シリコンバレーと比べて日本はここが駄目だあそこが駄目だという議論が色々ありますが、私は日本の方がすごいところもあると思います。これは国民性と言ってもいいのかも知れませんが、アカデミアでもインダストリーでも、とにかく日本の研究者は正確な知識を多く持ち、かつ真面目にきちんと仕事をする割合が非常に高い。当たり前のことのようですが、当たり前のことをきちんとするというのは、世界では必ずしも当たり前ではないのです。日本の常識に照らせば非常にいいかげんに見えることが、世界では逆に当たり前だったりします。

 何だか禅問答のようで恐縮ですが、当たり前のことを当たり前にこなすことが必ずしも当たり前ではないということに気がついたときは、ずいぶん驚いたことを覚えています。日本にいると普通のこと、例えばいついつまでにこのデータを出しますといったことをただその期日までに完了するだけで、海外では「素晴らしい!」という評価を得たりします。まあそこには物事をいちいち大げさに褒めるというカルチャーも含まれているので、そのことについては別の回で書きたいと思いますが、そんなことでいちいち驚くのかと感じることがあるのは確かです。

 そういった意味で日本の研究者というのは、世界のスタンダードに照らせば平均レベルが非常に高いといえます。ただ私も以前はそうでしたが、多くの人が自分の実力を客観的に評価できていないというか、実力に見合うだけの自信を持てていない場合が多いのです。「いえいえ私なんてとても……」となってしまう、あのマインドセットです。

 しかしシリコンバレーだからといって、スーパースターのような研究者ばかりがいるわけでは決してありません。それどころか、大多数は普通というか、それでいいの?と思ってしまうぐらいのレベルだったりするにもかかわらず、自信だけはそれなりに持っていたりします。ですから日本の研究者の多くは、シリコンバレーでも日本と同等、場合によってはそれ以上のポジションで仕事ができる力を持っていますし、もっと自信を持っていいと思います。

 ただし1点だけ、改善が必要なのが語学力、すなわち英語力です。もちろん多くの研究者は英語での論文や学会発表をされています。しかしながら口頭での会話になると、一気に戦力ダウンといいますか、コミュニケーションが困難になる場合が多いですよね。

 シリコンバレーのように多国籍で多文化な環境では、あうんの呼吸のようなものがほぼ通じませんので、思っていることを口に出してなんぼというところがあります。一般論としてそもそも口数が少なめな上に、英語だとよりいっそう無口になる多くの日本人にとっての一番の課題は英語でのコミュニケーション力、私はこれに尽きると思います。逆にここさえ何とかすれば、シリコンバレーのような所で活躍するのは、多くの日本人にとってそれほど難しいことではないと、確信しています。ネイティブのように流ちょうにペラペラ話す必要は全くありません。英語についても別の回にまたあらためて書きたいと思います。

 そんなこと言っても赤間さんはどうせすごく優秀だったんでしょ、と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、それは本当に大きな誤解です。自分が取り立てて仕事ができない人だったとも思いませんが、日本でトップレベルだったなどということは決してありません。周りにはいつも、すごいなと思う人がたくさんいました。そんな私であっても、しかも不自由な英語環境の中でも、振り返ってみれば当初考えていた以上に仕事ができたなと思えます。ですから多くの人にはきっと自分が思っている以上の実力があるはず、ということを強調させていただきます。