シリコンバレー創薬騒動(第20回)

昇給、昇進について

(2017.07.07 00:41)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 以前、ボーナス額決定の仕組みについて書きましたが、今回は昇給/昇進について。こちらはボーナスに比べると少しばかり透明性が低くなるというか、ケース・バイ・ケースなことも起きてくるので、一律にこうであるとは言いにくい面があります。

 会社によってプロセスも若干違ってきますが、一般論として言えることは、少なくとも年に1度は希望を出すチャンスはあるということでしょうか。私がいた会社の場合、ボーナス決定のためにゴール達成度のレビューをするときに、もう1つの書類を作成します。それはannual reviewといって、似たようなものに聞こえますが、設定したゴールとは別に、自分がその年にどんなことを達成あるいは貢献したかを書き出します。

 それを基に、meet expectationとかexceed expectationといった評価をします。この評価が、次の年の昇給を左右します。といっても通常は数%以内、時には1%にも満たない程度の違いです。ただしそこに昇進(プロモーション)が加わると、もっと大きな昇給になります。

 昇進については、まず当人が希望することが基本です。その上で、直属の上司が同意する必要があります。なぜなら直属の上司が部下を昇進させるための推薦文を書くからです。彼/彼女は既に現在の肩書よりも上のレベルの仕事をしている、だから昇進させるべきである、ということを説得力ある事実を積み重ねて示さなければなりません。そして次のレベルの上司も同意する必要があります。

 何回か前に、米国でも能ある鷹は爪を隠すものだと書きましたが、これは基本的にエグゼクティブレベルでの話で、米国では恐らく日本の場合よりも多くの人が、高い頻度で昇進の希望を出していると思います。ですので、そのような状況の中で実際の昇進を勝ち取るのは簡単ではなく、真剣に推薦文を作成する必要があります。

 また、直属の上司による同意と推薦が原則であることの根本的な問題として、上司と部下の職位が近い場合、部下を昇進させるとより自分に近づいたり、場合によっては自分と同じレベルになってしまい、部下の昇進を積極的に推したくなくなるネガティブなモチベーションが生じる可能性があります。もちろん優秀な人材の場合には、さらに上から引っ張り上げられるケースもあります。

 このように社内での昇進は色々と簡単ではないので、それならいっそ転職して、それに伴うステップアップを目指すという選択肢も出てきます。米国で転職の頻度が高いといわれるゆえんです。これは業界全体の景気が悪いと難しいですが、景気がそこそこ良ければ非常に現実的なプランになりますし、実際のところ社内での昇進より手っ取り早いことも多いです。

 黙っていてもある程度自動的に昇進していく年功序列型システムも、悪いことばかりではないかもしれませんが、グローバル化する環境の中では、成果/実力主義が主流になっていくのは止められない流れでしょう。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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