明けましておめでとうございます。
 
 2010年はiPadの発売で代表されるように電子書籍元年と言われました。紙パルプ産業は、ITの発展により予想されていた新聞・雑誌・書籍の減少が現実のものとなり、構造転換が求められています。紙パルプ産業は低炭素社会構築の鍵となる基盤産業へと転換する可能性を秘めていますので、当社が出資している海外のパルプ工場、ブラジル中部ミナスジェライス州にあるセニブラをモデルとして今後のバイオマス利用を展望します。

 セニブラは、操業40年になり、25万haの広大な森林(神奈川県と同程度)を有し、年間120万BDTの抄上げパルプ(バイオマス400万BDT相当、BD:絶乾)を生産しています。25万haの森林の内、40%の10万haは山頂付近や川周辺の土砂流出防止などの環境保全を目的とした天然林です。残りの15万haはユーカリ植林地ですが、天然林と有機的に繋がっており、生物多様性が確保されています。

 ユーカリ植林は土壌を疲弊させると言われますが、セニブラでは40年の植林事業(7年伐採更新、6サイクル植林)の間に2.5倍も生産性が向上しています。このことは持ち出された養分を肥料で補充すれば生産性が維持できることを実証しています。さらに、育種を含めた持続的森林経営により飛躍的な生産性向上を達成しています。

 セニブラでは、林道も整備され、通年植栽、24時間365日の収穫を行っており、農林業と言うよりも工業の様な高い生産性を実現しています。また、木材チップからクラフトパルプを製造する際の副産物であるリグニンをエネルギーとし、化石燃料を使用せずに工場を稼働させています。即ち、バイオマス利用による化石燃料に依存しない産業システムが成立しているのです。

 当社では、このシステムを発展させ、木質バイオマスのカスケード利用を目指した総合林産業に取り組んでおり、建材や紙パ製品以外に機能材や健康関連の事業展開を図っています。木質バイオマスからのバイオエタノールの製造研究もその一つです。

 本研究は、NEDOの業務委託で進めており、「セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業」(2009~2013年度)は産業技術総合研究所と新日鉄エンジニアリングとの共同事業です。本事業では、大規模安定供給が可能なセルロース系目的生産バイオマスの栽培からエタノール製造プロセスまでの一貫生産システムを構築し、環境負荷・経済性などを評価すること目的としています。

 本製造プロセスで最も重要な前処理では、実用化を念頭に従来のパルプ化技術を応用したメカノケミカルパルピング技術を開発しました。本年は、この技術を応用したパイロットプラントが当社呉工場に完成し、実証試験を開始します。バイオエタノール事業は10~20万kL/年の大規模生産が目標です。さらなる事業拡大には、劣悪な環境下にある荒廃地にも植林を可能とするため、当社のユーカリゲノム情報を活用した新品種の開発(環境ストレス耐性)を進めています。

 森林資源は、地球規模の炭素循環で持続しており、他の再生可能エネルギーと共に地球生物圏存続の重要な担い手と言えます。植林と木質バイオマスの総合利用により低炭素社会を目指したいと思います。

 本年もよろしくお願いいたします。