前回に続き、シリコンバレーの特徴というかカルチャーというか、日本と違うなと思うことの1つは、各自のスケジュール管理です。シリコンバレーでは、自分の時間割を自分で作るのが当たり前。これは仕事もプライベートも含めた、1日24時間/週7日間の全てに対してです。それを認識したとき、かつて日本にいたときの自分は、自分の人生の時間割を全く自分で作れていなかったなと実感しました。

 もちろん業種や職種によっては必ずしもそうとばかりは言えませんが、少なくとも製薬企業の研究職の場合、仕事のやり方はかなりフレキシブルです。自分が参加すべきプロジェクトミーティングやグループミーティングなどは、もちろん優先しなければなりませんが、それとて場合によっては自宅や出先から電話での参加もありです。どうしても都合が悪いか、必要ないと思えば欠席しても通常は何も言われません。ミーティング以外の実験や自分のデスクワークなどは、本当に好きなようにスケジュールでき、ランチはもちろんのこと、子供の送迎とか、メディカルアポイントメントなど、いわゆる私用外出も完全に自由。パソコン上での仕事がメーンな人は、working from homeといって、在宅勤務も可能です。

 米国で学齢期の子供がいる場合、両親のどちらかが送迎する場合も多く、共働き世帯も多いことからそうならざるを得ないといった側面もありますが、それだけではなく、恐らくみんながそれぞれフレキシブルに仕事できた方がストレスも少なく、結果的に生産性が上がるよねというコンセンサスがあるような気がします。そしてそれは実際に、米国の企業が多くのイノベーションを生み出してきている理由の1つだと思います。そのコンセプトは至ってシンプル。大事なことはゴールを達成することで、そのために何時間働いたとか、どれだけ頑張ったとかは問題ではないということです。成果主義(result oriented policy)というやつですね。

 このように日本の常識から見るとあまりにもフレキシブルなので、さぼる人はいないのだろうかと思われるかもしれません。まあさぼっているかどうかはともかく、上司や周囲が納得するパフォーマンスを示せない人、というのはある割合で出てきます。こちらの雇用関係はat willといって、いつ何時でも、理由のある無しを問わず、会社からでも従業員からでも雇用関係を打ち切ることができるというポリシーになっています。従って成果主義ということは、成果が出ていなければいつでも解雇される可能性があるということですし、それは実際に起こります。つまりこれがさぼることに対する抑止力になるわけですが、そもそもさぼるような人は最初から採用されない可能性が高いでしょう。

 日本の組織というのは、従業員は放任するとさぼるからきっちりと管理すべしという、上記とは真逆のコンセプトで運営されている場合が多いのではないでしょうか? 毎朝定時に出勤、昼休みは12時から13時の1時間。終業時刻の17時とか18時とかまでは帰宅できないというシステムが通勤ラッシュやランチ行列を生み、ますますストレスとフラストレーションを増加させていく。そして結果的に全体の生産性が低下するという、本末転倒な状態になっているのでは?という気がします。

 ただ上記のシリコンバレー的システムというのは、勤務は大変フレキシブルですが、超過勤務(=残業代)というものはありません。何時間働こうが給料は一定です。なので日本の場合、コンスタントに発生している残業代程度はあらかじめ給料に含めておかないと、むしろ従業員の側から歓迎されないシステムになってしまう可能性があります。

 いずれにせよ、創造性や生産性を求められる業種/職種であるならば、仕事時間と成果が比例するというのは完全に誤った信仰で、監視や拘束は全くの逆効果にしかなりません。何時間働いても給料が一定ということは、個人レベルにおいても、短い時間で仕事を終わらせるほど生産性が高いことになります。仕事は永遠に終わらないという反論もあるかもしれませんが、今日、今週、あるいは今月はここまでやればOKというラインはあるはずで、それをより短時間で完了できれば、会社にとっても個人にとってもハッピーなはずです。

 最近は在宅勤務を認める企業も増えてきたようで、これは良い傾向だと思います。縛るのではなく解き放つことで生産性を上げるというコンセプトが、どんどん広がっていくといいなと思います。