シリコンバレー創薬騒動(第19回)

同期違い

(2017.06.30 00:40)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 日本の多くの会社のように新卒一括採用システムを取っている場合、入社同期というものがあります。同期というのはお互いにライバルでもありながら強い連帯感を生む場合が多く、生涯の友になることさえあり、いい部分もたくさんあります。

 シリコンバレーのベンチャーではいわゆる通年採用が一般的で、ポジションが生まれたときに募集し、一度に複数のポジションが出た場合でも、1人ひとり採用します。ですから、たとえ近い時期に入社した同僚がいる場合であっても、日本的な入社同期という概念はありません。

 ところがこちらでは、別の種類の同期が存在します。それはレイオフがあった場合です。レイオフのサイズは数人から数十人、数百人と色々ありますが、まとまった人数の社員が同じ日に一斉に退社しますので、言ってみれば退社同期ということになります。

 一緒にレイオフになると、対象者は全員次の仕事を探し始めたりしますので、そのメンバーでメーリングリストを作ったり、定期的に情報交換会をしたりということがよくあります。そのためちょっと皮肉な感じではありますが、会社にいた時よりも親密度が増すことさえあります。

 日本の入社同期は普通は何度もできませんが、アメリカの退社同期はレイオフに遭うたびに何度でも違うグループでできる可能性があります。実際、複数回のレイオフを経験している人はごまんといます。

 レイオフというと恐ろしいものという印象をお持ちの人も多いかもしれませんが、必ずしもそうばかりとは言い切れません。あくまで会社都合であって、基本的に当事者の過失ではありませんし、必ずではありませんが、それなりのパッケージが付いてくることも多いからです。このパッケージというのは、severance packageやseparation packageなどと呼ばれるものです。その内容には色々ありますが、メーンとなるのは退職金のような形で、向こう数カ月分の給料を余分にもらえたりすることです。未消化の有給休暇も、通常は換金されますし、医療保険を含めた福利厚生関係のサポートもあったりします。

 自分が勤める会社の先行きが怪しいために、そもそも転職を検討していた場合など、自分から転職すると上記のパッケージは一切得られませんが、レイオフになれば得られるので、むしろラッキーと感じるケースさえあります。究極は、いわゆる会社そのものが成功裏なexitになった場合で、大手による買収などによってvestしていなかったストックオプションまでも含めて全て買い上げられるようなケースです。

 入社同期の話からレイオフの話になってしまいましたが、私自身、こちらで経験した2つのバイオベンチャーの両方とも、最後はレイオフによって退社することになりましたので、このトピックになるとつい色々と語りたくなってしまいます(笑)。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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