シリコンバレー創薬騒動(第24回)

メールレスポンスのタイミング

(2017.08.04 00:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 メールの話題と言いながらちょっと大きな話を してしまいますが、考えてみれば、人生というのは私たち1人1人にとっての一大プロジェクトであるといえます。日々の出来事もそれぞれ小さなプロジェクトであり、短いものや長いものが並行し、かつ連続的に同時進行し、最終的に死を迎えて完了します。プロジェクトである以上、本連載の前半の第4回、第5回、第6回辺りで書いたプロジェクトマネジメント的な手法により最適化することができるはずです。

 例えば、朝起きてから学校や会社に行くまでの一連の流れ、着替えて顔を洗って朝食を食べてといったことも、創意工夫によって効率化できる要素があるかもしれません。仕事や勉強だけでなく、日々の暮らしの1つ1つの要素をちょっと見直してみることで、今まで以上に生産性や効率を上げることができれば、今まで無いと思っていた余分な時間が生まれます。

 第9回の「緩急の重要性」で書いたようにリラックスすることも必要ですし、何でもかんでも効率化すれば良いというものではありませんが、ただ漠然と忙しい、時間が無いと思って諦めていたことができるようになったら、たとえそれが単なる休息であったとしても、QOLが改善するのではないでしょうか?

 かくいう私も、よく無駄なことをしてしまいます。買い物に回るルートの効率が悪かったり、あるものを買い忘れて二度手間になったりなど、しょっちゅうです。逆にそういったことがぬかりなくいったときは、ちょっといい気分になります。最大リスク要因を意識して、物事を行う順序をよく考えるとか、やってもやらなくても実はあまり結果に影響しないことは取りあえずやらないでおくとか、何かをするのに必要な時間を再確認するとかいったことは、頭で考えるだけでお金は全く要りませんし、それでいて無駄な出費や時間の浪費を無くすことにつながりますから、日々意識する価値はあると思うのです。

 時間は止まることなく、常に連続して流れていきます。自分の死という人生の終点に向かって1秒1秒、常に時計の針は刻み続けています。だとすれば、日々の過ごし方を少しでも改善することは、私たち1人1人にとって十分意味があることではないでしょうか?

 昔から、仕事は忙しい人に頼めという言葉があります。最近でも、できる人、忙しい人ほどメールなどのレスポンスが早いということは、よく言われます。忙しそうに見える人でも、暇そうに見える人でも、誰にとっても時間は同一のリソースです。しかし現代は色々なことが同時進行していますから、ちょっと油断すると物事があっという間に過ぎ去ってしまいます。

 チャットやメッセージなどの様々なサービスが普及した現在、今さらメールなんて、と思われる若い方もおいでかもしれませんが、バイオ業界の仕事はまだまだメールに依存しています。ですから、仕事上のプロジェクトであれ、人生というプロジェクトであれ最適化する、つまりあらゆる局面において最短の時間で最大の成果を出すために、これはほんの一例ではありますが、電子メールなどのレスポンスは原則として早くするに越したことはありません。相手の立場になって考えてみれば当たり前のことですし、忙しぶって返信を遅くするなど何のメリットも無いと思います。

 ただし、レスポンスまでに少し時間を置いた方が良い場合もあります。それは相手のメールに怒りの気持ちが湧いてしまった場合と、先方からの依頼などに対してネガティブな返事をしなければならない場合です。これらのケースは、感情が高まった状態ですぐにレスポンスしたり、間髪入れずに断りのメールをするよりも、まず一息置きましょう。その上で、具体的な内容はケース・バイ・ケースになりますが、後のことも考えて、一般論としては何事もソフトランディングを目指すのが良いと私は思いますが、いかがでしょうか?

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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