日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年7月9日金曜日の終値が、前週の金曜日(7月2日)の終値に比べて上昇したのは4銘柄、下落したのは42銘柄、不変だったのは1銘柄だった。今週は株式市場全体の地合が悪く、値を下げた銘柄が大半だった。

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 この間、上昇率の第1位はカイオム・バイオサイエンスで+18.4%だった。第2位はユーグレナで+15.7%、第3位はステムセル研究所で+6.3%と続いた。一方、下落率では大きい順にアンジェスが-15.1%、スリー・ディー・マトリックスが-12.0%、ヘリオスが-10.5%となっている。

ステムセル研究所(5420円、前週比+6.3%)

 7月8日に5680円(前日比+14.1%)を付けた他、9日には一時6000円を超えるなど人気が高まるシーンが見られた。公開価格の2800円から2倍近い価格になっており、投資家からの期待感が高い。同社はさい帯血バンク事業で収益を上げながら、細胞医薬などの再生医療等製品を開発していく方針を掲げている。さい帯血バンク事業は5期以上連続で黒字を維持し、キャッシュリッチで財務的に安定していることから、海外の機関投資家からの打診もあるようだ。

 もっとも、同社には細胞採取や保管以外に特筆すべき技術が無いとの指摘もある。この点に関して同社は、さい帯血バンクとして20年以上の保管を続けており、信頼性と実績の面で、他社が追随できないアドバンテージがあると考えている。厚生労働省に臍帯血プライベートバンクの事業の届出をしている企業は同社以外に臨床検査会社のアイルがあるが、2020年3月末の時点で新規保管件数が10件で、7745件のステムセル研究所とは大きな開きがある。実質的には独占状態だ。

 新たな再生医療等製品の製品化は、3年後が1つの目安となりそうだ。同社は現在、大阪大学と膝関節半月板損傷の治療で、東京大学とは口唇口蓋裂などの先天性形態異常の治療で、それぞれさい帯由来細胞を用いた共同研究を進めている。このうち大阪大との共同研究はコラーゲン半月板補填材を用いるもので、それコラーゲン単体では既に先進医療として認可されている。これにさい帯由来間葉系幹細胞(MSC)を組み合わせることで治療効果が高まると考えられ、3年後の実用化を目指しているという。

 同社の再生医療等製品ビジネスへの関わり方としては、事業会社に細胞を供給し、再生医療等製品の研究開発や製品化をサポートすることになる。製品化後は、原料細胞の供給費用やロイヤルティーが収入となる。細胞医薬の研究開発を手掛ける国内スタートアップとコンタクトを進めており、一部には出資もしている。研究開発力を持つ企業や大学との協業が増えれば、評価は高まっていきそうだ。

アンジェス(767円、前週比-15.1%)

 7月7日に827円(前日比-5.5%)、8日に749円(前日比-9.4%)と、きつい下げが重なった。信用買い残高が大きく売り圧力の高まりが連想された。また、6月上旬から下降トレンドが続いており、浮上のきっかけをつかめていないことなど、複合的な要因が重なってこの2日間の急落を招いたと考えられる。

 6月からのさえない値動きは、ワクチンの有効性に関するデータが主な要因と考えられる。6月上旬に、大阪大学大学院医学系研究科の森下竜一寄付講座教授が日本医療研究開発機構(AMED)のシンポジウムなどで、開発中のDNAワクチンの第1/2相臨床試験のデータを公表した。2回接種した場合の中和抗体陽転率が60%(10例中6例)となり、現在国内で接種が進んでいるmRNAワクチン(いずれも90%台の後半)に比べて大幅に低いことが明らかになった。ある市場関係者は「臨床的な感染予防効果はこれよりもさらに低くなることが推測され、失望感が広がった」とみる。

 また、他の市場関係者は「他のワクチン開発企業に比べて不透明感が強い」と指摘する。アンジェスは3月末に、第1/2相試験および第2/3相試験の結果を初夏までに公表するとしていたが、6月中旬になって再度の延期を発表した。これによりアンジェスの開発状況に対する不透明感が強まり、投資家離れが進んでいるとの見方だ。米国の委託先企業による解析が遅れているのが原因だが、こうなると第3相試験の開始もずれこみ、4月末に河野太郎行政改革担当相が匂わせた「年内の承認」はますます難しくなっていく。「塩野義製薬やKMバイオロジクスの役員クラスが相次いでポジティブな発言をしているのに対し、アンジェスは何も進展がないように見え、投資家のいらだちが高まっている」(同)。

 なお、アンジェスとしては、6月上旬に発表されたデータは国内の委託先で得られた暫定的な結果というスタンスだ。正式な解析データは米国の委託先企業により報告されるため、このデータは今後変わり得るということだが、果たして投資家を納得させられるデータが示せるのか。結果は「秋に入るまでには」(同社)公表される見込みだ。

カイオム・バイオサイエンス(328円、前週比+18.4%)

 7月1日に、世界知的所有権機関(WIPO)で新たな特許申請が公開されたことが材料となった可能性がある。CDCP1はがん細胞の増殖や転移に深く関わっているとされ、同社が開発中の抗CDCP1抗体は、がんの転移を防ぐ薬剤として期待される。hCDCP1を発現するがん細胞に結合する一方、hCDCP1を発現するCD34陽性細胞に対しては相対的に弱く結合するため、副作用が少ない抗がん薬にできる可能性があるという。

順位社名株価(終値)騰落率
7月2日7月9日
1カイオム・バイオサイエンス27732818.4%
2ユーグレナ932107815.7%
3ステムセル研究所510054206.3%
4ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ8558610.7%
5メディネット1021020.0%
6DNAチップ研究所689686-0.4%
7デ・ウエスタン・セラピテクス研究所282280-0.7%
8ペルセウスプロテオミクス804796-1.0%
9セルシード258254-1.6%
10オンコセラピー・サイエンス111109-1.8%
11ジーエヌアイグループ20712030-2.0%
12ラクオリア創薬10291008-2.0%
13Delta-Fly Pharma17151677-2.2%
14テラ220215-2.3%
15免疫生物研究所525513-2.3%
16ステラファーマ545532-2.4%
17セルソース1670016260-2.6%
18ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング766745-2.7%
19フェニックスバイオ652633-2.9%
20キャンバス394382-3.0%
21クリングルファーマ10691036-3.1%
22トランスジェニック530511-3.6%
23オンコリスバイオファーマ14401388-3.6%
24プレシジョン・システム・サイエンス826795-3.8%
25ブライトパス・バイオ185178-3.8%
26窪田製薬ホールディングス252242-4.0%
27リプロセル342327-4.4%
28カルナバイオサイエンス16781600-4.6%
29ステムリム794756-4.8%
30総医研ホールディングス457435-4.8%
31ソレイジア・ファーマ160151-5.6%
32タカラバイオ29852817-5.6%
33モダリス17321629-5.9%
34リボミック345323-6.4%
35ナノキャリア321300-6.5%
36ファーマフーズ30302824-6.8%
37ファンペップ445414-7.0%
38キッズウェル・バイオ623574-7.9%
39メディシノバ457420-8.1%
40ペプチドリーム52704835-8.3%
41そーせいグループ18571696-8.7%
42サンバイオ14301286-10.1%
43シンバイオ製薬22332007-10.1%
44メドレックス224201-10.3%
45ヘリオス18391645-10.5%
46スリー・ディー・マトリックス392345-12.0%
47アンジェス903767-15.1%