シリコンバレー創薬騒動(第15回)

違うようで違わないこと

(2017.06.02 00:00)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 日米間の違いについて以前に幾つか書きました。今回は、日米間でも変わらないと私が感じていることについて、書いてみたいと思います。それは次の2点です。

能ある鷹は爪を隠す
謙遜さを美徳とする

 2点といっても言っていることはほぼ同じですが、これらは一般的には日本の文化の特徴であって、欧米では違うと考えられているかもしれません。しかし、5年、10年と過ごすうちに、米国でも特に仕事がデキる人たちは、こういったことを心掛けている場合が多いのだなあと思うようになりました。

 日本においても爪を全く隠そうとせず、剥き出しで自分をアピールしたり他人を攻撃したりする人がいるように、米国においてもそういう人はもちろんいると思います。そういう人の存在比率は日米間で多少違うかもしれませんが、突き詰めればどちらのタイプもいるという意味で、日米間で特に変わらないのではないか、ということです。

 もしもちょっと違う点があるとすれば、米国の場合、普段は謙虚で穏やかに振る舞っている上級職の人(VPなど)でも、ここ一番というような場面においてはびっくりするほど強気に出たり、思わぬリーダーシップを発揮したりすることがある、というあたりでしょうか。ここ一番というのは例えば、重要なミーティングで意見が割れて、どうしても譲れないという場合や、チームやプロジェクト内で大きな問題が起きた際のトラブルシューティングのときなどです。

 いわゆるエグゼクティブレベルにおいて、周囲から一目置かれ、存在感ある仕事をするためには、上記のような資質がある程度は必要になるのではないかと思います。しかし日本にも、昼あんどんと皮肉られながらも大仕事をやってのける忠臣蔵の大石内蔵助のようなロールモデルがありますし、そういった人材はたくさんいるはずです。

 日米間で違うこととか同じこととかについて何度か書いてきましたが、シリコンバレーというのは非常に多国籍な土地で、グリーンカード(永住権)や各種のビザで働く移民の割合が非常に高く、米国籍の人たちでも、外国生まれから帰化した1世や、2世、3世、……といった人たちもたくさんいます。

 アメリカ全土で考えても、そもそもが移民の国ですから、アジア系、ヨーロッパ系、アフリカ系、ラテン系、そしてそれらのミックスといった具合で本当に複雑な人種構成です。ですから、アメリカ人というのはこういう考え方や行動をするとか、十把ひとからげにできるはずもなく、アメリカ人の特徴とか性格とかいったものを議論することに、実はあまり意味は無いのではないかと思っています。

 そんな米国と比較すると、日本の場合は多くの人に共通する国民性のようなものがあるでしょうし、国や地域といった単位で見れば、それぞれに特有のカルチャーというものはあると思います。しかしながら、個人レベルでの性格とか行動様式といったものに関してああだこうだと日米間の比較をすることには、あまり大きな意味は無いのかもしれませんね。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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