
日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年4月22日金曜日の終値が、前週の週末(4月15日)の終値に比べて上昇したのは7銘柄、下落したのは43銘柄だった。
この間、上昇率の第1位はセルシードで+41.1%だった。第2位はレナサイエンスで+15.3%、第3位はセルソースで+14.8%と続いた。一方、下落率では大きい順にメディネットが-12.1%、モダリスが-11.5%、ペプチドリームが-10.9%となっている。
セルソース(3610円、前週比+14.8%)
4月20日から22日にかけて連騰した。19日の引け後、人気YouTuberのヒカルとコラボすると発表されたのが要因とみられる。ヒカルはトップクラスのチャンネル登録者数(474万人)を誇るYouTuberで、各方面への影響力が大きい。企業とのコラボ商品も数多く手掛けており、インフルエンサーとしてPR効果の高さが注目されている。そのヒカルとセルソースが組み、セルソースが開発した間葉系幹細胞由来エクソソームを配合した美容クリームをヒカルがプロデュースするブランドでリリースし、4月25日に発売するとアナウンスされた。
19日に配信されたヒカルの動画によると、ヒカルは肌の乾燥やアトピー性皮膚炎に悩んだ時期があり、美容医療で「総額300万円から400万円」(ヒカル)かけてエクソソームを肌に打ち込み、きれいな肌になったことを実感したことから、エクソソームの良さを広めたいと考え、セルソースにコラボを持ちかけたという。高額な美容医療を受けられる人は限られるが、美容クリームなら誰でも手が届く。そう考え、エクソソームを含有する化粧品を開発できる企業としてセルソースが選ばれたようだ。
ヒカル自身の体験を基にPRされており、エクソソームを知らない層にも訴求力は高そうだ。もっとも、美容医療のエクソソームと同等の効果が得られるかはまだ分からないが、セルソースによれば「今回の話を先方からいただく前から、当社としてもエクソソーム配合の化粧品への応用を進めており、比較的スムーズに話がまとまった」という。動画の視聴数は、わずか2日で100万回を超えた。ヒカルのYouTubeチャンネルで該当動画がトップに固定されていることも要因だろう。製品の美肌効果はともかく、「エクソソーム」のワードが広まることはバイオ業界にとってプラスではないか。製品は税込みで1万1000円と決して安くないが、ヒカルの視聴者層にどれだけ浸透するか、またそれが続くのかといった点は、業界としても関心を持たれそうだ。
セルソースの2021年10月期の売上高29億円のうち、「化粧品その他」の売上高は1億3000万円程度。以前は4億円を超えていた時期もあり、また主力の細胞加工受託の伸び悩みも見られる点からすると、化粧品事業のテコ入れの必要性は高まっていたといえる。この分野は当たれば大きな売上高が見込まれる。2022年10月期の上半期業績は6月に発表される予定だが、その時にどれだけの原薬供給がなされたか、あるいはヒカルのページでどれだけ「お知らせ登録」があったかなどの点に、投資家の注目が集まりそうだ。
セルシード(199円、前週比+41.1%)
4月22日に199円(前日比+33.6%)を付け、ストップ高となった。同社が日本で出願していた軟骨再生シートに関する特許が成立したことが明らかとなり、材料視されたようだ。同社は東海大学医学部整形外科学の佐藤正人教授と、他家軟骨細胞シートの共同研究を行っており、その技術が特許化された。軟骨細胞シートは変形性膝関節症の治療に用いられる。患者数が非常に多いため、実用化すれば市場が大きいとして期待される。セルシードでは、多指(趾)症患者から採取した軟骨組織を基に作成する軟骨細胞シートで、2022年末の治験届提出を目指しているという。
軟骨の再生医療としてはジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)の自家培養軟骨「ジャック」(ヒト[自己]軟骨由来組織)があるが、セルシードの治験では他家細胞を用いるため、利便性が高い、費用が安価で済むなどの点で優位だ。
ただ、他家細胞を用いる製品でも、競合企業の開発が先行する。韓国で他家さい帯血由来間葉系幹細胞「Cartistem」が2012年に承認されており、変形性膝関節症の治療が行われている。製造販売する韓国Medipost社の売上高は約30億円(2019年)。日本の市場は韓国の最大10倍程度と考えられ、その市場参入に向けてMedipost社は日本でCartistemの臨床試験を実施している。Cartistemは関節の軟骨として機能する硝子様軟骨の再生が可能で、使用実績も2万例以上ある。セルシードの技術は追いかける形となり、いかに優位性を示せるかがポイントになりそうだ。
レナサイエンス(476円、前週比+15.3%)
4月21日に490円(前日比+19.5%)でストップ高となった。4月20日に、日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクト採択結果が発表され、その中に同社の糖尿病治療支援システム(開発コードRSAI003)が助成金を得られることになったことが材料視された。レナサイエンスは東北大学および日本電気(NEC)と共同でこの研究を進めている。事業の期間は3年間で、今期は5200万円程度が助成される。この事業では助成金を用いて、RSAI003の薬事承認を目指した臨床研究を実施するとされており、パイプラインの進展と解釈されて買われたようだ。
RSAI003は、糖尿病患者のインスリン投与量を予測する人工知能(AI)をコア技術とする糖尿病治療支援システムだ。糖尿病の治療は、経口薬だけでもSU薬からDPP4阻害薬、SGLT2阻害薬、それらの配合薬に至るまで10種類以上あり、それぞれ特徴が異なる複数の成分に分かれる。また注射薬も作用時間の異なるインスリンやGLP1アナログなどの使い分けがある。さらに厳格な治療を行うと低血糖を来す可能性があり、最適な治療薬を選択するに当たり専門医以外の医師の負担が大きい。RSAI003はAIを用いてこうした治療薬の最適化をサポートするシステムを目指している。
もっとも、臨床の現場では低血糖リスクが低いDPP4阻害薬やSGLT2阻害薬などが使用されるケースが多く、厳格な管理や併用薬の調整を要する患者の数は限定的だ。今回は、特に低血糖リスクが高いインスリンの投与量調整に関するAIを開発するという。患者の血糖値や状態などからインスリン投与量を予測する。糖尿病患者の入院管理や、インスリンの導入時などに使用されることになりそうだ。

順位 | 社名 | 株価(終値) | 騰落率 | |
---|---|---|---|---|
4月15日 | 4月22日 | |||
1 | セルシード | 141 | 199 | 41.1% |
2 | レナサイエンス | 413 | 476 | 15.3% |
3 | セルソース | 3145 | 3610 | 14.8% |
4 | フェニックスバイオ | 514 | 525 | 2.1% |
5 | ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ | 595 | 604 | 1.5% |
6 | ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング | 531 | 536 | 0.9% |
7 | ペルセウスプロテオミクス | 373 | 376 | 0.8% |
8 | DNAチップ研究所 | 453 | 452 | -0.2% |
9 | ユーグレナ | 913 | 910 | -0.3% |
10 | トランスジェニック | 414 | 411 | -0.7% |
11 | Delta-Fly Pharma | 1217 | 1207 | -0.8% |
12 | メディシノバ | 389 | 385 | -1.0% |
13 | 免疫生物研究所 | 322 | 318 | -1.2% |
14 | 窪田製薬ホールディングス | 154 | 152 | -1.3% |
15 | ファンペップ | 219 | 216 | -1.4% |
16 | プレシジョン・システム・サイエンス | 445 | 438 | -1.6% |
17 | キッズウェル・バイオ | 477 | 469 | -1.7% |
18 | デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | 211 | 207 | -1.9% |
19 | キャンバス | 183 | 179 | -2.2% |
20 | ソレイジア・ファーマ | 90 | 88 | -2.2% |
21 | サンバイオ | 1161 | 1129 | -2.8% |
22 | ブライトパス・バイオ | 101 | 98 | -3.0% |
23 | リプロセル | 226 | 219 | -3.1% |
24 | カイオム・バイオサイエンス | 186 | 180 | -3.2% |
25 | タカラバイオ | 2229 | 2157 | -3.2% |
26 | 総医研ホールディングス | 323 | 312 | -3.4% |
27 | ナノキャリア | 271 | 261 | -3.7% |
28 | カルナバイオサイエンス | 1067 | 1024 | -4.0% |
29 | シンバイオ製薬 | 718 | 689 | -4.0% |
30 | オンコセラピー・サイエンス | 70 | 67 | -4.3% |
31 | メドレックス | 124 | 118 | -4.8% |
32 | ステムセル研究所 | 4105 | 3890 | -5.2% |
33 | ステムリム | 745 | 705 | -5.4% |
34 | スリー・ディー・マトリックス | 371 | 350 | -5.7% |
35 | クリングルファーマ | 698 | 658 | -5.7% |
36 | ラクオリア創薬 | 823 | 775 | -5.8% |
37 | アンジェス | 388 | 365 | -5.9% |
38 | ジーエヌアイグループ | 1305 | 1221 | -6.4% |
39 | テラ | 86 | 80 | -7.0% |
40 | Green Earth Institute | 955 | 888 | -7.0% |
41 | リボミック | 203 | 188 | -7.4% |
42 | そーせいグループ | 1360 | 1257 | -7.6% |
43 | オンコリスバイオファーマ | 651 | 600 | -7.8% |
44 | ヘリオス | 849 | 779 | -8.2% |
45 | ステラファーマ | 570 | 522 | -8.4% |
46 | ファーマフーズ | 1891 | 1723 | -8.9% |
47 | サスメド | 1187 | 1079 | -9.1% |
48 | ペプチドリーム | 2165 | 1929 | -10.9% |
49 | モダリス | 365 | 323 | -11.5% |
50 | メディネット | 58 | 51 | -12.1% |