シリコンバレー創薬騒動(第14回)

米国ベンチャーのボーナス決定プロセス

(2017.05.26 00:30)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 私はシリコンバレーで2社、米国のいわゆるバイオベンチャー企業を経験しました。そのどちらも、人事評価システムは似たようなものでした。他の会社を経験した同僚などの話を聞いていても、少なくともバイオ業界はほぼ共通したやり方を取っているように思います。その中の、ボーナス制度について紹介します。

 スタートアップの初期には通常のサラリーのみで、ボーナスはまだありませんでした。ある程度研究開発が進み、シリーズCの資金調達を終えた辺りで、ボーナス制度が開始されました。

 年度の初めに、まず会社のゴール(corporate goal)が設定され、それに基づいて各自のゴールを設定します。SMART(スマート)ゴールなどと言いますが、Specific(具体的)、Measurable(測ることができる)、Attainable(達成可能)、Realistic(現実的)、Time-bound(期限付き)の頭文字をつなげたものです。当てる言葉は他にも幾つかあるようですが、これらが一般的です。このようなゴールを3から5個程度、設定します。そしてそれぞれのゴールに重みをつけ、全体で100%になるようにします。重要なプロジェクトは50%とかそれ以上、付随的なものは10%とかいった感じ。これがその年のボーナスの額を決定する土台になるのです。

 ベンチャーには組合などありませんから、会社のボード会議(取締役会)で全てが決定されます。こちらのボーナスシステムは日本の一般的なものとはちょっと違っていて、まず役職レベルごとにボーナスターゲットが設定されます。例えばCEOだと年間サラリーの50%、研究員だと15%とかいった具合。例えば年間のサラリーが1000万円の人のボーナスターゲットが10%だとすると、その社員のボーナスは最大で100万円になります。あくまでもターゲット(目標額)ですので、通常100万円満額もらうことはありません。

 ただし、さすがアメリカ!と思ったことがあります。それはある年、会社として色々なことが当初の想定以上にうまくいったのですが、そのときは会社のゴール達成度として100%を大きく超える数字がボード(経営陣)から認められたのです。これもまた、いい意味でのフレキシビリティーでした。

 本題に戻ると、年度末に各自のゴール設定に対してレビューをします。それぞれのゴールに対して、どれくらい達成されたかをパーセントで評価します。配分が50%のゴールを90%達成した場合、45%となります。このようにして、全てのゴールの達成率を合計した数字を出します。

 最初は自分で評価するセルフレビュー、次に上司がそれをレビューし、同意する場合はそのままですが、数字を上げたり下げたりすることもあります。最終的に経営陣のレベルで全体を調整し、決定されるのですが、会社もコーポレートゴールに対して同じような評定をして、会社として何パーセント達成したかを決定します。そして各自のボーナス額の決定にはこちらのファクターも関係します。会社/個人(Corporate/Individual)の割合というものがあり、これも役職レベルによって変わってきます。CEOの場合、会社の業績の責任の一切を負いますので、corporateが100%でindividualの部分はありません。つまりCEOのボーナスは、コーポレートゴールの達成率のみで決まります。

 それ以外の社員については、役職が高いほど個人よりも会社の割合が高くなるように設定されています。VP(副社長)だと70対30、ディレクターだと50対50、研究員だと30対70とかいった具合です。先ほどの例で、ターゲットボーナスが100万円の研究員の場合、この割合が30対70だとすると、[30万円×コーポレートゴールの達成率]と[70万円×個人ゴールの達成率]の和が、最終的なボーナス額になります。

 このように結構ややこしいですが、ゴール達成率をボーナスに反映させることで、インセンティブの1つとしているわけです。ちなみに昇給(merit increase)や昇進(promotion)に関してはまた別のプロセスになります。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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