皆さん、お元気ですか。

 前回のメールでもお知らせしましたが、我が国の富士フイルム富山化学が創製したRNAポリメラーゼ阻害薬「アビガン」(インフルエンザ治療薬として我が国で認可)の新型コロナウイルスに対する治療効果の臨床試験結果が正式に再掲載されました。これによると、HIVプロテアーゼ阻害薬「カレトラ」の投与群に比べて、7日もウイルスの消失が早く、肺炎も9割以上の患者で軽快していました。有望な結果です。もちろん、最終的な結果は富士フイルム富山化学が展開する第3相臨床試験の結果を待たなくてはなりません。しかし、中国では既に、新型コロナウイルスに対する治療ガイダンスに掲載されて治療に使われています。また、我が国でも緊急使用の臨床研究や観察研究として使用され、好感触を得ているようです。期待が高まってまいりました。ウイルスの増殖を抑制できるとすると、死亡者や重症化の抑制を通じて、医療崩壊を防止することが可能です。また、医療従事者などの感染予防薬としての使用も拡大すると期待しております。まだ出口が見えない流行に一縷(いちる)の光明です。治療効果が確実になり、適応拡大が認められれば、新型コロナウイルスによる経済の縮小にも歯止めがかかるはずです。生殖細胞に対する毒性が動物実験で報告されたため、妊婦や子供が欲しい男性患者に対する使用は制約を受けることになることも忘れてはなりません。
◎参考記事・リンク
https://twitter.com/miyatamitsuru/status/1252068198909800448
https://twitter.com/miyatamitsuru/status/1252035937078349824
https://twitter.com/miyatamitsuru/status/1251376762065317889
伸び悩むPCR検査を打開する技術突破
https://bio.nikkeibp.co.jp/atclwm/column/20/04/07/00570/

 最近、ツイッターの性能が上がって、毎朝驚くようなバイオのニュースが届きます。午前中に皆さんにコメント付きで紹介しています。ぜひ、下記にアクセスしてフォロー願います。
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https://support.twitter.com/articles/230266-twitter#

 テレビ業界も新型コロナウイルスでスタジオ収録ができず、再放送ばかりが目につきます。今回のメールでは読者の期待に応えて、新型コロナウイルスの治療薬の有力候補に浮かび上がってきた「アビガン」の開発秘話をアップデートして再掲載したいと思います。前回このストーリーを執筆したときにはエボラ感染症が再興し、エボラ治療薬としてアビガンが注目されていました。現在、アフリカではエボラも過去最大に迫る感染が再興しております。いずれにせよ、広範なRNAウイルスに対する治療薬である「アビガン」の可能性は極めて大きいと考えており、今回の流行に合わせて、一部アップデートして内容を再掲いたします。第4話以降は今回新たに取材して、最新の状況までたどろうと思っております。ひょっとしたら世界を救うかもしれない「アビガン」は、富山県の医薬品メーカー富山化学工業(現在、富士フイルムに買収され富士フイルム富山化学となった)の2人のイノベーターの絶妙なコンビが生み出したものでした。
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自粛はここまでやれば良い、新型コロナ対策
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 アビガンの化合物を選別、合成したのは、富山化学(以降の名称は2014年取材当時のまま)薬理研究部の古田要介副部長。そしてもう1人の突破者は富山化学富山事業所長の成田弘和氏でありました。アビガンが創製されたときの研究所長であった成田事業所長は、アビガンの開発を一時中断した責任者でもあったのです。開発の経緯をたどると、2人はアクセルとブレーキの絶妙な関係を保ちながら、アビガンの発売にたどり着きました。イノベーターというと猪突猛進型を想起するでしょうが、時にはプロジェクトをやめ、転進することで技術突破を実現する場合もあるのです。もっとも「(言うこと聞かないから)8回ぐらい左遷された」という成田事業所長も剛の者であることは間違いありません。

 岐阜県神岡市の出身であった古田副部長は、大学卒業後、全薬工業に入社、抗がん薬と抗ウイルス薬の研究に携わっていました。当時は北里大学に派遣され、抗ウイルス薬の研究を行っていたのです。しかし、研究環境になじめず、どうせ転職するなら出身地の近くでと、1985年に富山化学に入社しました。当時の富山化学では抗がん薬の開発が進んでいました。古田副部長も入社してすぐに抗がん薬の開発のため、東京の癌研究所に出向しました。そこで当時の吉田光昭・癌化学療法部長の下で化学抗がん薬の開発を行う予定だったのです。しかし、実際の研究は当時社会問題化しつつあったエイズウイルス、HIVの治療薬の開発でありました。北里大学で細胞培養など抗ウイルス薬開発の基礎を身につけていた古田副部長は「出向から10日後には、HIVを増殖、富山化学から持って行った化合物で、スクリーニングした」。古田副部長は当初よりなぜか、ウイルスに縁が深かったのです。

 しかし、転機が来ます。1990年代の初めに、富山化学の抗がん薬開発プロジェクトが中断されたのです。免疫療法(ピシバニール系統)から化学抗がん薬まで幅広く開発を探っていました。当時の研究陣は、化学合成研究者が40人、評価系の研究者30人、安全性、分析、製剤もあったので総勢で150人から160人でありました。富山化学はβラクタムの誘導体を開発することによってペントシリンなど抗生剤を次々と上市していました。しかし、その結果、「ケミストばかり」(成田事業所長)だった。癌研究を止めるように提案したのは、成田事業所長でした。「新しい制がん薬をやろうとした時に、アウトプット、どうやって臨床をやるのか分からない。化学療法としても同じ物しか作れない。血管新生、転移など、抗がん薬の対象は何でも良いが、その仕組みが当時は分からなかった」と述懐しました。癌の分子機構が明らかになった今では、当然、抗がん薬開発は魅力的なプロジェクトになったとも付け加えました。

 その当時の犀川研究所長が抗ウイルス薬の開発を決断。1993年にウイルスグループが誕生しました。研究者は7~8人。古田副部長がグループリーダーを任されたのです。ところが抗生物質の研究者ばかりで、誰も抗ウイルス薬の開発が分からない。そこでヘルペスウイルスの専門家であった富山大学医学研究科ウイルス学の白木公康教授の指導を受けて、抗ウイルス薬のスクリーニングを開始しました。培養細胞にウイルスを感染させ、抗ウイルス薬の候補物質を添加して、細胞の生存率を検定する。細胞培養技術が必要だが、幸い抗がん薬開発で細胞培養技術には習熟していました。

 しかし、ここで難問が立ちはだかりました。「ある程度母核を想定して多数の化合物を合成したものの、抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビルに勝てない。ぼちぼちはできるが、動物実験をやるとアシクロビルには対抗できない。最後の方は研究が迷走してしまった」(古田副部長)。この難局を2人はどう打開したのでしょうか?(続く)

<<Wmの憂鬱、日本のイノベーター、過去記事>>

〇「フェブリク」
第2回の(1)、帝人の医薬売り上げトップに躍り出る『フェブリク』はこうして誕生した
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140901/178694/?ST=wm
第2回の(2)、弱さを強みに変えた「フェブリク」の創薬戦略
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140902/178724/?ST=wm
第2回の(3)、近藤Gフェローの賭が奏功、開発が急ピッチで進んだ「フェブリク」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140903/178751/?ST=wm
第2回の(4)、変異原性試験で開発がピンチに、フェブリク誕生までの最後の試練
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140905/178826/?ST=wm
第2回の(5、完結)、痛風を超え高尿酸血症という新治療概念を提唱、ブロックバスター確実な「フェブリク」の成功の鍵
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140908/178845/?ST=wm

〇「アレセンサ」
第1回の(1)、我が国で最初のブレークスルー医薬指定を受けた「アレセンサ」はこうして誕生した
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140818/178464/?ST=wm
第1回の(2)、TKIのアキレス腱、ゲートキーパー変異にも効果があった「アレセンサ」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140819/178500/?ST=wm
第1回の(3)、事実上我が国でブレイクスルーセラピー審査を実現した「アレセンサ」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140820/178523/?ST=wm
第1回の(4、完結)、「アレセンサ」の成功の秘密
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20140825/178572/?ST=wm

どうぞ皆さん、ご自愛願います。まだまだ新型コロナは安心できません。

宮田総研代表取締役 宮田 満

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