10ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ785779-0.8
11メディシノバ399395-1.0
12ステムリム663649-2.1
13セルシード228223-2.2
14プレシジョン・システム・サイエンス730713-2.3
15セルソース1431013930-2.7
16リボミック297289-2.7
17免疫生物研究所504488-3.2
18ファーマフーズ28972803-3.2
19テラ211204-3.3
20アンジェス687663-3.5
21窪田製薬ホールディングス221212-4.1
22ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング720688-4.4
23ソレイジア・ファーマ133127-4.5
24ナノキャリア287274-4.5
25リプロセル300286-4.7
26メドレックス186177-4.8
27ラクオリア創薬974926-4.9
28そーせいグループ16501566-5.1
29スリー・ディー・マトリックス325304-6.5
30オンコリスバイオファーマ12461158-7.1
31クリングルファーマ926860-7.1
32ステラファーマ462427-7.6
33キャンバス360332-7.8
34デ・ウエスタン・セラピテクス研究所274251-8.4
35Delta-Fly Pharma16831536-8.7
36DNAチップ研究所667607-9.0
37総医研ホールディングス421383-9.0
38カイオム・バイオサイエンス282255-9.6
39サンバイオ11741060-9.7
40ブライトパス・バイオ170153-10.0
41ペプチドリーム45054035-10.4
42ファンペップ402357-11.2
43キッズウェル・バイオ627546-12.9
44ペルセウスプロテオミクス706602-14.7
45ステムセル研究所49154085-16.9
46モダリス14771114-24.6
47シンバイオ製薬20091191-40.7