日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年5月27日金曜日の終値が、前週の週末(5月20日)の終値に比べて上昇したのは18銘柄、不変だったのが1銘柄、下落したのは31銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はメディネットで+50.0%だった。第2位は総医研ホールディングスで+14.9%、第3位はソレイジア・ファーマで+9.9%と続いた。一方、下落率では大きい順にヘリオスが-55.6%、ペルセウスプロテオミクスが-26.8%、ステラファーマが-16.1%となっている。

ヘリオス(353円、前週比-55.6%)

 5月20日に、同社が脳梗塞急性期を対象に実施していた細胞医薬HLCM051の第2/3相のTREASURE試験において、主要評価項目が達成されなかったことが発表され、23日から株価下落が続いた。2日連続でストップ安を記録したほか、5日連続で下落となり株価は前週比-55.6%となった。

 主要評価項目が未達となったことで、ヘリオスはかなり厳しい立場に追い込まれた。これまで主要評価項目が未達で承認申請に至ったものとしては、最近の例では塩野義製薬のCOVID-19治療薬のS-217622が挙げられる。抗ウイルス効果に関する項目は達成したものの、症状改善効果に関する項目は未達となった。だが国産薬の開発が求められる領域という特殊な事情もありそうだ。

 あるいは、アデュカヌマブについても同様のことが言えるのではないか。第3相のENGAGE試験で主要評価項目が未達だったが、同じく第3相のEMERGE試験で主要評価項目を達成したということもあり、最終的に米国で承認を得ている。ただしこの承認には批判も多く、欧州では承認されず、日本では継続審議となった。また米国でも、実質的にほとんど販売されていないことは周知の通りだ。

 一方、再生医療等製品に目を向けると、比較対照群を設定しない単群の試験結果で承認されたものが散見される。HLCM051に最も近い例では脊髄損傷を対象とした「ステミラック」(ヒト[自己]骨髄由来間葉系幹細胞)が挙げられる。第2相相当の医師主導治験において、13例中12例が主要評価項目の改善レベルを達成した。当局は「有効性を示唆する結果が得られた」と評価して、副次評価項目の結果も勘案して最終的に条件及び期限付承認を付与した。

 今回、ヘリオスが得た結果は主要評価項目で未達だったものの、その数字的なハードルを下げた形の副次評価項目では、統計学的な有意差を示したというものだ。これをどう解釈するか、難しい判断となりそうだ。二重盲検比較試験の結果であり、エビデンスレベルとしては単群の試験よりも上位に位置する。

 ある市場関係者は「フル承認は難しいだろう。しかし条件及び期限付承認や、年齢などを限定した形で承認を与えるなどの可能性はあるのではないか」と評価する。もっとも条件及び期限付承認の場合は、あらためて事後的に検証的試験を実施して有効性を証明する必要がある。またアデュカヌマブのように、費用対効果などの面から実臨床で使用されないケースも考えられる。険しい道のりであることは確かだ。

ステラファーマ(376円、前週比-16.1%)

 5月27日、376円(前日比-14.2%)を付けた。26日に、現時点でのデータによる適応拡大の承認申請を断念したとのニュースが、下落の材料となった。

 同社はホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる薬剤「ステボロニン」(ボロファラン)の適応拡大を進めており、その中で最も進んでいたのが、再発悪性神経膠腫(脳腫瘍)に対する使用で、先駆け審査指定制度の対象となっていた。第2相試験として単群で24例に治療が実施され、主要評価項目である、術後1年後における生存割合で期待値の60%を上回る79.2%という結果を得て、当局と承認に向け、先駆け総合評価相談を2020年2月から実施していた。

 しかし単群での試験結果であることから有効性の判断が難しいため、ステラファーマでは全国の病院から症例を収集して比較するレトロスペクティブ調査を行っていた。そして今回、その調査に限界があること、またBNCT群にも追加データが必要になることが分かり、現時点での承認申請を断念し、新たな試験の実施に向けて検討を始めたことが発表された。

 事前に設定された主要評価項目を達成したにもかかわらず承認に至らなかったが、やむを得ない部分がありそうだ。単群試験ではどうしても、患者背景などによって効果がマスクされる可能性があり、本来の有効性を評価しにくい。そのため他の項目も含めて評価することが必要になる。

 参考になるのが、同じく脳腫瘍を対象に承認された第一三共のがん治療用ウイルス「デリタクト」(テセルパツレブ)の例だ。デリタクトでは単群の臨床試験が行われ、主要評価項目の1年生存率が92.3%(13人中12人)となり、注目を集めた。しかし、このデリタクトでも主要評価項目の数字だけでは有効性の評価には不十分とされ、腫瘍の縮小効果も踏まえて「一定の有効性は期待できる」(デリタクトの審査報告書)との結論に至っている。

 一方、ステボロニンでは治療に伴う脳浮腫などの影響により腫瘍の縮小効果に関する評価が難しく、生存率だけでは効果を証明したことにならない、と判断されたものと考えられる。いったんはレトロスペクティブ調査との比較で進めることで当局と合意したが、似たような背景を持つ患者のデータ収集が困難だったということだ。先駆け審査指定制度の対象品目とはいえ、当局としても、比較できる患者対照群があればというところがギリギリのラインだったのだろう。

 もっとも、海外展開を考えれば今回のデータでは事業展開が難しく、いずれ検証的試験の実施は避けられなかった。同社は開発継続の意志は示しているものの、今後の計画は未定で、決まったとしてもさらに3年以上は臨床試験に費やすことになる。同社は住友重機械工業と協議して、今後の開発計画を練り直す方針だが、ランダム化比較試験による生存率の比較など、試験のハードルは高くなりそうだ。

ペルセウスプロテオミクス(386円、前週比-26.8%)

 27日に前週比-26.8%となる386円を付けた。前週は富山大学が発見したCOVID-19向け抗体医薬候補に対し、同社がその権利を獲得して薬事承認に向けて開発するとした内容が評価され、2日連続のストップ高となった。今週はその反動で売られ、4日続落となり、前週の値上がり幅がほぼ消失した。

 幅広いスペクトルを持つ中和抗体の開発は、世界中で進められており、今回の富山大学の抗体もその1つ。また、例えば英GlaxoSmithKline社のソトロビマブは、ウイルスのスパイク蛋白質の共通構造をエピトープとしており、どのような変異株に対しても効くと期待されたが、オミクロン株の亜系統(BA.2)に対する有効性が低いと判断され、緊急使用許可が取り消された。こうしたことから、抗体の効果が当初の期待通りにならない可能性も考慮されたものと考えられる。

モダリス(424円、前週比-7.8%)

 23日に一時ストップ高を付けたものの、週内は下落が続いて27日の終値は前週比-7.8%となった。同社は前週に国内外の大手機関投資家の大量保有が明るみに出るなど、好材料が続いて上昇率上位にあった。今週はその反動が出た形だ。

 同社は5月16日から19日にかけて開催された米遺伝子細胞治療学会(ASGCT)において、6件の発表を行ったことが注目された。内容としてはこれまでに得られているパイプラインのin vivoおよびin vitroの試験結果が中心だったが、その中で注目なのは前々週でも触れた、新規パイプラインの拡張型心筋症(DCM)に対する遺伝子治療の発表だ。

 タイチンという蛋白質の発現を増加させることでDCMを治療する戦略だが、注目はその市場規模の大きさだ。タイチンの長さが足りなくなるタイプの変異を持つ遺伝子異常が原因のDCMがターゲットだが、その割合は5000人に1人程度。日本では2万人くらいの数になる。市場関係者によれば、「比較対象が心臓移植であることを考えると、市場規模は全世界で数千億円程度になるのではないか」との観測だ。またタイチンはこれまで全くアプローチされていなかった蛋白質で、新規性の高さも評価されていそうだ。

 DCMの研究開発ではまず、短縮されたタイチンが細胞内で悪影響を及ぼしているか否かが検討された。その結果、悪影響を及ぼしてはおらず、機能を喪失しているだけであろうことが分かった。このため同社のCRISPR-GNDMでタイチン遺伝子の発現量を増加させても身体へ悪影響が出ず、治療が可能であることが推測された。そして、ヒト細胞で発現量を300倍まで増加させられることを確認し、有望であることを確認したというのが今回の研究の内容だ。

 またそれ以外にも、注目を浴びそうな先端的な研究を発表していた。ウイルスベクターの品質評価に関するものだ。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた遺伝子治療では、肝臓毒性や血栓の発生などにより、臨床試験の中断が多発していることが注目されている。その要因にはベクターの投与量が関係していると考えられているが、これまで臨床試験入りしているAAVベクターの多くはその製造に問題があり、ベクターの中身が空っぽ、または不完全なゲノムしか入っていないベクターも多く生み出されている。投与されたもののうち実際に効力を持つものは半分あるいはそれ以下というケースがあるとされる。完全なベクターの割合を100%にすれば、それだけベクターの投与総量を減らせるため安全な遺伝子治療ができるということになる。

 同社がオーラルセッションで発表した1つがその問題に直結しており、次世代シーケンサー(NGS)などを使って品質評価する手段を発表した。こうした品質評価の手段はまだ十分に確立されておらず、今後重要なツールになっていくと考えられる。このほか、同社のCRISPR-GNDMに対する免疫原性の発表もあり、長期にわたって同社のCRISPR-GNDMを導入した細胞が免疫の攻撃を受けて消失されるかなどを検証したが、細胞が免疫の攻撃を受けることはなく、長期にわたって遺伝子治療の効果を維持できることが示唆された。

 モダリスに関しては、海外での認知度がまだまだ低く、今回の発表を受けて海外の投資家から注目を集めるきっかけになりそうだ。

順位社名株価(終値)騰落率
5月20日5月27日
1メディネット487250.0%
2総医研ホールディングス29634014.9%
3ソレイジア・ファーマ81899.9%
4スリー・ディー・マトリックス3393575.3%
5Green Earth Institute7287665.2%
6テラ77815.2%
7フェニックスバイオ5585824.3%
8Delta-Fly Pharma7898153.3%
9カイオム・バイオサイエンス1671712.4%
10ジーエヌアイグループ121012352.1%
11ナノキャリア2172211.8%
12窪田製薬ホールディングス1411431.4%
13カルナバイオサイエンス8698801.3%
14トランスジェニック3503541.1%
15ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング5265300.8%
16レナサイエンス4044070.7%
17ファンペップ2042050.5%
18メディシノバ3093100.3%
19オンコセラピー・サイエンス65650.0%
20DNAチップ研究所432431-0.2%
21アンジェス366365-0.3%
22免疫生物研究所300299-0.3%
23クリングルファーマ573571-0.3%
24サスメド858850-0.9%
25デ・ウエスタン・セラピテクス研究所205203-1.0%
26ステムリム747733-1.9%
27プレシジョン・システム・サイエンス380372-2.1%
28ステムセル研究所45004405-2.1%
29ブライトパス・バイオ8684-2.3%
30ユーグレナ866845-2.4%
31キッズウェル・バイオ270263-2.6%
32ラクオリア創薬760739-2.8%
33メドレックス107104-2.8%
34セルソース32853190-2.9%
35そーせいグループ11781143-3.0%
36リプロセル196190-3.1%
37ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ610590-3.3%
38リボミック168162-3.6%
39シンバイオ製薬780750-3.8%
40オンコリスバイオファーマ606581-4.1%
41ペプチドリーム16311547-5.2%
42サンバイオ11451071-6.5%
43タカラバイオ19171788-6.7%
44セルシード141131-7.1%
45ファーマフーズ17291605-7.2%
46キャンバス191177-7.3%
47モダリス460424-7.8%
48ステラファーマ448376-16.1%
49ペルセウスプロテオミクス527386-26.8%
50ヘリオス795353-55.6%