
日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年1月14日金曜日の終値が、前週の週末(1月7日)の終値に比べて上昇したのは24銘柄、不変だったのは1銘柄、下落したのは25銘柄だった。
この間、上昇率の第1位はキャンバスで+29.9%だった。第2位はGreen Earth Instituteで+28.5%、第3位はステラファーマで+21.7%と続いた。一方、下落率では大きい順にレナサイエンスが-10.8%、モダリスが-9.7%、ペルセウスプロテオミクスが-8.3%となっている。
Green Earth Institute(1597円、前週比+28.5%)
1月14日の終値は1597円(前日比-8.2%)となった。2021年12月24日にマザーズ市場へ新規上場した際の初値1160円から37.7%高い状態にある。上場から3週間経過したが1日の出来高は500万株前後に達し、高い流動性を保持した状態が続く。その間、株価は10%以上の乱高下を繰り返しながら推移しており、バイオスタートアップの中でひときわ目立つ存在だ。
同社は、公益財団法人の地球環境産業技術研究機構(RITE)の技術を基に設立されたスタートアップだ。バイオリファイナリー技術を活用してバイオマス原料からバイオ化学品を開発、商用化することを事業としており、グリーンバイオにカテゴライズされる。脱炭素や持続可能な開発目標(SDGs)のキーワードに関連する銘柄としても大きく注目を浴びており、人気が続いている理由の1つだろう。
国内では今のところ、他に目立ったライバルがいないのは強みだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受けて、16製品以上のバイオ製品の開発・事業化を目指すプロジェクトが始まっているが、最大6年間で54億円の予算が付いた。うち約20億円は建屋などの整備に使われるため売上高に計上されない見込みだが、それでも年平均で数億円となるプロジェクトを複数年で受託しているのは大きい。2022年9月期の売上高は8億4200万円(前年同期比+67.7%)、営業利益300万円で黒字化を予想しているのも好材料だ。
事業の成長性については、2021年9月時点で78本(ライセンス導出型73本、自社販売型5本)のパイプラインを保有している。ライセンス導出型のパイプラインから得られる収入は1本につき、研究開発収入が5000万円以上、ライセンス一時金が5000万円以上、アドバイザリー収入が200万円以上、ロイヤルティーが3%以上というイメージだ。
ライセンス導出型のうち、19本はスケールアップが終わった商用可段階(Stage3)まで進んでおり、パイロットテスト、量産プラント立ち上げ、製造販売といったところにある。研究開発からライセンスまでは2年前後のスパンだが、ロイヤルティーは特許保護期間に基づき20年以上にわたり入ってくることが見込まれるため、製品開発が進めばそれらが真水の利益として積み上がり業績に寄与する。
また、自社販売製品としては消毒液および化粧品向けのエタノールを2本実用化している。その他、衣料品のセルロースから得られた糖をGreen Earth Iinstituteがコリネ菌で発酵し、得られたイソブタノールからバイオジェット燃料が製造され、2021年2月に日本航空のフライトに使用された。こうした話題性のあるニュースも、SDGsがらみで定期的に見込まれそうだ。
サスメド(1852円、前週比-5.0%)
サスメドも、Green Earth instituteと同じく2021年12月24日にマザーズ市場へ新規上場した企業で、初値1500円に対して1月14日の終値は1852円と、23.5%高い状態にあり好調なスタートを切ったと言える。出来高が100万株を下回る日が続いており、上場直後から続く荒い値動きは落ち着いていきそうだ。
同社はデジタルセラピューティクス(DTx)関連のスタートアップで、2021年11月現在で8本の治療用・診断用DTxの開発を手掛けている。このうち最も開発が進んでいるのは不眠治療用アプリ「yukumi(仮)」で、認知行動療法による不眠の改善を促す効果がある。国内臨床試験では主要評価項目を達成しており、2022年2月をめどに医療機器として承認申請する予定だ。順調に審査が進めば2023年に販売を開始できると同社ではみている。
収益モデルは、アプリが保険医療として認められることを前提に、医療機関に支払われる不眠治療関連の診療報酬から、アプリの処方数に応じた料金を医療機関から受け取る形を想定している。同社によれば、不眠治療アプリの市場規模を、既存のうつ病に対する認知行動療法と同額の1万9200円という価格で試算した結果、既存患者からの切り替えで192億円、未治療患者の掘り起こしで216億円となり、合計で年400億円以上に上るという。
この他、乳がん患者運動療法で70億円、がん患者の終末期ケアで277億円、腎臓リハビリテーションで660億円の市場規模を算出しており、さらに海外での展開も視野に入れている。同社にとってまずは、2022年2月の不眠症治療用アプリの承認申請が大きなイベントになる他、他のアプリの開発状況がポイントとなる。また、既に保険点数が決まっているCureAppの禁煙治療用アプリの売り上げの推移などが、同社の株価に影響していくとみられる。
キャンバス(239円、前週比+29.9%)
1月14日に239円(前日比+26.5%)を付け、ストップ高となった。直近で何らかの材料が出たわけではないが、1月7日の同社リリースが引き金になったと考えられる。同社は2021年9月29日に発行した新株予約権付社債を買い戻すことを公表した。これにより潜在株式数が減少し、株式の希薄化が改善するため、実質的に自社株買いと同じく株価対策となり、買われたようだ。発表は7日だが、市場が遅れて反応したのは同社株の時価総額が20億円未満と小さく、投資家からの注目度が低かったためだろう。
買い戻した金額は約3億8000万円で、これにより潜在株式数の17.9%、発行済株式数の15.2%に相当する量の希薄化が無くなった。現状の発行済株式数のみから計算すれば理論上は17%程度の株価上昇、潜在株式数も合わせればその半分になるが、それ以上の値上がりを見せた背景には、最近の同社のIR姿勢の変化があると考えられる。
同社は2021年12月24日に、「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」を公表している。同社は今春からの市場再編に伴う上場先としてグロース市場を選択しているが、上場維持基準の「40億円以上」に抵触する。その要因として未行使・未転換の潜在株式数が保守的に算入され、分母が課題に想定されていることを掲げており、その対策を打つためのIRを実施すると明言していた。簡単に言えば株価対策を宣言していることになり、その第1段として実施されたのが今回の社債買い戻しというわけだ。
この他にも、臨床試験の進捗や成功率などについて、詳細にブログで解説し、投資家の理解を深めようと試みている。こうした変化と今後の株価対策への期待が、大幅な上昇を見せた要因になっていると考えられる。
順位 | 社名 | 株価(終値) | 騰落率 | |
---|---|---|---|---|
1月7日 | 1月14日 | |||
1 | キャンバス | 184 | 239 | 29.9% |
2 | Green Earth Institute | 1243 | 1597 | 28.5% |
3 | ステラファーマ | 760 | 925 | 21.7% |
4 | ブライトパス・バイオ | 106 | 118 | 11.3% |
5 | スリー・ディー・マトリックス | 520 | 574 | 10.4% |
6 | サンバイオ | 1179 | 1300 | 10.3% |
7 | クリングルファーマ | 652 | 702 | 7.7% |
8 | Delta-Fly Pharma | 1436 | 1520 | 5.8% |
9 | プレシジョン・システム・サイエンス | 470 | 491 | 4.5% |
10 | 窪田製薬ホールディングス | 145 | 151 | 4.1% |
11 | シンバイオ製薬 | 1041 | 1076 | 3.4% |
12 | キッズウェル・バイオ | 452 | 467 | 3.3% |
13 | オンコリスバイオファーマ | 518 | 535 | 3.3% |
14 | ペプチドリーム | 2304 | 2373 | 3.0% |
15 | オンコセラピー・サイエンス | 67 | 69 | 3.0% |
16 | ソレイジア・ファーマ | 101 | 104 | 3.0% |
17 | セルソース | 4575 | 4680 | 2.3% |
18 | ジーエヌアイグループ | 1375 | 1402 | 2.0% |
19 | デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 | 211 | 215 | 1.9% |
20 | ナノキャリア | 250 | 254 | 1.6% |
21 | ラクオリア創薬 | 1109 | 1123 | 1.3% |
22 | カイオム・バイオサイエンス | 167 | 169 | 1.2% |
23 | リプロセル | 222 | 223 | 0.5% |
24 | DNAチップ研究所 | 428 | 429 | 0.2% |
25 | アンジェス | 347 | 347 | 0.0% |
26 | 免疫生物研究所 | 351 | 350 | -0.3% |
27 | ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ | 591 | 589 | -0.3% |
28 | ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング | 539 | 536 | -0.6% |
29 | ユーグレナ | 685 | 681 | -0.6% |
30 | そーせいグループ | 1724 | 1712 | -0.7% |
31 | カルナバイオサイエンス | 1081 | 1066 | -1.4% |
32 | ファンペップ | 237 | 233 | -1.7% |
33 | ヘリオス | 1210 | 1188 | -1.8% |
34 | リボミック | 270 | 265 | -1.9% |
35 | フェニックスバイオ | 506 | 496 | -2.0% |
36 | テラ | 99 | 97 | -2.0% |
37 | メディネット | 49 | 48 | -2.0% |
38 | ファーマフーズ | 2028 | 1981 | -2.3% |
39 | メドレックス | 118 | 115 | -2.5% |
40 | メディシノバ | 313 | 305 | -2.6% |
41 | ステムリム | 844 | 822 | -2.6% |
42 | ステムセル研究所 | 3800 | 3695 | -2.8% |
43 | セルシード | 173 | 168 | -2.9% |
44 | タカラバイオ | 2588 | 2493 | -3.7% |
45 | 総医研ホールディングス | 291 | 279 | -4.1% |
46 | サスメド | 1950 | 1852 | -5.0% |
47 | トランスジェニック | 451 | 427 | -5.3% |
48 | ペルセウスプロテオミクス | 398 | 365 | -8.3% |
49 | モダリス | 528 | 477 | -9.7% |
50 | レナサイエンス | 600 | 535 | -10.8% |