シリコンバレー創薬騒動(第30回)

オンとオフの切り替え

(2017.09.22 00:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 オンとオフといっても仕事とプライベートの間のことではなく、仕事の中でのことです。

 シリコンバレーでは、多国籍で異なる常識やバックグラウンドを有する人々が、1つの組織の中でプロジェクトチームを構成して仕事をしています。新薬の上市という同じゴールに向かってやっていたとしても、そのアプローチや考え方は人によって異なることも多々あります。その擦り合わせをして、全員のコンセンサスを得るためにミーティングを重ねるわけです。

 ミーティング開始とともにスイッチオンとなります。格闘技のリングでゴングが鳴るようなものです。それぞれ個性の強いメンバーが異なる意見を持っていたりすると、時には侃々諤々の激しい議論になることもあります。しかしミーティングはそのためにあるわけで、その中ではルールを守っている限り、自分の意見を主張したり、相手の意見を否定したりすることは自由です。

 ルールというのは、お互いをリスペクトする、個人攻撃をしない、議長の進行に従う、といった常識的なことです。その上で、例えば相手の主張がいかに間違っているかなど、かなり激しい言葉でやりあう場面もあります。議論が平行線であっても、決めるべきことは決めなければいけませんので、自分の主張が通らない人が必ずいることになります。当然ですが、それでも取りあえず全体の結論には従わなければなりません。

 どんなに激しい議論があったとしても、そのミーティングが終わればスイッチオフ。ファイト終了のゴングです。ひとたび会議室というリングを出れば、先ほどまで火を噴く勢いで議論していた人同士も、キッチンで急になごやかな世間話を始めたりするのです。意見や主張は戦わせても、お互いに相手の人格とは切り離してのことなので、こういうことが可能になります。仲の良い友達である必要は全くありませんが、同僚として一定のリスペクトを忘れないということです。

 その辺りをはっきり区別できていないと、意見が合わない相手イコール敵のような意識が生じてしまい、社内の雰囲気や人間関係を悪化させる方向に向かってしまいます。人間同士のことですから、現実にはかなり微妙なバランスで何とか成り立っている関係という場合もしばしばありますが、一線を越えて修復不能な領域まで行ってしまい、チームを崩壊させないために、上記のようなオンとオフをしっかり切り替えることが非常に重要なのです。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

シリコンバレー創薬騒動のバックナンバー

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧