シリコンバレー創薬騒動(第16回)

楽観主義の重要性

(2017.06.09 00:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader
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 シリコンバレーについて語るときの重要なキーワードの1つが「楽観性(optimism)」です。「病は気から」という言葉がありますが、同じ考え方で真逆の話で、言ってみれば「成功は気から」といった感じです。

 楽観性が重要であるというのは多くの人が強調していることですが、私もこれをとても強く実感しています。シリコンバレーのカルチャーとして、人々が本当に楽観的なのです。あるいはそうあろうと努めているだけなのかもしれませんが、いずれにしても楽観的でいることは、多くのポジティブな効果をもたらします。スタートアップは、ローラーコースターに例えられるようにビリビリするスリルの連続でもありますから、精神的なストレスも多々生じます。楽観的でいられると、このストレスが大きく軽減され、モチベーションを保つことができます。

 さらに重要な点は、うまくいかない可能性を思い悩むよりも、うまくいったらこうなる!と常々考えていることで、実際にそちらの方向に動いていく可能性が高まるのです。このことに科学的な根拠があるのかどうかは分かりませんが、経験的に、何かを実現、達成したいときに、このマインドセットは非常に重要だと感じています。

 そしてこのカルチャーを強力にサポートしてくれるのが、シリコンバレーの気候です。これも多くの人が言っていることですが、年間を通して爽やかな快晴の日が非常に多く、広く高い青空が人々を前向きな気持ちにさせてくれるのです。順番としてはむしろこの気候があるおかげで、楽観的なカルチャーが生まれたのかもしれません。

 私自身、渡米間もない頃、自分の英語のコミュニケーションのあまりの貧弱さに、落ち込むことが度々ありました。そんなときに私を支えてくれたのも、カリフォルニアの青空でした。ちょっと建物の外に出て空を眺めるだけで、もうちょっと頑張ってみようかという気持ちになれたものです。

 もう1つ、私はこれも楽観主義の一部分だと思うのですが、自分がやりたいことや、なりたい姿、将来の目標などは、心に秘めておくのではなく、たくさん口に出す方が良いと思っています。「自分は将来こういう仕事をやりたい」と会う人ごとに言っておくと、だんだん多くの人があなたの夢を覚えてくれることになります。そうすると何か関連する情報やオポチュニティーがあったときに、「ああ、そういえばあいつがそういうことを言ってたなあ。教えてあげよう」といったケースが出てくるかもしれません。いや、きっと出てきます。

 さんざん言っておいて実現できなかったら恥ずかしい、という心配もあるかもしれませんが、あなたが何年も前に言ってたことを、他人はいちいち気にしません。たとえ覚えられていたとしても、それをとやかく言う気も暇も無いのが普通でしょう。つまりメリットがデメリットを大きく上回るわけですから、やらない手はないといえるでしょう。

 もっと小さな夢、例えば「おいしいおすしを心ゆくまで食べてみたい」といったことでも、常に人に言っておくことで、実現の可能性はぐっと高まるはずです。もちろんありとあらゆることを言っていたら、ただのウザい人になってしまいますから、最優先事項に絞るべきとは思いますが。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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