シリコンバレー創薬騒動(第27回)

シリコンバレーの人々はなぜ活発に発言するのか

(2017.09.04 00:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 アメリカでは会議で何も発言しないと無能だと見なされるというのは、多くの人により語られていることです。確かに社内でプロモーションするためには、事あるごとに発言するというのは重要なことだと私も思います。

 一般論として、日本人はグローバルな環境、すなわち参加者が多国籍で言語が英語での会議で発言するのは苦手な場合が多いようです。これには主に2つの理由があると思います。1つは単純に語学力の問題です。

 英語に自信が無く、相手の言っていることもあまり分からない頃、渡米して最初の5年ぐらいは私も会議でほとんど発言しませんでした、というかできませんでした。上司からは「Speak up」などと何度も言われたものです。10年が過ぎた頃からようやく、ある程度発言できるようになったという実感を持てるようになりました。

 もう1つの理由、それはまさに日本のカルチャーに関係しています。いわゆる「事なかれ主義」です。会議なんて、どうせ結論は決まっている、何か言ってみたところで変わるわけじゃない、というバイアス。上司の意向と違うことや、何か間違ったことを言ってしまって、マイナス評価されるぐらいだったら黙っていた方がいい。色々考えると、何も言わないのが一番安全という意識。

 しかしながら、例えば創薬プロジェクトをどう進めるべきかなど、正解なんて誰も知りません。新しいデータが得られるたびに、プロジェクトマネジメントのところで説明させていただいた3つの質問をみんなで考えて、最も成功確率が高いと思われる方向に進むしかありません。何が正解か誰にも分からないということは、誰でも思ったことを言えばいいということでもあります。

 つまり、結果的に自分の発言が採用されなかったとしても、別に気にすることはないのです。よほどおかしなことを言っている場合はともかく、それなりに筋が通っていれば、あなたはそう考えるんだねということで終わります。

 実際に、会議前に想定されていた結論とは異なる結論に落ち着くことが多々ありました。それもまた後日変わったりとか、じゃああの会議は何だったんだ!みたいなことも日常茶飯事です。しかしそのフレキシビリティーと意思決定の迅速さが、スタートアップの強みでもあります。

 もう1つ付け加えると、自分がある程度の覚悟を持てれば、会議での発言は格段に容易になります。覚悟というのは、いざとなれば会社や組織を去ればいいということです。極端に聞こえるかもしれませんが、いつだってレイオフの可能性はあるわけで、覚悟というほどのことでさえないかもしれません。

 むしろそれくらいの覚悟をもってしてでも言いたいことというのは、実は保身や社内政治などを陰で意識しながら発言している人たち(しかもこういう人たちは声が大きいことが多い!)よりも本質を突いていて、実際に進むべき道である場合も多いと思います。本当に組織やチームのためと思って発言していれば、それがたとえマジョリティーとは違っていたとしても、そのためにクビになるなんてことはありませんし、もしなるようなら、逆にそんな組織にいるべきではないとも言えます。自分が正しいと信じることはどんどん発言していきましょう。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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