
日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年4月28日木曜日の終値が、前週の週末(4月22日)の終値に比べて上昇したのは12銘柄、不変だったのは2銘柄、下落したのは36銘柄だった。
この間、上昇率の第1位はペプチドリームで+9.0%だった。第2位はセルソースで+6.9%、第3位はステムリムで+4.3%と続いた。一方、下落率では大きい順にセルシードが-20.6%、レナサイエンスが-13.2%、メディシノバが-9.4%となっている。
ペプチドリーム(2102円、前週比+9.0%)
4月28日、パイプラインの臨床試験入りが発表された。米Bristol Myers Squibb(BMS)社とペプチドリームの共同研究で見いだされた医薬品候補化合物で、その詳細は明かされていない。ただ、同社の事業説明会や決算説明会での紹介の仕方から、PD-L1阻害薬かつ経口薬と推測される。2022年の臨床試験入りパイプラインの本数は2本目となり、同社が目標として公表していた「年2本~5本」はクリアした格好だ。また過去から含めると同社として5本目の臨床試験入りパイプラインとなった。
BMS社とペプチドリームは、過去の共同研究においてPD-L1阻害薬かつ注射薬のペプチドBMS-986189を見いだし、第1相臨床試験を実施、2016年12月に完了していた。今回臨床試験入りしたのは、「そのペプチドから派生した薬剤」との説明しかなされていない。また、試験の詳細もほとんど明かされておらず、英国拠点の臨床試験レジストリーであるISRCTNにおけるコードISRCTN17572332のみ紹介された。
ISRCTNによると、今回の薬剤の第1相試験は「情報開示の猶予に関する一定のクライテリアを達成しているため、詳細は非公開」となっている。情報は限られているが、健常人136人を対象に行われると記載されている。今回の薬剤が抗腫瘍薬として開発されるとすれば、健常人が対象となるのは抗腫瘍薬としては珍しく、また人数も多い印象だ。例えば、経口のがん免疫薬として期待されていたIDO阻害薬のepacadostatでは、第1相が固形腫瘍患者52人を対象に行われている。今回の試験がどのような対象疾患や試験デザインになっているのかが興味深い。被験者のリクルートは2022年4月28日に開始し、2023年10月11日に終了の予定だが、早まる可能性も十分にあるだろう。試験結果の報告は試験完了から30カ月後以内とあり、公表予定は2026年5月とも記載されている。
なお、今回の臨床試験入りによるマイルストーン収入は無い見込みだ。過去にBMS-986189が臨床試験入りしたことで、本プログラムに関しては支払い済みと解釈されるようだ。BMS-986189を改変したのはBMSである。同社も「業績に与える影響は軽微」としている。
本材料は市場で織り込み済みだったためか、発表では株価はほとんど動かず、28日の値動きは前日比+1.8%と小幅だった。ただ、BMS社の製剤化技術が必要だったとはいえ、ペプチドリームの技術をベースとした創薬の実現可能性を補強する材料となったのは確かだ。2022年の目標の最低ラインだった2本目の臨床入りを早期に果たしたことで、次の段階への期待も膨らむ。3本目としては、フランスのAmolyt社に導出した、先端巨大症向けの成長ホルモン受容体拮抗薬(GHRA)であるAZP-3813が有望視される。年間最大5本の目標に向かって臨床入りが続けば、2000円前後で低迷を続ける株価も上向きそうだ。
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(520円、前週比-3.0%)
4月27日に、一時637円(前日比+18.4%)まで急騰した。同日、同社(J-TEC)の新たな再生医療等製品の候補である自家培養表皮「ACE02」について、安定期の白斑(尋常性白斑またはまだら症)を対象に、厚生労働省に製造販売承認の申請を行ったと発表したことが材料となった。ただし急騰は一時的で、27日は前日よりもマイナスで引けた。
この製品は同社の既存製品である自家培養表皮「ジェイス」と同様の製品で、違いは表皮に色素細胞(メラノサイト)が含まれる点にある。基本的にはジェイスと同じく、米Harvard Medical SchoolのHoward Green教授らによって確立された細胞培養技術によって作られるが、メラノサイトが保持されるような培養方法で作製される。既に一部のクリニックでは自由診療において使用されており、安全性などにおいて懸念は少なく、上市の確度は高いと考えられる。
この製品はJ-TECの成長戦略において重要なポジションを担っている。尋常性白斑は国内の患者数が15万人とされ、まだら症も2万~10万人に1人(国内で数千人規模)とされ、ジェイスよりも格段に大きい。ジェイスの対象である重症熱傷が年間2000人~3000人で、熱傷面積が30%以上(ジェイスの適応)の患者は2割程度(東京都熱傷救急連絡協議会の過去データ)であると仮定すると、ジェイスの市場規模は500人前後とみられる。そうするとACE02の市場規模はジェイスの300倍以上にもおよぶ。ジェイスの2022年3月期の売上高は表皮水疱症への使用なども含めて約10億円だ。
もちろん、安定期の白斑のうち、他の治療法を実施して効果が無い難治性の患者が対象となると予想される他、顔や皮膚の露出頻度が高い部位などに保険適用が限定される可能性も考えられなくはない。そうした承認の条件によって対象患者数は大幅に変動するものの、ジェイスをはじめとする同社の既存製品の対象患者数に比べ、桁がかなり異なってくると想定される。保険償還価格もそれに伴いジェイスに比べて低下すると考えられるが、最終的に年間数十億円の売上高を目指す製品になりそうだ。
同社は2021年5月に策定した中期経営計画で、2026年3月期の売上高目標を50億円としている。その中核を担う製品がACE02で、2024年3月期の上市を目指している。
セルソース(3860円、前週比+6.9%)
前週のエクソソーム美容クリームに引き続き、化粧品関連の発表があり、買われた。4月25日の引け後、同社の「ヒト幹細胞順化培養液」が、高シェアの美容液シリーズの新製品に原料として採用されたと発表され、前週のYouTuberとのコラボが引き金となった上昇トレンドを下支えした格好だ。しかし、7連騰の反動のためか、28日はストップ安(3860円、前日比-15.4%)を記録し、週間の上げ幅ではバイオ関連の全50銘柄中、2位に落ち着いている。

順位 | 社名 | 株価(終値) | 騰落率 | |
---|---|---|---|---|
4月22日 | 4月28日 | |||
1 | ペプチドリーム | 1929 | 2102 | 9.0% |
2 | セルソース | 3610 | 3860 | 6.9% |
3 | ステムリム | 705 | 735 | 4.3% |
4 | デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | 207 | 213 | 2.9% |
5 | ステムセル研究所 | 3890 | 4000 | 2.8% |
6 | フェニックスバイオ | 525 | 535 | 1.9% |
7 | そーせいグループ | 1257 | 1277 | 1.6% |
8 | モダリス | 323 | 327 | 1.2% |
9 | オンコリスバイオファーマ | 600 | 605 | 0.8% |
10 | キャンバス | 179 | 180 | 0.6% |
11 | ファーマフーズ | 1723 | 1729 | 0.3% |
12 | アンジェス | 365 | 366 | 0.3% |
13 | メディネット | 51 | 51 | 0.0% |
14 | オンコセラピー・サイエンス | 67 | 67 | 0.0% |
15 | ステラファーマ | 522 | 520 | -0.4% |
16 | キッズウェル・バイオ | 469 | 467 | -0.4% |
17 | シンバイオ製薬 | 689 | 686 | -0.4% |
18 | ペルセウスプロテオミクス | 376 | 374 | -0.5% |
19 | 免疫生物研究所 | 318 | 316 | -0.6% |
20 | ラクオリア創薬 | 775 | 768 | -0.9% |
21 | ブライトパス・バイオ | 98 | 97 | -1.0% |
22 | クリングルファーマ | 658 | 651 | -1.1% |
23 | ソレイジア・ファーマ | 88 | 87 | -1.1% |
24 | スリー・ディー・マトリックス | 350 | 346 | -1.1% |
25 | テラ | 80 | 79 | -1.3% |
26 | サンバイオ | 1129 | 1112 | -1.5% |
27 | 総医研ホールディングス | 312 | 307 | -1.6% |
28 | サスメド | 1079 | 1058 | -1.9% |
29 | 窪田製薬ホールディングス | 152 | 149 | -2.0% |
30 | リボミック | 188 | 184 | -2.1% |
31 | プレシジョン・システム・サイエンス | 438 | 428 | -2.3% |
32 | ファンペップ | 216 | 210 | -2.8% |
33 | タカラバイオ | 2157 | 2096 | -2.8% |
34 | ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング | 536 | 520 | -3.0% |
35 | カルナバイオサイエンス | 1024 | 991 | -3.2% |
36 | メドレックス | 118 | 114 | -3.4% |
37 | トランスジェニック | 411 | 397 | -3.4% |
38 | ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ | 604 | 582 | -3.6% |
39 | リプロセル | 219 | 211 | -3.7% |
40 | ヘリオス | 779 | 746 | -4.2% |
41 | カイオム・バイオサイエンス | 180 | 172 | -4.4% |
42 | DNAチップ研究所 | 452 | 430 | -4.9% |
43 | ユーグレナ | 910 | 862 | -5.3% |
44 | ジーエヌアイグループ | 1221 | 1150 | -5.8% |
45 | Delta-Fly Pharma | 1207 | 1126 | -6.7% |
46 | ナノキャリア | 261 | 243 | -6.9% |
47 | Green Earth Institute | 888 | 823 | -7.3% |
48 | メディシノバ | 385 | 349 | -9.4% |
49 | レナサイエンス | 476 | 413 | -13.2% |
50 | セルシード | 199 | 158 | -20.6% |