日本の株式市場に上場するバイオスタートアップの株価を週ごとにウォッチしていく「バイオベンチャー株価週報」。2022年1月7日金曜日の終値が、前週の週末(2021年12月30日)の終値に比べて上昇したのは6銘柄、下落したのは44銘柄だった。

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 この間、上昇率の第1位はサンバイオで+17.1%だった。第2位は免疫生物研究所で+3.2%、第3位はキャンバスで+2.2%と続いた。一方、下落率では大きい順にリボミックが-34.3%、Green Earth instituteが-32.8%、ステムセル研究所が-20.2%となっている。

リボミック(270円、前週比-34.3%)

 同社が米国で加齢黄斑変性を対象に開発を進めている抗FGF2核酸アプタマーのRBM-007について、第2相臨床試験であるTOFU試験のトップラインデ―タが12月28日の引け後に発表された。その内容は、RBM-007単独療法、RBM-007+アイリーアの併用療法ともに、アイリーア単独療法に比べて主要評価項目である視力の改善効果が見られなかったというものだった。

 これを受け、翌日の29日から同社株の売りが殺到し、30日もストップ安のまま大納会を迎えて年を越した。2022年1月4日の大発会でも値下がりは続き、1月6日にようやく下げ止まったものの、直近のピーク時株価900円前後に対して約70%も値下がりしている。痛手を被った投資家も多いとみられ、波乱の新年となった。

 本件がバイオセクターに与えたネガティブな影響は大きい。RBM-007のTOFU試験に対する成功への期待は大きく、それは会社からのポジティブな発表が続いていたからだ。2021年9月に米国網膜学会で、ブラインドデータながら7割の患者で視力の安定または改善が見られたことを公表し、11月の上期決算説明会では、2022年3月の予定だった結果発表を前倒しして、世界的イベントであるJ.P. Morgan Annual Healthcare Conferenceに設定したこと、メガファーマを含めた国内外の製薬企業から問い合わせや提携の打診を受けていたことなどを説明した。その結果、株価は11月19日に370円だったのが、前述のように一時900円近くまで上昇した。

 今回、その期待が一気にしぼんだことで売りが殺到し、連日のストップ安を演じた。会社の発表内容から試験成功の可能性を信じた投資家も多かったことだろう。それが主要評価項目未達となり、また実データが公開されていないことから、同社に対してはIR方針に対する不満の声も寄せられているようだ。もっとも、バイオスタートアップの経営者としては、許される範囲内で自社への期待を高める努力も求められる。リボミックも虚偽のIRを発出したわけではなく、その内容が適切か否かの線引きは難しいだろう。

 関連して、7割の患者で視力の安定または改善が見られたにもかかわらず、試験でアイリーアと比較して優越性を示せなかったことに対する疑問の声も上がりそうだ。この点、リボミックはこれまでTOFU試験について「標準治療の抗VEGF薬が奏功しない加齢黄斑変性患者が対象」と説明しているが、これは主要評価項目である「視力低下」が収まらない患者ではなく、「網膜における滲出」が収まらない患者である点に注意を要する。1つの捉え方として、視力低下と網膜の滲出は必ずしもイコールではなく、このためアイリーア群には視力が安定している患者も一定数存在する可能性がある。そうなれば「視力が安定または改善が7割」というデータも納得がいく。だが、こうした点に関する説明が不足していた感は否めない。

 一方、TOFU試験の結果は、現段階では必ずしも失敗とは言い切れない。当初からこの試験の目標は3段構えであり、ベストシナリオはアイリーアに対して優越性を示すこと(第一選択薬としての有用性)だったが、これはもともと非常にチャレンジングな目標だった。次点としてアイリーア+RBM-007の併用がアイリーアに対して優越性を示すこと(アイリーア併用薬としての有用性)、次々点としてアイリーアとの非劣性を示すこと(アイリーア以降の第二選択薬としての有用性)も想定していた。

 中村社長は2019年11月の第2四半期決算説明会で、TOFU試験について「単剤がアイリーアに対して非劣性であっても、アイリーアが効かない患者さんに別の作用機序を持つ薬剤が提供されるということは、その患者さんにとって大きな福音となり得ると米国臨床医から意見をもらっています。当然ながら、単剤比較で非劣性でも、アイリーアとの併用で優越性が示されることを期待しています」と語っている。

 この点に関して、TOFU試験の副次評価項目を含めたデータが発表されていない現時点ではいずれも推測の域を出ないが、ベストシナリオも次点のシナリオも、今回のTOFU試験結果からは難しいのかもしれない。ただ次々点のシナリオの、RBM-007がアイリーア無効時の第二選択薬としてのポジションに落ち着く可能性は残っているとの解釈はできそうだ。

 また、これも複雑だが、12月28日の発表では未治療の加齢黄斑変性の患者を対象としたTEMPURA試験(医師主導治験)の状況も同時に報告され、そこでは視力と網膜組織構造の改善が認められたとしている。この試験結果次第では、RBM-007をアイリーアよりも前段階に使う1次治療薬として開発していく道も見えてくる。そこまでの逆転劇が起きるかは分からないが、網膜の瘢痕形成抑止効果も含め、まだRBM-007への結論は出ていないと言えそうだ。

 直近のイベントはもちろん1月10日のJ.P. Morgan Annual Healthcare Conferenceで、リボミックがどのような発表をするかがポイントだ。同社は「基本的に、12月28日に発表した内容以上の新たなデータは出ない予定だ」としているが、TOFU試験の結果をどう解釈すべきかという点について中村社長が言及すると思われ、注目が集まる。

そーせいグループ(1724円、前週比-9.5%)

 1月7日に1724円(前日比-0.7%)を付け、1月6日に好材料となる発表があったにもかかわらず続落した。そーせいグループは2021年11月に米Neurocrine Biosciences社に対してムスカリン作動薬のライセンス契約を果たし、株価は急騰したが、その後値下がりが続き、今週の大幅な下落でその発表前の水準に戻ってしまった。

 そーせいは6日、米Google社系の米Verily Life Sciences社と研究開発で提携すると発表した。Verily社は免疫細胞で重要な役割を果たすG蛋白質共役受容体(GPCR)を探索するためのデータ解析技術を持っており、そーせいにとって、免疫系が関与する疾患の治療薬ターゲットを獲得する手段が増えた。そーせいはVerily社が見いだしたGPCRの構造を解析して適切な化合物を創製すれば、新薬候補が得られる。導出などによる製品化を目指し、収益が上がった場合にはVerily社との間で50:50の割合で折半される予定だ。

 そーせいは既知のGPCRターゲットに対して薬剤を創製する技術もアライアンスもあるが、機能未知の新たなGPCRターゲット探索には基礎研究の積み重ねが必要で、同社だけでは難しい。今回のアライアンスで新たなターゲット探索が進むと期待される。なお、そーせいはターゲット探索の手段として2021年7月に米InveniAI社と提携しており、今回は2社目となる。ただ、InveniAI社は文献情報を基に探索するプラットフォームであるのに対し、Verily社は自社ラボを持ちヒトの検体から免疫細胞を得て解析を行っている点で高いアドバンテージがある。

 Verily社は、AIやディープラーニングなどによって構築した「Immuno Profiler」という解析技術で、豊富な情報量から適切なGPCRを標的化できると期待される。まだ創薬に結びついた実績は無いものの企業アライアンスは多く、製薬企業では米Gilead Sciences社、米Pfizer社、米Allergan社、英GlaxoSmithKline社、日本企業では大塚製薬などが提携関係にある。

 このような好材料があったにもかかわらず大幅下落となったのは、地合いの悪さや材料出尽くし感など様々な要因が考えられる。ある市場関係者は「マザーズ指数に連動して空売りを仕掛ける機関投資家の動きもあり、流動性の高い株式の下落が目立つ」と話す。それを裏付けるように、バイオセクターの代表的銘柄であるペプチドリームも特に悪材料が見られない中で、株価は1月7日に2304円(前日比-4.8%)で引け、2017年4月以来の時価総額3000億円割れとなった。

 バイオセクターは2021年後半から続く下降トレンドを維持する形で新年を迎えたが、2021年末に上場したアプリ開発企業のサスメド、SDG関連となるバイオプロセス開発企業のGreen Earth instituteはそれぞれ初値を上回って推移しており、取り引きも活発だ。2022年は、各企業の事業進展により市況が好転することを期待したい。

順位社名株価(終値)騰落率
12月30日1月7日
1サンバイオ1007117917.1%
2免疫生物研究所3403513.2%
3キャンバス1801842.2%
4テラ97992.1%
5ペルセウスプロテオミクス3973980.3%
6トランスジェニック4504510.2%
7フェニックスバイオ508506-0.4%
8メディシノバ315313-0.6%
9スリー・ディー・マトリックス524520-0.8%
10オンコリスバイオファーマ528518-1.9%
11カルナバイオサイエンス11021081-1.9%
12メディネット5049-2.0%
13タカラバイオ26442588-2.1%
14デ・ウエスタン・セラピテクス研究所216211-2.3%
15窪田製薬ホールディングス149145-2.7%
16プレシジョン・システム・サイエンス485470-3.1%
17Delta-Fly Pharma14871436-3.4%
18ユーグレナ710685-3.5%
19ファーマフーズ21152028-4.1%
20クリングルファーマ680652-4.1%
21ステムリム881844-4.2%
22ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング566539-4.8%
23ブライトパス・バイオ112106-5.4%
24ラクオリア創薬11741109-5.5%
25ソレイジア・ファーマ107101-5.6%
26ヘリオス12831210-5.7%
27リプロセル236222-5.9%
28セルシード184173-6.0%
29ナノキャリア268250-6.7%
30オンコセラピー・サイエンス7267-6.9%
31ジーエヌアイグループ14811375-7.2%
32DNAチップ研究所461428-7.2%
33サスメド21151950-7.8%
34メドレックス128118-7.8%
35総医研ホールディングス317291-8.2%
36キッズウェル・バイオ493452-8.3%
37ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ645591-8.4%
38シンバイオ製薬11451041-9.1%
39そーせいグループ19041724-9.5%
40ペプチドリーム25452304-9.5%
41アンジェス384347-9.6%
42レナサイエンス683600-12.2%
43ファンペップ274237-13.5%
44モダリス613528-13.9%
45カイオム・バイオサイエンス195167-14.4%
46セルソース54304575-15.7%
47ステラファーマ920760-17.4%
48ステムセル研究所47603800-20.2%
49Green Earth institute18501243-32.8%
50リボミック411270-34.3%