日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年5月13日金曜日の終値が、前週の週末(5月6日)の終値に比べて上昇したのは8銘柄、不変だったのが1銘柄、下落したのは41銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はモダリスで+26.0%だった。第2位はファーマフーズで+8.4%、第3位はヘリオスで+6.1%と続いた。一方、下落率では大きい順にキッズウェル・バイオが-21.3%、サスメドが-15.4%、レナサイエンスが-12.7%となっている。

モダリス(422円、前週比+26.0%)

 5月13日、422円(前週比+26.0%)で引けた。今週は好材料が複数あり、値を下げる局面もあったが下値は限定的で底堅い値動きとなった。11日にはストップ高を付け、全50銘柄の中で値上がり率は断トツの1位だった。

 材料としてはまず、9日に同社のCRISPR-GNDMを用いた遺伝子治療の新規パイプラインとして、MDL-105が加わったことが発表された。MDL-105は拡張型心筋症を対象にしたもので、タイチンと呼ばれる心筋の蛋白質の発現を増加させることで拡張型心筋症を治療することを狙っている。

 拡張型心筋症の20~25%の患者にタイチンの遺伝子異常が見られ、その正常な発現が心筋の維持に重要とされている。ただ、タイチンの遺伝子サイズはcDNA長で17kbと大きく、通常の遺伝子治療で導入し発現させるのは難しい。そこでMDL-105は、タイチンの発現を制御している因子をコントロールする方向でアプローチしている。同社は疾患細胞に対するトランスクリプトーム解析によってその因子を特定し、そのデータを基にガイド配列を設計したCRISPR-GNDMで、骨格筋細胞などで発現上昇効果を確かめたという。

 拡張型心筋症は進行すれば心臓移植が必要で、有効な治療法がなくアンメットメディカルニーズが高い。低分子では米Pfizer社のエンプルマピモド(emprumapimod)や米Bristol Myers Squibb社のダニカムチブ(danicamtiv)が開発中だが、複数の細胞医薬の開発が世界的に進む。日本でも慶應義塾大学発のHeartSeedが、他家iPS細胞由来再生心筋球について拡張型心筋症を含む心不全に向けて開発しており、デンマークのNovoNordisk社に導出している。

 細胞医薬がターゲットとするのは低分子でのターゲティングが難しい分野が多い。そこへ新たなモダリティとして遺伝子治療が入るのであれば注目度は高い。同社では「その疾患の規模の大きさから開発の初期段階にありながら、既に複数のバイオテック企業や大手製薬企業から提携の検討依頼を受けている」としており、期待感を高めている。

 もっとも、今週の強い値動きの主な要因は、海外資金の参入だ。世界的な資産運用会社のフィデリティ投信が、同社株に関する大量保有報告書を発行したことが11日に開示され、前日比+25.2%のストップ高となった。実績のある海外大手機関の買いが、安心感を誘った格好だ。

 また、5月中旬に開催される米遺伝子細胞治療学会(ASGCT)において、同社は口頭とポスターの合計で6本の発表を予定している。その中には前述のMDL-105以外にも、アンジェルマン症候群やタウオパチーなどの既存の自社パイプラインの内容が含まれており、事業の進展などを想起させる材料となっている。

キッズウェル・バイオ(358円、前週比-21.3%)

 5月13日にストップ安となる358円(前日比-18.3%)を付けた。要因は12日に開示された同社決算説明会の資料にあり、事業戦略の大幅な変更が記載されていたことによる。ストップ安の直接的な引き金になったのは、100億円以上の資金調達を今後実施していくことが明記された点だろう。株式の希薄化を嫌気した投資家が売りを浴びせたようだ。

 12日に発表された修正後の中期経営計画「KWB2.0」では、乳歯歯髄幹細胞(SHED)を用いた細胞医薬の開発を積極化するため、先行投資を行う方針が掲げられた。その金額は100億円以上となり、「海外ファンドからの資金調達によって開発加速を実現」「エクイティファイナンスによる調達で実行」と記載された。

 同社が中期経営計画を発表したのは2021年2月であり、わずか1年あまりで事業の方向性を変えた理由としては、2022年2月に同社のバイオシミラー「ラニビズマブ」のライバル製品である「アイリーア」でバイオセイムが承認されたことが大きい。今後ラニビズマブの収益を圧迫するのは確実視されるが、バイオセイムの登場が「予想よりも早かった」(キッズウェル・バイオの谷匡治社長)ことから、早急な方針転換につながった。

 同社はこれまで注力してきたバイオシミラー事業で安定的な収益を積み上げており、2022年度の黒字化を目標に掲げていた。比較的低額の投資でも研究開発が進められるとあって、増資への懸念も後退していた。そんな中での突然の方針転換に市場はショックを受けたということだろう。

 もっとも中期的な視点に立てば、同社が2025年度にバイオシミラーで売上高30億円、営業利益10億円を掲げているように、バイオシミラー事業だけでは大きな成長は期待できない。早晩、同社が新薬上市の可能性が見込めるSHEDへの投資を強化することは必至の情勢だったといえる。過去3年で研究開発を進め、SHEDを製造する体制が構築できたほか、アカデミアなどとの共同研究で有望な結果が得られていることもその判断を後押しした。KWB2.0では、2040年の細胞医薬の市場は他家・自家合わせて3.8兆円、そのうちSHEDの対象とする神経系・筋骨格系は7000億~8000億円という数字を示しており、市場性の高さを強調している。

 谷社長は5月13日に開催された決算説明会で、ストップ安となった株価について触れ、「成長投資に対して、日本の株式市場では嫌気されると改めて感じた。日本のバイオ企業の資金調達は米国に比べて2桁ほど規模感の差がある。日本では少ない資金で成長を求められるが、限界がある。幸い当社は独自性の高いSHEDを持っており、これを成長させる道筋が見えてきたので、その可能性に投資してもらえるファンを、海外に打って出て集めたい」と述べ、市場に理解を求めた。

アンジェス(365円、前週比+2.2%)

 5月11日、367円(前日比+9.6%)を付けた。米Eiger BioPharmaceuticals社との希少疾患治療薬「ゾキンヴィ」(ロナファルニブ)の日本における独占的ライセンスの獲得が発表され、上昇した。ゾキンヴィの対象は俗にいう早老症で、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群およびプロジェロイド・ラミノパチーという超希少疾患の治療に用いられる。

 両疾患の日本における患者数は数人程度とみられ、売上高も同社が2019年まで扱っていたムコ多糖症治療薬の「ナグラザイム」(ガルスルファーゼ)と同レベルの、年間数億円にとどまりそうだ。ただ、ゾキンヴィも遺伝性の希少疾患領域を強化する薬剤であり、同社がこの領域の基盤作りを進めていることをアピールする材料となった。アンジェスが2020年12月に買収した米EmendoBio社のゲノム編集治療の対象は遺伝性の希少疾患で、その進展に市場が関心を寄せている。

 Emendo社買収に関連してアンジェスは2021年から、アンジェスクリニカルリサーチラボラトリー(ACRL)を立ち上げ、希少疾患の拾い上げや確定診断を目的とした新生児のオプショナルスクリーニング(希少遺伝性疾患検査事業)を開始している。現時点ではポンペ病やムコ多糖症などの限られた疾患の検査しか実施していないが、そのラインアップに今回の両疾患も加わることになる。ACRLの位置づけは、アンジェスが今後ゲノム編集の治験を実施する上で必要な、患者のリクルート窓口という意味合いが大きい。アンジェスのパイプラインに早老症は今のところないが、検査を通じて各疾患領域のキーオピニオンリーダーとの関係を強化することにつながる。

ヘリオス(768円、前週比+6.1%)

 5月11日、801円(前日比+10.0%)を付けた。国立がん研究センターと、他家iPS細胞由来遺伝子編集NK細胞(eNK細胞、HLCN061)を用いた、がん免疫細胞療法に関する共同研究契約を締結したと発表した。これまで国立がん研究センターと実施してきた患者由来がん細胞での共同研究で、同社のHLCN061が標的にしやすい抗原が特定できたため、改めてPDXモデルマウスを用いてin vivoでの薬効を確認する研究に移行するという。

 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および脳梗塞に対する骨髄由来間葉系幹細胞(HLCM051)以外の主要パイプラインとして同社が打ち出しているのがHLCN061で、その研究の進展に期待した買いが膨らんだようだ。同社はHLCN061のIND申請を2024年度に設定しており、それに向けた前臨床試験の一部として今回の研究を進めていく方針だ。同社に関しては、脳梗塞急性期に対するHLCM051の第2/3相試験のトップラインデータ公表が5月にスケジュールされており、注目が高まる。

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順位社名株価(終値)騰落率
5月6日5月13日
1モダリス33542226.0%
2ファーマフーズ159417288.4%
3ヘリオス7247686.1%
4ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ5705883.2%
5アンジェス3573652.2%
6ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング5295361.3%
7プレシジョン・システム・サイエンス4264300.9%
8ペルセウスプロテオミクス3703730.8%
9シンバイオ製薬6826820.0%
10トランスジェニック388387-0.3%
11ステラファーマ503495-1.6%
12総医研ホールディングス300295-1.7%
13免疫生物研究所318312-1.9%
14ファンペップ208204-1.9%
15ステムリム723704-2.6%
16メドレックス113110-2.7%
17キャンバス182177-2.7%
18リボミック179174-2.8%
19カイオム・バイオサイエンス173168-2.9%
20オンコセラピー・サイエンス6563-3.1%
21フェニックスバイオ547529-3.3%
22デ・ウエスタン・セラピテクス研究所210203-3.3%
23DNAチップ研究所422407-3.6%
24テラ7875-3.8%
25メディネット5048-4.0%
26リプロセル212202-4.7%
27ラクオリア創薬775738-4.8%
28窪田製薬ホールディングス146139-4.8%
29ユーグレナ859815-5.1%
30ステムセル研究所41003880-5.4%
31セルシード157148-5.7%
32そーせいグループ12101140-5.8%
33ナノキャリア236222-5.9%
34タカラバイオ21201986-6.3%
35スリー・ディー・マトリックス342320-6.4%
36サンバイオ11501071-6.9%
37オンコリスバイオファーマ608565-7.1%
38メディシノバ334310-7.2%
39ソレイジア・ファーマ8377-7.2%
40ペプチドリーム19441793-7.8%
41ジーエヌアイグループ11081014-8.5%
42セルソース37553395-9.6%
43ブライトパス・バイオ9686-10.4%
44カルナバイオサイエンス993885-10.9%
45Delta-Fly Pharma1049932-11.2%
46クリングルファーマ629556-11.6%
47Green Earth Institute804703-12.6%
48レナサイエンス450393-12.7%
49サスメド1033874-15.4%
50キッズウェル・バイオ455358-21.3%