日本の株式市場に上場するバイオベンチャー企業の株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2021年7月2日金曜日の終値が、前週の金曜日(6月25日)の終値に比べて上昇したのは26銘柄、下落したのは19銘柄、不変だったのは2銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はスリー・ディー・マトリックスで、+40.0%だった。第2位は6月25日に上場したステムセル研究所で+23.5%、第3位はカルナバイオサイエンスで+21.6%と続いた。一方、下落率では大きい順にオンコリスバイオファーマが-22.0%、ラクオリア創薬が-12.4%、クリングルファーマが-12.4%となっている。

カルナバイオサイエンス(1678円、前週比+21.6%)

 7月2日にストップ高の1678円(前日比+21.8%)を付けた。米Gilead Sciences社とカルナバイオサイエンスが共同で、「ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)調節薬」の特許を出願したことが7月1日の夕方に世界知的所有権機関(WIPO)において公開され、材料となった。2年前に開始した両社の共同研究が成果として表れたと考えられ、投資家の買いが集まっている。

 カルナバイオは2019年6月にGilead社と脂質キナーゼ阻害薬の研究開発などで提携する契約を結んだ。今回の特許出願で明らかにされたDGK阻害薬は、その成果とみられる。共同で研究開発を進める脂質キナーゼは非開示とされていたが、カルナバイオが販売するキナーゼのカタログからDGKのセットが無くなっていたため、標的分子はDGKであることが推測される状況にあった。

 公開された出願書類のボリュームは膨大であり、1000ページ近くに及ぶ。DGK阻害薬のリード化合物から派生したと思われる候補物質が多数掲載されており、その数は正確に数えていないが数百個にも上りそうだ。DGKはキラーT細胞の活性化に関与していると考えられており、DGK阻害により免疫が活性化することが期待される。出願書類には対象疾患として、がんだけでなく、HIV、慢性B型肝炎ウイルス(HBV)などの感染症、ワクチン、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)への活用も盛り込まれており、免疫の活性化が重要となる疾患や治療法が広範囲にカバーされている印象だ。

 開発の対象疾患として真っ先に挙げられるのは、Gilead社が力を入れているがんだろう。同社は低分子の経口PD-L1阻害薬(GS-4224)を第1相臨床試験に進めており、「飲むオプジーボ」の実現を目指している。キラーT細胞の活性化を促すDGK阻害薬はこれと相性がよいと考えられ、両成分が配合薬として効果を高め合うような薬剤開発が期待される。キラーT細胞の活性化を狙う創薬標的分子としてはA2A受容体、STING、IDOなどがあるものの、まだこれといった成果が出ているものは無い。DGK阻害薬がその一番乗りに成功すれば、飲むオプジーボを実現させるキードラッグ、あるいは他のがん免疫薬の併用相手として一定の地位を築く可能性もありそうだ。過剰な期待は禁物だが、週明けの値動きが注目される。

スリー・ディー・マトリックス(392円、前週比+40.0%)

 6月29日に、402円(前日比+24.8%)の急騰を見せてストップ高となった。約7カ月ぶりの高値水準まで値を伸ばし、その後もみ合いながら週末を迎えた。今週の出来高は前週の数十倍から100倍近くに膨れ上がり、短期の値幅狙いの取り引きが活発化している印象だ。28日、同社が開発する自己組織化ペプチドの止血剤「PuraStat-GI」が、米国で510(k)の承認を取得したと発表されたことが材料となった。PuraStat-GIは消化器内視鏡による処置時に生じる出血を迅速に止める止血剤として使用される。欧州では既に販売されており、米国での承認が期待されていた。

 米国での承認が業績にどれだけのインパクトを与えるかだが、欧州と米国では同程度のニーズがあると同社では分析している。欧州では本格的な販売を開始して2年で約10億円(小売ベース)を達成したことから、2023年4月期には3億~4億円、2024年4月期は6億~7億円程度の売上高を米国で達成できる可能性がある。欧州では外部に販売委託しているため小売ベース売上高はその約半分しかスリー・ディー・マトリックスの収入にならない。しかし米国では自社販売を進めることから、この売上高は全額が同社の収入となり、欧州よりも業績への寄与度は高まりそうだ。

 もっとも、同社は2021年6月に公表した中期経営計画で、米国での売上高として2024年4月期に29億円を目標としており、その大半は2019年4月に米国で承認を受けた耳鼻科用の「PuraSinus」が稼ぐことを想定している。そこからすれば、PuraSinusの売上高を軌道に乗せることが先決となる。また、2020年7月にPuraStatの承認を取得した日本での販売も13億円(2024年4月期)を目指しており、2021年中に見込まれる国内の保険収載および自社販売体制の早期立ち上げが、同社の次の評価ポイントになりそうだ。

ラクオリア創薬(1029円、前週比-12.4%)

 7月1日に1047円(前日比-10.8%)と急落した。6月30日に中期経営計画の修正を発表、2021年度の事業収益と営業利益を下方修正したことが失望売りを誘ったようだ。修正は、2021年3月に新経営体制に移行し、事業計画の見直しを行ったことによる。新経営陣への期待が大きかった分、過剰に反応した部分もありそうだ。もっとも、下方修正の要因としては新型コロナウイルス感染症の影響などが大きい。新経営陣の舵取りを評価するには、自社開発への注力によるパイプラインの価値向上、および領域の拡充や新技術の導入による新たな領域創出などの成果を見なければならず、より長期的な視点が求められる。

順位社名株価(終値)騰落率
6月25日7月2日
1スリー・ディー・マトリックス28039240.0%
2ステムセル研究所4130510023.5%
3カルナバイオサイエンス1380167821.6%
4ファーマフーズ2665303013.7%
5モダリス158017329.6%
6カイオム・バイオサイエンス2542779.1%
7セルソース15530167007.5%
8ファンペップ4184456.5%
9キッズウェル・バイオ5896235.8%
10そーせいグループ176318575.3%
11ユーグレナ8879325.1%
12メディシノバ4394574.1%
13ソレイジア・ファーマ1561602.6%
14ナノキャリア3133212.6%
15DNAチップ研究所6726892.5%
16フェニックスバイオ6376522.4%
17ブライトパス・バイオ1821851.6%
18セルシード2542581.6%
19ヘリオス181318391.4%
20プレシジョン・システム・サイエンス8158261.3%
21シンバイオ製薬220822331.1%
22アンジェス8959030.9%
23免疫生物研究所5225250.6%
24窪田製薬ホールディングス2512520.4%
25デ・ウエスタン・セラピテクス研究所2812820.4%
26リボミック3443450.3%
27メドレックス2242240.0%
28リプロセル3423420.0%
29ペルセウスプロテオミクス805804-0.1%
30ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング767766-0.1%
31タカラバイオ30002985-0.5%
32ジーエヌアイグループ20842071-0.6%
33メディネット103102-1.0%
34サンバイオ14461430-1.1%
35総医研ホールディングス463457-1.3%
36テラ223220-1.3%
37ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ870855-1.7%
38ペプチドリーム54005270-2.4%
39オンコセラピー・サイエンス114111-2.6%
40ステムリム816794-2.7%
41トランスジェニック546530-2.9%
42キャンバス407394-3.2%
43ステラファーマ586545-7.0%
44Delta-Fly Pharma19491715-12.0%
45クリングルファーマ12201069-12.4%
46ラクオリア創薬11751029-12.4%
47オンコリスバイオファーマ18471440-22.0%