シリコンバレー創薬騒動(第13回)

ネガティブフィードバックの伝え方

(2017.05.19 00:04)
赤間勉=元Anacor Pharmaceuticals社, Research Leader

 前回、ポジティブフィードバックの重要性について書きました。ポジティブがあれば当然ネガティブフィードバックもあり、時にはそれも相手に伝えなければなりません。

 これは主に、上司と部下の間で必要となります。通常、少なくとも年に1度はperformance review(人事評定のようなもの)があり、上司は部下と面談しなければなりません。多くの場合、もっと日常的にも面談は行われます。毎週とか隔週で、one on oneのミーティングを行うのはとても一般的です。特に自分が上司である場合、そのような場でのフィードバックのスキルは重要です。

 なぜかと言えば、部下の仕事やそのやり方などに改善が必要な場合、それをうまく伝え、パフォーマンスを改善させるのは上司の仕事であり責任だからです。つまり上記のようなミーティングの目的は部下に成長してもらうことであり、ネガティブフィードバックはそのための建設的な助言である必要があります。

 私自身の経験として、日本の会社にいたときに、当時の上司から君のここが良くないみたいなことをバシッと言われたことがあります。それをどう受け止めるかは人それぞれだとは思いますが、米国では原則として、ネガティブなことを伝えるに当たっては相手のプライドを尊重し、上記のようなストレートな言い方はしない場合がほとんどだと思います。

 とにかくまずは、ポジティブなことから話を始めるのです。あなたのこういうところは素晴らしいとか、そういうネタを探して、まずは褒める。その上で、決して「駄目出し」のようなことはせず、ここがこうなれば、もっと良くなるんじゃないかな?といった言い方をします。相手のプライドを傷つけないようにできる限り配慮するのが、特に上の立場からものを言うときのマナーになっています。もちろん個人レベルでのパーソナリティーによっては、必ずしもそうでない場合もありますが。

 言葉の上ではソフトに言われた場合でも、そこに込められた本音のメッセージとしては、「ここを改善しなさい」あるいは「改善すべきである」ということになります。私はこれに気が付くのに、ずいぶん年数がかかりました。良いことをばんばん褒めてくれて、その後にちらっと上記のような言い方で言われるので、最初のうちは全く気に留めなかったのですが、徐々にその意味が分かってくるにつれ、それまでの自分の能天気ぶりを思い返して、冷や汗をかいたものです。

 日本では物事を遠回しに言うけれども欧米ではストレートに言う、と言われることがありますが、実際のところはむしろ逆なのではないかと思います。プライベートな場面ではともかく、職場のようなオフィシャルな場所では、日本と比べて米国(シリコンバレー)の方が、ソフトな物の言い方が多いと感じています。

赤間勉(あかま つとむ)
元 Anacor Pharmaceuticals, Research Leader
赤間勉 1964年生まれ。89年協和発酵工業(当時)入社。主に新規抗癌剤の合成研究を行う。2001年米Geron Corporation社(カリフォルニア州メロンパーク)入社。テロメラーゼ関連医薬の合成研究。03年米Anacor Pharmaceuticals社(カリフォルニア州パロアルト)入社。抗炎症薬および感染症治療薬の合成研究に関わる。この間、年を追うごとに趣味の料理に割く時間が増え、将来は飲食店の開業を目指している。ブログもやっているので、そちらも併せてご覧いただきたい。
 このコラムは、米バイオテク企業にスタートアップから参加し、大手製薬企業に買収されるまで同社で研究者として過ごした赤間勉氏による手記です。赤間氏は、協和発酵工業、Geron Corporation社を経て、2003年6月にバイオテク企業の米Anacor Pharmaceuticals社に入社し、2016年6月の米Pfizer社による買収を経て、2016年12月まで研究者として勤務しました。シリコンバレーに拠点を持つバイオテク企業の内側から見た実像を伝えていただきます。

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