「まこと小さい国が、開花期を迎えようとしている」。司馬遼太郎の「坂の上の雲」の一節です。今年はまさに我が社が開花期を迎えるかどうかの勝負の年です。我が社が東大医科研発バイオベンチャーとして創立したのは2001年であり、今年で10年を迎えます。欧米でもバイオベンチャーは、創立後一旦下降線を描き、ある時期からは上昇し、ついには上市できるような、患者さんの役に立つ医薬品を産み出しています。それには10年から15年の期間が必要だと言われております。

 ヒトゲノム情報がほぼ解明され、現在はポストゲノム時代と呼ばれています。このゲノム情報を基に画期的な治療薬が産み出されるゲノム創薬といわれてからはや10年がたちました。しかし、まだ人類の福祉安寧に寄与するような、患者さんのためになっているものは世界でもまだ産み出されておりません。

 我が社は東大医科研中村祐輔研究室の世界最高レベルのゲノム情報をプラットホームテクノロジーとして、一日も早く副作用がなく有効性の高いがん治療薬を開発して、がん患者さんの役に立つ世界初の治療薬・診断薬を産み出すことを社是として日々戦っております。今年は、がん治療用ワクチンの治験が次々と後期臨床試験(臨床的に有効であるかどうかを調べる)段階に進んでいき、最も進んでいる膵がんワクチンは検証試験(pivotal study)として最終結果が出る予定です。また、シンガポール政府の援助をいただき、シンガポールで胃がんに対する治療用ワクチンの治験が本格化します。抗体薬ではフランス、リオン自治体の助成をいただき、本年夏には治験を開始します。低分子薬もin vivoで強力な抗腫瘍効果を出す新規化合物が多数出てきております。

 我が社は常にがん患者さんのために戦っており、この戦いは単に我が社自身のための戦いではありません。ヒトゲノム解読という科学の進歩が患者さんの役に立てるものを産み出せるのか、その答えを出すことが我々の使命であると身の引き締まる思いです。ただ患者さんのために、いかなる困難にも全力で立ち向かう決意で新年を迎えました。今年もご指導よろしくお願い申し上げます。