私たちには、夢があります。-どんな病気にかかっても、治してもらえる。
 私たち研究者には、夢があります。-自らの研究で、すべての患者さんがほほ笑んでくれる。
 そして、私にも夢があります。-最先端医療を世界に発信・提供し、リスペクトされる国、日本。

 2011年は、世界の再生医療の歴史にとって、かけがえのない1年となると信じます。

 再生医療・細胞治療は、ヒトから得られた細胞・組織を原材料としてそれを調整し、患者さんに投与・移植するという治療法です。世界的に見ると医薬品医療機器としての薬事法による規制を受けていますが(薬事法トラック)、そのトラックに加え我が国には独特のトラックがあります。医療法・医師法の下で行われる臨床研究から先進医療(第3項先進医療:高度医療評価制度含む)から手技としての保険収載を目指すトラックです(医療法・医師法トラック)。

 薬事法トラックでは、多能性幹細胞や体性幹細胞の医薬品医療機器としての有用性基準が明確化されます。いわゆる1314号通知別添2の改定であった平成20年自己通知・同種通知に加え、現在多能性幹細胞や体性幹細胞のかかるガイドラインの策定に向け、医薬品医療機器総合機構顧問・近畿大学薬学総合研究所所長早川堯夫先生を主任研究者として厚生労働科学研究費補助金レギュラトリーサイエンス総合研究事業「ヒト幹細胞を用いた細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保のあり方に関する研究」が行われているところです。2011年にはこれら成果が通知として公となり、多能性幹細胞を用いる医薬品医療機器開発を促進すると思われます。諸外国の規制を参考にしてきた我が国が、世界の先陣を切ってiPS細胞の臨床利用に門戸を開くのです。

 医療法・医師法トラックでは、臨床研究についての見直しが行われ、11月1日「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」が改定されました(平成22年厚生労働省告示第380号)。主要な見直し点は、ES細胞・iPS細胞を含めた多能性幹細胞を用いる臨床研究の解禁です。当然、厚生労働大臣に意見を聴かなければなりませんが、スタートラインにつきました。一般の方々からは、自分の細胞から作ったiPS細胞の方が安心だ、というご意見もあり、まずは自己由来iPS細胞を用いる臨床研究からのスタートです。本年中には、あらかじめ貯蔵されたES細胞・iPS細胞から出発した同種ES細胞・iPS細胞を用いる幹細胞臨床研究が実施できるよう、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直し委員会WG」にて作成中のES細胞・iPS細胞樹立分配指針のドラフトが、たたき台として世にでてきます。

 薬事法トラックと医療法・医師法トラックを結ぶ通知が出ました。2010年11月1日の「ヒト幹細胞臨床研究指針」新指針の告示・施行と同日、同新指針により厚生労働大臣の意見を聴いて実施される臨床研究にあっては、確認申請を要しないこととなりました。臨床の現場で研究開発をされてきた先生方にとっては、本当に朗報です。申請を審査する立場から言うと、これまでは臨床研究プロトコールを中心に見てきましたが、加えて安全性・品質、特性解析まで詳細に審査しなければなりません。身が引きしまる思いです。

 iPS細胞を利用した臨床研究は、世界に先駆けて我が国で行われるでしょう。2011年にはまだ難しいかも知れませんが、もうすぐです。理化学研究所・高橋政代先生のシーズである網膜色素細胞再生がまずは走り、ついで理化学研究所・谷口克先生のiPS細胞由来NKT細胞でのがん免疫療法、そして慶応大学・福田恵一先生の心筋再生が走り出すでしょう。先端を走り続ける先生方の想いは、ただ「患者さんの笑顔」のため。研究者のまごころ(仁)が、私たちのモチベーションです。

 さあ、日本という国が、最先端医療を世界に提供し、仁術という医療の本質をも世界に発信して、リスペクトされる時代の到来です。

 ここから、そしてその日から、世界史の新しい時代がはじまります。

 このエポックに生き、それに参加させていただけるこの身の幸せを感謝。