ベンチャーというと、社員はみんな朝から夜遅くまでがんがん働いているというイメージがあるのではないでしょうか? ところがどっこい、そうではなかったりもするというお話です。

 日本の製薬企業に在籍していたときは、まさに朝から深夜まで働くのが当たり前という感じでした。当時はベンチャーというものがどういうものなのか全く知りませんでしたが、恐らくもっと大変なんだろうなと、根拠も無く漠然と思っていました。

 ところが! 最初の渡米は共同研究先への出向という形でしたが、そこで見たシリコンバレーのバイオベンチャーの姿は、上記のようなイメージからは随分かけ離れたものでした。というのは、研究職であっても多くの社員の1日の就業時間はほぼ8時間だったからです。

 カリフォルニアでは、就業4時間につき15分、8時間につき30分の休憩が認められています。ですから、週40時間勤務のフルタイム社員の場合、8時間就業する間に30分の休憩を取れますので、実質7時間30分の就業でOKです。

 VP(副社長)やDirectorなど役職レベルが高い人たちは8時間という枠に関係なく、もっと長い時間仕事をする傾向がありましたが、研究員(Scientist)や補助職(Research Associate)、あるいは事務系の人たちは、ほぼ8時間が基本でした。出社および退社時刻は早かったり遅かったりまちまちですが、早く来る人は早く帰り、遅く来る人は遅く帰るだけで、8時間前後の就業であることは変わりません。

 8時間「前後」と書きましたが、これが実際に正確な表現で、日によって6時間の日もあれば9時間の日もあるという感じで、毎日少なくとも8時間いるというわけでもありません。

 その後、もっとずっと小さなスタートアップに転職しましたが、そこでの同僚の皆さんの就業パターンも全く同じでした。中には例外的に長い人もいたりしましたが、ほとんどの社員は1日平均8時間の就業が基本でした。

 最初の頃、私はまだ日本的な習慣を若干引きずっていましたので、日が沈まないうちに帰宅すると罪悪感を感じたりして、他のみんなよりやや長めに在社していました。あるとき、アメリカにしては珍しく、親睦のためにディナーに行こうということになり、同僚たちがそれまで日本人と働いたことが無かったため、和食に興味があるということで、成り行きで私が幹事となり、とある金曜日の夜7時に和食のお店を予約しました。

 その日が来ました。予約は7時で、会社を6時半すぎに出れば十分間に合う場所です。なので私はそれに合わせていつものように実験などの仕事をスケジュールしていました。ところが他のメンバーが、5時を過ぎたあたりからそわそわ落ち着かなくなってきました。そして私に、まだ行かないのかと何度もせっつくのです。彼らは金曜日の夕方はとっくに仕事を終えて、気持ちは週末モード。6時半まで会社にいるなんてあり得ない!という勢いでした。

 そういった経験を幾つも経て、年月を重ねるとともに私もだんだんこちらのカルチャーに染まり、気が付けば1日8時間以上働けないカラダになってしまいました(笑)。それでも会社全体としては驚くほどの成果を上げたのですから、やはり重要なのは労働時間の長短ではないのかなと思います。では何なのかといえば、やはりメリハリを付けることと、そして何度もしつこいですがプロジェクトマネジメントなのかなと、私は感じています。