シリコンバレー創薬騒動(第36回)

仕事をする上で一番大事なこと

(2017.11.10 08:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 先日、とあるシリコンバレー研修プログラムのパネルディスカッションにお招きいただいて、日本から来ている大学生の皆さんとお話しをしたときに、「仕事をする上で一番大事なことは何ですか?」という直球な質問を受けました。

 環境的なものとか人間関係的なものとか大事なことはたくさんあるので、1つに絞るのは難しいわけですが、短い時間の中で考えた、組織人(会社員)としての私の答えは以下のようなものでした。

 それは、自分がやっていることに納得できていること。つまり今自分がやっているのは意味があることで、所属するプロジェクトチームの中で今自分がやるべきと信じられること。

 新薬開発のプロジェクトは、本当に様々な分野の研究者が協力するチームで進めていかないとできません。こういう薬を開発するというゴールを全員が共有するところまではいいのですが、そこに至るアプローチということになると、人それぞれ違った考え方があって、全体のコンセンサスを得るのは必ずしも簡単ではありません。

 ですからプロジェクトミーティングは度々紛糾します。何をどういう順序でやるべきか、そして何をやらないべきか、をはっきりさせるために、本連載で繰り返し述べているプロジェクトマネジメントの3つの質問があるのですが、それでも簡単にはまとまらないのが現実です。

 しかし最低限、自分が担当する部分をどうするかは、自分が納得できる方向に持っていくべきですし、そうでないとモチベーションを保つのも難しくなります。こんなことやったって意味ないのに、というスタンスで仕事をしていても、とにかくむなしいですし生産性も上がらず、結果も出ないという負のスパイラルになってしまいます。

 ですから、自分が納得して仕事ができるということが非常に重要なのですが、チームのマジョリティーと自分の意見が違う場合、私が現場で取ったアプローチは「ちょっと頑張って両方やってしまう」でした。現場の仕事は医薬品開発受託機関(CRO)にアウトソースしていた場合が多かったので、すみませんがあっちもこっちもやってくださいとお願いしました。その代わりこっちの仕事はしばらく放置していいからというものも加えて、限られたリソースの中で何とかバランスを取るようにしました。

 職位が上の人だからといって、言うことがいつも正しいとは限りません。自分が信じることは言うべきですし、自分が納得してやりがいを持って仕事をすることで運も味方につけて、思わぬ成果につながったりもするのではないかなと思います。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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