日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年7月30日金曜日の終値が、前週の週末(7月21日)の終値に比べて上昇したのはわずか5銘柄にとどまり、下落したのは41銘柄、不変だったのは1銘柄だった。市況全体が低迷しており、マザーズ指数が6月下旬の1200近辺から7月30日は1080近辺へと約1割低下したのと同様、バイオ株もさえない値動きが続く。

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 この間、上昇率の第1位はキッズウェル・バイオ(旧ジーンテクノサイエンス)で、+12.4%だった。第2位はカイオム・バイオサイエンスで+1.4%、第3位はジャパン・ティッシュ・エンジニアリングで+1.3%と続いた。一方、下落率では大きい順にジーエヌアイグループが-17.1%、ステムセル研究所が-16.8%、ファーマフーズが-11.3%となっている。

キッズウェル・バイオ(627円、前週比+12.4%)

 7月29日に627円(前日比+5.2%)を付けた。28日に開催された厚生労働省の医薬品第一部会で、キッズウェル・バイオと千寿製薬が共同開発しているラニビズマブのバイオシミラーについて、承認の了承を得たことが材料となった。ラニビズマブ先発品はスイスNovartis社の抗VEGF抗体医薬「ルセンティス」で、加齢黄斑変性などの治療に用いられる。国内で薬価ベース300億円近くの製品であり、相応の売上高が期待されることから材料視された。

 ラニビズマブBSはキッズウェル・バイオが2022年度に黒字化するためのキープロダクトという位置付けで、承認にゴーサインが出たことで黒字化の実現可能性が高まったと判断されたようだ。キッズウェル・バイオの中期経営計画では、2022年度に黒字化を達成し、2025年度に売上高30億円、営業利益10億円を見込んでいる。2025年度売上高のうち20億円以上は、このラニビズマブが稼ぐと同社では想定しているようだ。

 もっとも、この部会通過はある程度予想されたことでもある。週内の値上がり幅12.4%のうち、部会通過後の値上がりは5.2%だった。他の値上がりの要因として、同社は機関投資家に対するミーティングを積極的に仕掛けており、7月以降、ある程度まとまった量の買いが入った可能性がある。また同社では細胞ソースとして利便性が高い歯髄幹細胞の再生医療等製品パイプラインを8本手掛けており、そのうち脳性まひに対する開発品の臨床試験入りを2022年度までに実現するとしていることから、近い将来の人気化を見越した買いが集まっていそうだ。

ジーエヌアイグループ(1586円、前週比-17.1%)

 7月30日に、1586円(前日比-16.5%)を付けた。29日の市場取引終了後に、同社が中国で肝線維症治療薬として開発を進めているF351(ヒドロニドン)について、中国における第3相臨床試験の開始について、当局から認可が下りたことが発表された。2021年第3四半期中に開始され、248人の被験者を対象に、約3年間の試験期間が計画されているといった内容だ。試験開始というマイルストーンが達成され、通常ならポジティブなIRとなるが、急落を招いたのはなぜか。

 それは早期承認の可能性がほぼ無くなった、と見た投資家が多かったためだろう。同社は2020年8月にF351で第2相臨床試験の好結果を確認し、その時点では中国での早期承認制度を活用した条件付き早期承認の可能性を考えていた。2020年10月時点のリリースでも、当局との議題として「エンド・ステージ(肝硬変)の患者へのF351の先行投与の可能性および使用条件の検討」が挙がっていた。しかし、中国当局との協議の結果、第3相臨床試験の実施を求められ、さらに早期承認に関する文言が発表されなくなったことで、投資家はその可能性が低いことを認識していった。そこへ、今回第3相の試験開始がアナウンスされ、早期承認の可能性に対する言及も無かったことから、早期承認は無いと確信した投資家が売りを仕掛け、急落に至ったと考えられる。

 早期承認による急騰を狙っていた層には残念な結果となったが、今回明らかになったF351の第3相試験は、患者数が肝線維症としては少ない。900人規模の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)向けの第3相試験が実施された米Intercept社のオベチコール酸に比べると、負担は随分と軽い。また主要評価項目もIshankスコアIの低下割合で、F351の第2相と同じデザインが踏襲されており、有利な条件といえるだろう。市場関係者からは、「同社は3年間試験をきっちりやり切って、正式な形で承認を得ることに力を注ぐ方針だろう」との声が聞こえてくる。短期的な動きの少ない株式に興味が無い層は去り、長期ホルダーが増えていく格好となれば、バイオ株として好ましい形となる。今回の急落は、株価の足場を固めるターニングポイントになるかもしれない。

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順位社名株価(終値)騰落率
7月21日7月30日
1キッズウェル・バイオ55862712.4%
2カイオム・バイオサイエンス2782821.4%
3ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング7117201.3%
4シンバイオ製薬199220090.9%
5ラクオリア創薬9739740.1%
6オンコセラピー・サイエンス82820.0%
7テラ212211-0.5%
8免疫生物研究所507504-0.6%
9デ・ウエスタン・セラピテクス研究所276274-0.7%
10DNAチップ研究所672667-0.7%
11フェニックスバイオ615609-1.0%
12ブライトパス・バイオ172170-1.2%
13トランスジェニック537530-1.3%
14ナノキャリア293287-2.0%
15スリー・ディー・マトリックス332325-2.1%
16クリングルファーマ946926-2.1%
17ファンペップ411402-2.2%
18総医研ホールディングス432421-2.5%
19ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ807785-2.7%
20ペルセウスプロテオミクス726706-2.8%
21リボミック306297-2.9%
22モダリス15271477-3.3%
23ペプチドリーム46604505-3.3%
24セルシード236228-3.4%
25タカラバイオ28312733-3.5%
26サンバイオ12201174-3.8%
27キャンバス375360-4.0%
28ステラファーマ482462-4.1%
29ヘリオス17201645-4.4%
30カルナバイオサイエンス12671210-4.5%
31プレシジョン・システム・サイエンス765730-4.6%
32メドレックス195186-4.6%
33窪田製薬ホールディングス232221-4.7%
34リプロセル315300-4.8%
35セルソース1503014310-4.8%
36オンコリスバイオファーマ13101246-4.9%
37ユーグレナ1006952-5.4%
38ソレイジア・ファーマ141133-5.7%
39そーせいグループ17511650-5.8%
40メディシノバ426399-6.3%
41ステムリム712663-6.9%
42メディネット8981-9.0%
43アンジェス756687-9.1%
44Delta-Fly Pharma18861683-10.8%
45ファーマフーズ32652897-11.3%
46ステムセル研究所59104915-16.8%
47ジーエヌアイグループ19121586-17.1%