オンとオフといっても仕事とプライベートの間のことではなく、仕事の中でのことです。

 シリコンバレーでは、多国籍で異なる常識やバックグラウンドを有する人々が、1つの組織の中でプロジェクトチームを構成して仕事をしています。新薬の上市という同じゴールに向かってやっていたとしても、そのアプローチや考え方は人によって異なることも多々あります。その擦り合わせをして、全員のコンセンサスを得るためにミーティングを重ねるわけです。

 ミーティング開始とともにスイッチオンとなります。格闘技のリングでゴングが鳴るようなものです。それぞれ個性の強いメンバーが異なる意見を持っていたりすると、時には侃々諤々の激しい議論になることもあります。しかしミーティングはそのためにあるわけで、その中ではルールを守っている限り、自分の意見を主張したり、相手の意見を否定したりすることは自由です。

 ルールというのは、お互いをリスペクトする、個人攻撃をしない、議長の進行に従う、といった常識的なことです。その上で、例えば相手の主張がいかに間違っているかなど、かなり激しい言葉でやりあう場面もあります。議論が平行線であっても、決めるべきことは決めなければいけませんので、自分の主張が通らない人が必ずいることになります。当然ですが、それでも取りあえず全体の結論には従わなければなりません。

 どんなに激しい議論があったとしても、そのミーティングが終わればスイッチオフ。ファイト終了のゴングです。ひとたび会議室というリングを出れば、先ほどまで火を噴く勢いで議論していた人同士も、キッチンで急になごやかな世間話を始めたりするのです。意見や主張は戦わせても、お互いに相手の人格とは切り離してのことなので、こういうことが可能になります。仲の良い友達である必要は全くありませんが、同僚として一定のリスペクトを忘れないということです。

 その辺りをはっきり区別できていないと、意見が合わない相手イコール敵のような意識が生じてしまい、社内の雰囲気や人間関係を悪化させる方向に向かってしまいます。人間同士のことですから、現実にはかなり微妙なバランスで何とか成り立っている関係という場合もしばしばありますが、一線を越えて修復不能な領域まで行ってしまい、チームを崩壊させないために、上記のようなオンとオフをしっかり切り替えることが非常に重要なのです。