シリコンバレー創薬騒動(第38回)

がむしゃらにやることに疑問を感じたら黄信号

(2017.12.01 08:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 前々回とは別のシリコンバレー研修プログラムの中で、下記のような質問を受けました。

 「今自分は悩んでいます。上司からも取引先からも、とにかくがむしゃらにやれ、余計なことは考えるな、などと言われ、本当にこれでいいのかと考えるようになりました。どう思われますか?」

 これだけ聞けば、今どきの典型的なブラック企業の薫りが充満していますから、そんなところからはいち早く逃げろ、という回答になると思います。

 以上!で終わってもいいのですが、転職しても同じことの繰り返しになったとしたら成長も発展もないので、もう少し考えてみましょう。全ての人に当てはまるかどうかはわかりませんが、人から言われなくてもがむしゃらにできること、あるいはできる時期というのはあると思います。少なくとも私自身は20代から30代にかけて、そういう時期がありました。

 正直に言いますと、30年近くやってきていながら新薬の合成研究が自分の天職だと思ったことは無いのですが、それでも新薬開発を目指してほとんど脇目もふらずに仕事をしていた時期が何度かありました。これらのときには、自分が一生懸命やっていることに何の疑問も持たずに働いていたと思います。しかしある時、仕事の内容が変わり、本当にこれは自分や会社がやるべきことなのだろうかと疑問を持ったことがありました。

 その頃たまたま、上記とは全く別の理由で転職を考えていたので、結果的に転職の決心を後押しすることになりました。組織の中で自分がやっていることに疑問が生じるようになったら、やはりそれは黄信号なのではないでしょうか? 組織の方針にしても自分の考えにしても、正しいのか間違っているのかはその時点では分からないかもしれません。しかし直感的に何かおかしいと感じたら、論理的な根拠があろうが無かろうが、自分の直感に従った方が、後で後悔する可能性が低くなると私は思います。

 ですから最初の質問への私の答えとしては、自分の居場所や自分がやるべき仕事として、現在の状況が最適なのか、真剣に自分に問いかけるべきタイミングに来ているのではないか? もし違うかもしれないのであれば、転職も選択肢として考えるべきなのではないか?ということになると思います。もちろん何の疑問も生じない理想の職場などほぼあり得ないわけですが、だからといってどんどん大きくなる疑問を抱えたまま、ひたすら我慢し続ける必要も無いのではということです。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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